「コスプレとロリータを一緒にするなんてご法度だった」声優・上坂すみれに聞く1
7月10日、声優・上坂すみれのセカンドシングル『げんし、女子は、たいようだった。』が発売になりました。
ロリータ服に身をまとい、「革命的ブロードウェイ主義者同盟」なる謎の組織を立ち上げる、現役大学生の21歳。
上坂すみれとは何者か? その実態に迫ります。
●ロリータ服で暮らす。
───普段からロリータ服なんですか?
上坂:普段からです。「BABY,THE STARS SHINE BRIGHT」っていう大好きなブランドで揃えることが多いですね。学校でも着ています。
───「ロリータは装甲」と以前おっしゃってましたが、やはり嶽本野ばらさんは意識されているんですか?
上坂:実は結構、嶽本さんが提唱したロリータと、私たちの時代のロリータって変わっていて。嶽本さん的な元祖ロリータの文化って、本当に崇高なものであって、コスプレとロリータを一緒にするなんてご法度だったし。
───ありましたね、もめていましたね。
上坂:ロリータを着るからには純潔で、ロココ調の服をモチーフに作っているので、マリー・アントワネットの時代の貴族の姫君のような気持ちでいつづけることが大事だ、というポリシーが結構あったと思うんですよね。私がロリータにはまりはじめた頃の雑誌とか、ロリータさんの考えとかも、そっちのほうが根強かったんです。
───上坂さんがロリータに興味を持ったのは何年ですか?
上坂:『KERA』を中学生の時から見ていて。テレビで『下妻物語』を見た頃なんですよね。ずっと『KERA』とかを中学生の時から見ていて。小学生の頃は洋服に全然興味がなくて、ずっとパソコンをやってました。
●インターネットとアイデンティティ・クライシス
上坂:小3か4のときに、Windowsの98がうちにやってきて。ダイヤルアップでしたけど。「あやしいわーるど」とかありましたよね。
───懐かしい! ネット黎明期ですね。
上坂:私一人っ子で、やることも友人もさしていなくて。小学校の時は顕著なんですけど、親友はいるけど友達は居ないっていう。親友以外との思い出が全然記憶になくて。先生とは話していた気がするんですけど。あとは知り合いというかクラスメイトという感じでしたね。
───小学時代は何をしていたんですか?
上坂:やることといえば、パソコンくらいで。あと本を読むのが好きだったり、自分に興味がなかったんですよね。最近の小学生のみなさんはおませさんなので、お化粧とかするじゃないですか。私は全くそうゆうのが無かったですね。
───では中学生に入ってから、一気に逆転したのでしょうか。
上坂:中学生になって、文字通り「アイデンティティの危機」がきました。これって本当にあるんだ!ってくらいわかりやすくやってきましたね。自分ってなんだろう? なんで生きてて、なんでこの社会の中に組み込まれてるの? っていう、実に中学生らしい恥ずかしい思想にふけり(笑)。その頃はまった、心理学とか第三帝国の構造とか、ミリタリーものとかロリータとかって、そういう問題を抱えたがために、興味をもったんだなと、今になって思うんです。
───では今、様々な趣味を持っているのは、アイデンティティ危機があったから?
上坂:そうです! そこで一気に手にした趣味です。趣味というか「よりどころ」っていうのが正しいですかね。
●みっちり詰まった歴史に憧れて
───中学生くらいのときに、ミリタリーやロシアに手を出したというのは珍しいのでは。
上坂:ロシアは高校からなんですけど、ミリタリーは中学生からでした。女の子でミリタリーにハマる人って、今は増えましたけど、当時は女子校でコミュニティもTwitterとかもなかったのでほとんど見かけなかったですね元々歴史物が好きだったり、動く大きなメカに興味があったりはしたんですけど、入口はドイツからです。ドイツから枢軸国に入り、大日本帝国のムチャさを知り、連合国の物量の多さに驚き、という流れですね。
───性格でますよね。
上坂:お国柄でますよね。それが面白いなって調べ始めました。古代にロマンを求める人と、現代戦争に魅力を感じる人って、全然違う感じで歴史を見ていると思うんです。古代を愛する人って空白にロマンを感じるじゃないですか。
───こうだったんじゃないか、と想像するのが楽しいんですよね。
上坂:そうです。でも20世紀とか映像の時代だと、全部を検証しようと思えば分かるじゃないですか。それこそ第500いくつ戦車隊が歩んだ機動とか、ここでやられたとかわかるから、物語を完成させていくというのにロマンがあって。私は空白があると不安なんです。それはなぜかというと自分も空白だからなんです。だから古代にあんまり興味を持てなくて。
───空白だったからこそ資料の多い歴史の方を?
上坂:そうです。ぎっちりつまった物に興味がいったんですね
───『ガールズ&パンツァー』4巻のスタッフコメンタリーで、ロシアはいくら調べても、広くて資料が多いから終わらない、と言ってましたね。
上坂:そうなんです! しかもロシアミリタリーは空白じゃなくて、全部データがあるにはあるんですよね。日本語に訳されてなかったり、手に入れにくかったりってのはありますけど、古代みたいに全く証拠が見つからないとかじゃないんです。クルスクのこの地で、T-34の軍団と、III号戦車が衝突しましたとか、そういうデータが無限にあるんですよね。空白ではない、掘れば掘るほど出てくるこの情報が、もう面白くって。
───学者気質ですね。
上坂:そう思いますね。のめり込みたい性格だなって。
●『七つの海よりキミの海』と『げんし、女子は、たいようだった。』
───その学者感覚がドンと出たのが、一枚目のシングル『七つの海よりキミの海』だと思うんです。ロシア構成主義が盛り込まれ。
上坂:満載な感じですね。横尾忠則さんとか、ロトチェンコとか、ステンベルグ兄弟が好きですとか、色々好きなアヴァンギャルドアートを、デザイナーさんにお話して作っていただいたのが、まさにそのものしかりだったので、最初に案を見せていただいた時に一発でこれでお願いしますってなりました。
───作曲の神前暁さんが「上野耕路リスペクト」と言っていて。
上坂:ゲルニカっぽくって! ニューウェーブで昭和で、アニソンぽくないですよね。いや、アニソンでもあるんですけど、……ニューウェーブですね! 世が世なら、プログレ棚行きのやつですね(笑)
───桃井はるこさんに憧れて声優さんになったそうですが、セカンドシングル『げんし、女子は、たいようだった。』は桃井さん作詞・作曲ということで、いかがでしたか?
上坂:桃井さんって色んな所で曲を提供されていらっしゃるんですけど、この曲は桃井さんそのもので、「桃井さんのニューシングルだー!」って気持ちになるみたいな、歌詞といい、曲調といい、曲のすっきりする感じといい。、本当におたくの目線から、ポジティブに上がっていくところがモモーイ節で、1ファンとして仮歌を聴かせて頂いた時は本当にうれしくって。
───仮歌、桃井さんですもんね。
上坂:そうなんですよ! 自分で歌ったものより再生回数が多いです(笑)。桃井さんは、電波ソングもそうですけど、正統派な王道ソングもお作りになっていて、『さいごのろっく』とか『ゆめのばとん』とか私大好きなんです。『ワンダーモモーイ』とかに勇気づけられて、色んなことを踏みとどまったので、恩人のような存在なんです。
●ヲタもサブカルもどっちだっていいじゃない
───『さいごのろっく』は桃井さんが、おたくがまだマイナーだった時の歌じゃないですか。趣味を笑われる、とか。それに対して今回のCDの歌詞は、「ヲタもサブカルもどっちだっていいじゃない」って歌っていて、比較すると面白いですよね。
上坂:ほんと時代を感じますよね。2013年現在の感じです。これが「あやしいわーるど」の時代とか、2ちゃんねる閉鎖事件とか、江ノ島でゴミ拾ってた時代とかには、まず無いような感じですよね。
───あの当時のネット社会は、おたくなのか、サブカルなのか……。
上坂:おたくとサブカルはそれこそ、ロリータとコスプレみたいに元々相容れないものだったので。絶対あいつらとは違うし、だからもう壁作るし、みたいな感じで。私は当時オフ会とか行ける年齢じゃなかったので、詳しいことはわからないんですけど、ネットの海をさまよってるときに見た文章には、プライドというか、捨てられない意地というか、これがないとどうしていいかわからない、おたくとは違うんだ、みたいな、そういう厳しい縛りみたいのがあった気がするんですよね。
───かなりこだわって、団結をして。
上坂:そうですね、割りと小さな島に。どっちも好きって人もきっといたと思うんですよ。憶測ですし、私がそうだっただけなんですけども。中学でいろんな趣味を発掘しだした頃って、ひたすらネットの風潮を見て、アニメ文化もいいし、ロリータもいいし、コスプレもいいと思うしなーって感じていたんですよ。小さな壁を作っていた頃に比べて、今のおたくって本当に活発ですよね。
───オープンになりましたね。
上坂:そうですよねー。だって、クラスの自己紹介でも言っちゃうくらいですからね。
───えっ、言うんですか!?
上坂:言うんですよ! 言わなくてもSNSの自己紹介に、好きなアニメはこれとこれで、気軽にフォローミーみたいに書いていて。そうゆうのって10年前とかにはない感じじゃないですか。
───上坂さんのTwitterは戦車が載ってたりしますが、10年前の自分だったらやりました?
上坂:いや、私やってなかったと思うんですよね、中学生の頃だったら……。高校生になってからだんだん壁がよくわからなくなって、趣味を人に話し始めたんです。中学生の時は「これってマイナー趣味だから言ったところで誰もわかってくれないなー」って諦めてましたね。
───マイナーな趣味、と感じているんですか。
上坂:冷静に考えると、常にマイナーだなって思い続けてるんです。ほんとに。冷静に。私の中に色んな人がいるんですけれども、いろんな人の織りなす会議の中で「この趣味はやはりマイナーだ」という結論が採択されるので。
───脳内会議ですか(笑)
上坂:これって認識してるから多重人格じゃないよな、って思うんですけど。世間一般の目を通すと、ソ連好きな子あんまりいないしとか冷静に思うんです。だからといって、隠したり、諦めたりするのはもったいないし、人生は自分のものだから。そしてきっと同じ思いをしている人もいるから、壁とか作っていても、何も進歩がないだろうというのを考え始めたんですね。
───その考え方が「革命的ブロードウェイ主義者同盟」になっていくんでしょうか。
上坂:最終的に形になっていくのはそれだと思います。高校の時はずっとモヤモヤ、明文化はされませんけれども、ずっと思ってましたね。
───思っていたことが実現したんですね。
上坂:はい。高校になると私も大分、人と話すスキルが……そうでもなかったですけど……(笑)
───いやいやいや(笑)
上坂:今「ついてきて」って言おうと思ったら、そうでもなかったです(笑)。コミュニケーションの努力をするようになって、仲良くなってみると「実は私これが好きで」ってカミングアウトしてくれる方がいて! なんであなたはそれを24時間中、23.5時間隠してるの?って驚きました!
───小数点以下?
上坂:放課後の帰り際30分だけ、その話を嬉しそうにしてくれて、明日の朝になるとクラスの輪の中で、何もしゃべらず笑っているっていうのが、なんとももったいないなって。
───筋肉少女帯が好きで帰り際30分だけは話すけれどもー……
上坂:話すけれどもー、明日の朝になると「ドラマ面白かったよねー」みたいな。
───そういう人たちは辛いでしょうね。
上坂:きっと辛いと思うんです。
次回は音楽趣味について掘り下げていきます。
(たまごまご)
ロリータ服に身をまとい、「革命的ブロードウェイ主義者同盟」なる謎の組織を立ち上げる、現役大学生の21歳。
上坂すみれとは何者か? その実態に迫ります。
●ロリータ服で暮らす。
───普段からロリータ服なんですか?
上坂:普段からです。「BABY,THE STARS SHINE BRIGHT」っていう大好きなブランドで揃えることが多いですね。学校でも着ています。
上坂:実は結構、嶽本さんが提唱したロリータと、私たちの時代のロリータって変わっていて。嶽本さん的な元祖ロリータの文化って、本当に崇高なものであって、コスプレとロリータを一緒にするなんてご法度だったし。
───ありましたね、もめていましたね。
上坂:ロリータを着るからには純潔で、ロココ調の服をモチーフに作っているので、マリー・アントワネットの時代の貴族の姫君のような気持ちでいつづけることが大事だ、というポリシーが結構あったと思うんですよね。私がロリータにはまりはじめた頃の雑誌とか、ロリータさんの考えとかも、そっちのほうが根強かったんです。
───上坂さんがロリータに興味を持ったのは何年ですか?
上坂:『KERA』を中学生の時から見ていて。テレビで『下妻物語』を見た頃なんですよね。ずっと『KERA』とかを中学生の時から見ていて。小学生の頃は洋服に全然興味がなくて、ずっとパソコンをやってました。
●インターネットとアイデンティティ・クライシス
上坂:小3か4のときに、Windowsの98がうちにやってきて。ダイヤルアップでしたけど。「あやしいわーるど」とかありましたよね。
───懐かしい! ネット黎明期ですね。
上坂:私一人っ子で、やることも友人もさしていなくて。小学校の時は顕著なんですけど、親友はいるけど友達は居ないっていう。親友以外との思い出が全然記憶になくて。先生とは話していた気がするんですけど。あとは知り合いというかクラスメイトという感じでしたね。
───小学時代は何をしていたんですか?
上坂:やることといえば、パソコンくらいで。あと本を読むのが好きだったり、自分に興味がなかったんですよね。最近の小学生のみなさんはおませさんなので、お化粧とかするじゃないですか。私は全くそうゆうのが無かったですね。
───では中学生に入ってから、一気に逆転したのでしょうか。
上坂:中学生になって、文字通り「アイデンティティの危機」がきました。これって本当にあるんだ!ってくらいわかりやすくやってきましたね。自分ってなんだろう? なんで生きてて、なんでこの社会の中に組み込まれてるの? っていう、実に中学生らしい恥ずかしい思想にふけり(笑)。その頃はまった、心理学とか第三帝国の構造とか、ミリタリーものとかロリータとかって、そういう問題を抱えたがために、興味をもったんだなと、今になって思うんです。
───では今、様々な趣味を持っているのは、アイデンティティ危機があったから?
上坂:そうです! そこで一気に手にした趣味です。趣味というか「よりどころ」っていうのが正しいですかね。
●みっちり詰まった歴史に憧れて
───中学生くらいのときに、ミリタリーやロシアに手を出したというのは珍しいのでは。
上坂:ロシアは高校からなんですけど、ミリタリーは中学生からでした。女の子でミリタリーにハマる人って、今は増えましたけど、当時は女子校でコミュニティもTwitterとかもなかったのでほとんど見かけなかったですね元々歴史物が好きだったり、動く大きなメカに興味があったりはしたんですけど、入口はドイツからです。ドイツから枢軸国に入り、大日本帝国のムチャさを知り、連合国の物量の多さに驚き、という流れですね。
───性格でますよね。
上坂:お国柄でますよね。それが面白いなって調べ始めました。古代にロマンを求める人と、現代戦争に魅力を感じる人って、全然違う感じで歴史を見ていると思うんです。古代を愛する人って空白にロマンを感じるじゃないですか。
───こうだったんじゃないか、と想像するのが楽しいんですよね。
上坂:そうです。でも20世紀とか映像の時代だと、全部を検証しようと思えば分かるじゃないですか。それこそ第500いくつ戦車隊が歩んだ機動とか、ここでやられたとかわかるから、物語を完成させていくというのにロマンがあって。私は空白があると不安なんです。それはなぜかというと自分も空白だからなんです。だから古代にあんまり興味を持てなくて。
───空白だったからこそ資料の多い歴史の方を?
上坂:そうです。ぎっちりつまった物に興味がいったんですね
───『ガールズ&パンツァー』4巻のスタッフコメンタリーで、ロシアはいくら調べても、広くて資料が多いから終わらない、と言ってましたね。
上坂:そうなんです! しかもロシアミリタリーは空白じゃなくて、全部データがあるにはあるんですよね。日本語に訳されてなかったり、手に入れにくかったりってのはありますけど、古代みたいに全く証拠が見つからないとかじゃないんです。クルスクのこの地で、T-34の軍団と、III号戦車が衝突しましたとか、そういうデータが無限にあるんですよね。空白ではない、掘れば掘るほど出てくるこの情報が、もう面白くって。
───学者気質ですね。
上坂:そう思いますね。のめり込みたい性格だなって。
●『七つの海よりキミの海』と『げんし、女子は、たいようだった。』
───その学者感覚がドンと出たのが、一枚目のシングル『七つの海よりキミの海』だと思うんです。ロシア構成主義が盛り込まれ。
上坂:満載な感じですね。横尾忠則さんとか、ロトチェンコとか、ステンベルグ兄弟が好きですとか、色々好きなアヴァンギャルドアートを、デザイナーさんにお話して作っていただいたのが、まさにそのものしかりだったので、最初に案を見せていただいた時に一発でこれでお願いしますってなりました。
───作曲の神前暁さんが「上野耕路リスペクト」と言っていて。
上坂:ゲルニカっぽくって! ニューウェーブで昭和で、アニソンぽくないですよね。いや、アニソンでもあるんですけど、……ニューウェーブですね! 世が世なら、プログレ棚行きのやつですね(笑)
───桃井はるこさんに憧れて声優さんになったそうですが、セカンドシングル『げんし、女子は、たいようだった。』は桃井さん作詞・作曲ということで、いかがでしたか?
上坂:桃井さんって色んな所で曲を提供されていらっしゃるんですけど、この曲は桃井さんそのもので、「桃井さんのニューシングルだー!」って気持ちになるみたいな、歌詞といい、曲調といい、曲のすっきりする感じといい。、本当におたくの目線から、ポジティブに上がっていくところがモモーイ節で、1ファンとして仮歌を聴かせて頂いた時は本当にうれしくって。
───仮歌、桃井さんですもんね。
上坂:そうなんですよ! 自分で歌ったものより再生回数が多いです(笑)。桃井さんは、電波ソングもそうですけど、正統派な王道ソングもお作りになっていて、『さいごのろっく』とか『ゆめのばとん』とか私大好きなんです。『ワンダーモモーイ』とかに勇気づけられて、色んなことを踏みとどまったので、恩人のような存在なんです。
●ヲタもサブカルもどっちだっていいじゃない
───『さいごのろっく』は桃井さんが、おたくがまだマイナーだった時の歌じゃないですか。趣味を笑われる、とか。それに対して今回のCDの歌詞は、「ヲタもサブカルもどっちだっていいじゃない」って歌っていて、比較すると面白いですよね。
上坂:ほんと時代を感じますよね。2013年現在の感じです。これが「あやしいわーるど」の時代とか、2ちゃんねる閉鎖事件とか、江ノ島でゴミ拾ってた時代とかには、まず無いような感じですよね。
───あの当時のネット社会は、おたくなのか、サブカルなのか……。
上坂:おたくとサブカルはそれこそ、ロリータとコスプレみたいに元々相容れないものだったので。絶対あいつらとは違うし、だからもう壁作るし、みたいな感じで。私は当時オフ会とか行ける年齢じゃなかったので、詳しいことはわからないんですけど、ネットの海をさまよってるときに見た文章には、プライドというか、捨てられない意地というか、これがないとどうしていいかわからない、おたくとは違うんだ、みたいな、そういう厳しい縛りみたいのがあった気がするんですよね。
───かなりこだわって、団結をして。
上坂:そうですね、割りと小さな島に。どっちも好きって人もきっといたと思うんですよ。憶測ですし、私がそうだっただけなんですけども。中学でいろんな趣味を発掘しだした頃って、ひたすらネットの風潮を見て、アニメ文化もいいし、ロリータもいいし、コスプレもいいと思うしなーって感じていたんですよ。小さな壁を作っていた頃に比べて、今のおたくって本当に活発ですよね。
───オープンになりましたね。
上坂:そうですよねー。だって、クラスの自己紹介でも言っちゃうくらいですからね。
───えっ、言うんですか!?
上坂:言うんですよ! 言わなくてもSNSの自己紹介に、好きなアニメはこれとこれで、気軽にフォローミーみたいに書いていて。そうゆうのって10年前とかにはない感じじゃないですか。
───上坂さんのTwitterは戦車が載ってたりしますが、10年前の自分だったらやりました?
上坂:いや、私やってなかったと思うんですよね、中学生の頃だったら……。高校生になってからだんだん壁がよくわからなくなって、趣味を人に話し始めたんです。中学生の時は「これってマイナー趣味だから言ったところで誰もわかってくれないなー」って諦めてましたね。
───マイナーな趣味、と感じているんですか。
上坂:冷静に考えると、常にマイナーだなって思い続けてるんです。ほんとに。冷静に。私の中に色んな人がいるんですけれども、いろんな人の織りなす会議の中で「この趣味はやはりマイナーだ」という結論が採択されるので。
───脳内会議ですか(笑)
上坂:これって認識してるから多重人格じゃないよな、って思うんですけど。世間一般の目を通すと、ソ連好きな子あんまりいないしとか冷静に思うんです。だからといって、隠したり、諦めたりするのはもったいないし、人生は自分のものだから。そしてきっと同じ思いをしている人もいるから、壁とか作っていても、何も進歩がないだろうというのを考え始めたんですね。
───その考え方が「革命的ブロードウェイ主義者同盟」になっていくんでしょうか。
上坂:最終的に形になっていくのはそれだと思います。高校の時はずっとモヤモヤ、明文化はされませんけれども、ずっと思ってましたね。
───思っていたことが実現したんですね。
上坂:はい。高校になると私も大分、人と話すスキルが……そうでもなかったですけど……(笑)
───いやいやいや(笑)
上坂:今「ついてきて」って言おうと思ったら、そうでもなかったです(笑)。コミュニケーションの努力をするようになって、仲良くなってみると「実は私これが好きで」ってカミングアウトしてくれる方がいて! なんであなたはそれを24時間中、23.5時間隠してるの?って驚きました!
───小数点以下?
上坂:放課後の帰り際30分だけ、その話を嬉しそうにしてくれて、明日の朝になるとクラスの輪の中で、何もしゃべらず笑っているっていうのが、なんとももったいないなって。
───筋肉少女帯が好きで帰り際30分だけは話すけれどもー……
上坂:話すけれどもー、明日の朝になると「ドラマ面白かったよねー」みたいな。
───そういう人たちは辛いでしょうね。
上坂:きっと辛いと思うんです。
次回は音楽趣味について掘り下げていきます。
(たまごまご)