300円からといった低価格で、サラリーマンの胃袋を満たしてきた路上販売の「お弁当」が、東京からなくなるかもしれない。

トラブルがあったときに行政処分が出来ない、衛生面の不安などがぬぐいきれないことから、東京都や中央区の保健所が、規制強化の検討に乗り出した。インターネット上では「これは困る」「前から危ないんじゃないかと思っていた」などと意見が割れている。

食中毒でても行政処分できない

ワゴンなどを使い移動しながらの路上での販売行為は「行商」と呼ばれ、東京都が条例に基づいて管理している。屋台などとちがい、都などによる営業許可が必要なく、区の保健所に届け出さえすれば、誰でもできてしまう。

この行商について、東京都は2013年4月22日に検討会を発足、初の実態調査に乗り出す。また、オフィス街を擁する中央区も「路上での弁当販売に関する監視指導強化のお知らせ」を公式サイトに掲載、都の通知に基づき弁当類の行商については、許可の必要な固定店舗又は食品営業自動車での営業に変更するよう指導するという。

今回の規制強化検討にあたって、近隣飲食店との競合や、道交法・条例違反などさまざまな問題があがっているが、とりわけ指摘されているのは、衛生面だ。現在まで食中毒の被害は報告されていないが、中央区保健所の2012年の調べによると、細菌検査の不良率は、固定店舗で販売されているもの(45.8%)よりも、路上のものの(76.5%)ほうが高かった。その上、路上販売の不良率は10年の45.8%から上昇傾向だ。不良かどうかは、細菌数・大腸菌数・食中毒数の有無により判定する。

中央区保健所の担当者は「不良率が高いからといってただちに食中毒になるわけではありませんが、リスクはより高い」と説明する。もし仮に食中毒が出た場合、そもそも営業許可を出していないため、販売業者に対して営業停止などの行政処分などが出来ないのも問題だという。

「買われている方の中になくなると困るという人もいらっしゃるとは思いますが、消費者保護ということを考えますと、営業許可を取った上での営業が望ましい」(区担当者)

インターネット上にも、「一昨年抜き打ちで路上販売の弁当検査したらうじゃうじゃ大腸菌が出た。それで俺の職場周辺は路上販売全面禁止になったんだが一年半もしたらそろそろと戻ってきた」との報告や、「安いし色々あるのは知っているけど、何か怖くて買えないと思っていた。何かあった時に製造元が分からないのが不安要素だったんだ… 」といった指摘が見られる。

路上の弁当販売は、増加傾向だ。東京新聞によると、2002年に265件だった保健所への届け出は、09年に800件超に。11年は568件に減ったが、それでも10年前より倍増しているという。

「ルール一切無視の悪徳業者がどんどん出てきてしまうこと」が問題

もちろん、行商全部がいい加減な弁当販売をおこなっているわけではない。東京都中央区議会議員の富永はじめさんは、それを認めつつ、規制の必要性をブログでこう説明している。

「弁当業者の中には古くからきちんとルールを守っている人もいます。では何が問題かというと、ルール一切無視の悪徳業者がどんどん出てきてしまうことです。客引きでも、立て看板でもそうですが、新規参入業者が『我こそが、我こそが』とあたりかまわずやり始める結果が必ず法律での取り締まりになるんですよね」

一方で、ランチタイムに路上販売のお弁当の恩恵に預かっている人が多いのも事実。ツイッターなどのインターネット上には、昼食難民が増えないよう、規制のやり方について検討を求める声も少なくなかった。

「八丁堀勤務の時には路上販売ばかり食べている。要するに『安い食堂がない』ってことなんだから、規制だけじゃなくて供給対策もしてほしい」
「衛生許可証を掲示させるなどして対処できないものだろうか。起業の芽をつむような感じで残念ですね」
「毎日同じ時間同じ場所で昼に弁当売ってる業者が居なくなると困るな、近くにコンビもない飲食店も遠いし高いような地域だと必須。需要があるから売り手が居るわけで、点数稼ぎの取締りとかはやめてほしいわ」