外国人選手を地味な存在にしてしまっているのはメディアだ。扱う量は恐ろしく低い。

それは、サッカーに限った話ではない。ゴルフの海外の試合を見ていても、日本人は何位だという話ばかり。日本ツアーに所属する外国人選手が同じ大会に出ていても、その事実にさえ触れようとしない。紹介さえしない。そこに仲間意識はまるで働いていない。

2年前ほど前、国内男子ゴルフのトーナメントで優勝した石川遼クンは、優勝インタビューで涙ぐんだ。一緒に優勝争いをしていたブレンダン・ジョーンズ(日本ツアーで活躍する豪州人)に、観戦していたギャラリーが露骨な嫌がらせをしたことを、そこで大いに悲しがったのだ。彼がバーディーパットを外すと、グリーンを囲む観衆が、なんと拍手を浴びせかけたのだ。

石川遼クンは当時、確か17歳。そんな少年が、自分を応援してくれた日本人に、「それは違う!」と、敢えて表彰式で、涙を流しながら怒ったわけだ。かなり感動的な、スポーツの名シーンにも数えたくなる美しい光景だったが、その時、バーディーパットを外したブレンダン・ジョーンズに拍手を送ってしまったギャラリーが、僕にはなぜか、特別な人には見えなかった。

そして、それは宇佐美、宇佐美と騒ぐ姿とも残念ながら被って見える。騒ぎたい気持ちは分かるけれど、ルールとマナーには気をつけましょうと言いたい。スポーツには国境はある。ナショナリズムを高揚させるものではあるけれど、一方においてスポーツには国境がない。欧州クラブサッカーの現場には、特にそうした空気が漂っている。

石川遼クンではないが、むしろ選手の方がそのあたりを弁えている。日本の大人からあまり支持を得られそうもない独特な喋り方をする宇佐美選手とて、「スポーツに国境はない感覚」を、たちどころに掴むはずだ。

この世界をリードするのは選手。日本で最も「サッカー偏差値」が高いのは選手。メディアでも、ファンでも、協会でもなく選手だと。僕は自著等々で繰り返し述べてきたが、海外組の増加で、サッカー偏差値的に選手が独走状態を築いてしまうのか。メディア、ファン等々がその後をキチンと追走できるか。宇佐美、香川等々の活躍と同じくらい、注目すべきポイントだと僕は思う。

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