■「街づくり」の中での、真の「県民クラブ」として

――そういったところを踏まえ、J2での6年を終えてJ1への道はどこまで来ているお考えですか?

亀井社長「うーん、どうでしょうか……。6年という年数は経ちましたが、正直道はまだ半ばですね。JFL昇格からJ2昇格まで5年かかったので、J1への道のりもそれくらいはかかるとは頭の中で思っていましたけど、J1に昇格するのはJ2に昇格するより難しいですね。
 やはりここからは資金が影響する世界だと思います。そういったことをいかに行政やスポンサーに理解して頂けるか。逆に言えばJ1に昇格した際のイメージをどれだけ持って頂けるが大事になります。

 先ほど話した松山商工会議所からのレポートによると、現状の経済効果は5億円。スタジアムが改修された場合は11億円。それがJ1に昇格した場合は16億円。さらにJ1で松山市中心部にスタジアムが設置された場合は30億円とのデータが出されています。

街中で試合があれば試合後の商店街での買い物も容易ですし、ご老人の方も病院からすぐにスタジアムに行ける。街中の集客を増やす部分でもスタジアムの設置は効果があります。もちろん僕らだけでは起爆剤にはならないかもしれませんが、郊外へのレジャーに行く動きと同時に試合のあるときには街中へ戻る動きを作ることが大事だと思います。ですので、スタジアムの問題はスポーツだけで考えず、街づくりの中でスポーツがそれを補完する形、防災拠点としてのスタジアムの役割を含め、50年先、100年先を見据えた形で考えていかないと。最初がよくてその後尻すぼみではいけないと思います」

――それはその通りですね。

亀井社長「僕ら愛媛FCも一緒だと思います。J2に上がってからも長く続け、次のステップに進むには色々なことを考えないといけない。それをみんなでどう考えるか。少し乱暴な言い方になりますけど、愛媛FCを利用して経済効果をみんなが上げてくれればいいんです。そんなことが見つかって、僕らもその材料になれれば、地域にも貢献できるし、みんなも応援する気持ちを持てるようになります」

――では、今シーズンはそういったセールストークをいかに展開できるかということも、クラブ側のポイントになってきますね?

亀井社長「それはあります。現状の経営は逆境に立っている(注:2011年は2年連続の赤字決算見込みとなることが、シーズン報告会でも発表されている)ところもありますので、そういった話をして、新しいスポンサーも獲得していきたいですね」

――たとえば岡山では岡山県内小学生のシーズン無料観戦チケットにスポンサーを募って、集客と収入を同時に上げている実例(夢パス)があります。そんな形も考えていますか?

亀井社長「そんな形でお願いする必要性もありますね。今までは学校単位での招待とかはしてきましたが、それが収入に結び付いているとは言い難かったですから、これまでの単に広告やスポンサードをお願いするばかりでなく、企業にとっても効果がある提案はしていきたいですね。
 もう、僕らは『勝つだけでいい』という状況ではない。全てのことを考えていかなくてはいけないと思います」

――確かに「勝てば観客動員が増えて全てがうまく回る」時代ではなくなってきています。

亀井社長「そうですね。東日本大震災という辛く、悲しい出来事を通じて、日本人は昨年、地域における絆の大切さを学びました。となると次は自分の行動を通じて地域に、日本に、そして世界に貢献する意識が大事になってきます。
 そして昔はエネルギーを使うことが美徳だった時代もありましたが、節電や自然保護のことなど、皆さんの意識が高くなってきた。ですので、僕らはそういった部分でも貢献していくことが大事。我々がやらなくていけないことが多岐に渡って出てきたことも事実です」