――すなわち、「愛媛FCだからこそできること」が今後あるということですね。

亀井社長「これまでも選手たちや監督も色々なところでふれあいはしてくれていますが、これからは県民クラブとしてより身近な活動はしていきたいと思います。ただ、キャラクターや一平くん出演も含めて『賑合わせ』に留まっていた部分も否めなかったところは、観客動員につながるような動きをしていきたい。行政の要請に応えることは大事ですが、つながりを経済活動につなげられるように効率も考えて動いていきたい。さらに、あいさつの部分などお互いの生活の中で観客動員につなげていきたいですね」

――それに気付いたのも2011年だった。

亀井社長「そういうことです。その反面、今まで自分たちがやってきたことが他愛もないこともありつつも、正しい部分もあったことに気付いたのも昨年でしたし、北九州や熊本のようにスポンサーに対する動きも見習いながら、今のいいところも伸ばしていきたい」

――最終的に観客動員につなげ、収入を増やすにどういう策を採るかということですね。

亀井社長「都会に近いところは1つの事業に人をかけられますし、事業がベースに乗る部分もありますが、地方ではそこに人と時間がなかなかかけられない。
だから、『野球とサッカーは地方では成り立たない』という人もいるんです。大きなスポンサーがいないとこのような競技は成績が上がらないから、地方はマイナーな競技の選手を支援すれば、お金はかからないし。五輪でメダルを取れば大きな宣伝効果がある。ただ、そうすると支援は個人競技に限られてしまうんですよ」

――確かにそうですね。

亀井社長「でもその理屈はわかりますが、もしメダルを取れなかったら見向きもされない。それでも社会の中でどうスポーツを浸透させていくか。それがJリーグの課題と共に僕らの課題でもあります。普段の生活の中で愛媛FCが勝って嬉しい、負けて悔しいという感情が生まれたとき、試合のある日は休みになってはじめて地域密着になると思います。まだ、その道は遠いですけどね」

■「市民権を得る選手」を育て、2012年シーズンへ

――最後にもう1つ。2011年、日本は「がんばろう日本」を旗印にして進んできましたし、皆さんが頑張ってきました。ですから、疲れている休みの日に余暇を楽しむ気持ちを生むには、そこによほどの強い動機が生まれないと動くことはなくなってきている。そこの働きかけはどのようにしていこうと考えていますか?

亀井社長「そう思います。そのためには2011年、五輪代表候補に選ばれた齋藤学のような市民権を得る選手が必要です。スター選手でなくてもいいから、県民の皆さんが知っている選手を1人でも増やしていくこと。さらに地元選手。もちろんそん選手が1人ではチームは機能しませんから、2人・3人と作ってチームを機能させ、成果をあげていく。逆に言えば、みんながそんな選手をフォローできればチームはうまく流れていく。今まではそれができていなかったと思います。2・3人いる80点くらいの選手を50点くらいの選手がフォローしていく。これが理想ですね」

――今季の補強はその部分でも手ごたえがあるということですか?

亀井社長「何人かそういう雰囲気を感じる選手がいます。金額的な問題もありますし、理想とする選手と監督が望む選手が違うところもありますが、そこはすり合わせをしてやっていきたい。
 そしてアカデミーとの連携も大事。来季は藤直也くんがユースから昇格しますが、来季はアカデミーのスタッフとも情報交換して、京都のようにまではいかないまでも、思い切って2種登録してトップの試合で使うことも要望していきたいと思っています」

――これまでと違ったアプローチでの新シーズンの発展を期待しています。

亀井社長「トップチームでのご支援を前提としながら、レディース、アカデミー限定でのスポンサードもありだと思います。また、JFL時代のようにレディースのアマチュア選手就職支援の形も引き続きお願いしていきたいと思います。
J2初年度のような熱を取り戻すため、僕らは手を変え品を変えアピールしていくことが大事。今年はこれまでなかなかできなかった我々の魅力、強みを出せるようにして、みんなが興味を引くチーム作りをしていきたいですね」

■著者プロフィール
寺下友徳
1971年、福井県生まれの東京都東村山市育ち。学生・社会人時代共に暗中模索の人生を経験した末、2004年にフリーライターに。さらに2007年からは愛媛県松山市へと居を移し、「週刊サッカーダイジェスト」、「中学サッカー小僧」、「スポーツナビ」、「高校野球情報.com」、「ホームラン」、「野球小僧」など様々な媒体に四国のスポーツ情報を発信している。