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 2009年末に『アバター』が公開され、2010年は3D映画元年といえるほど、劇場は3D映画で盛り上がっていた。だけど、個人的には『アバター』以上の期待値を持って見られた3D映画はこの『トロン:レガシー』までなかったのだ。

 その理由を考えてみると、やっぱり後づけの3D映画じゃ満足ならん! ってことぐらいしか思いつかない。つまり2010年に公開された3D映画の大半は2D映画を3D映画に変換したもので、製作者側にどこまで3Dのヴィジョンが見えていたのかは、ちょっと疑問なのだ。

 その点で言えば、1982年に世界初のCG本格導入として公開された『トロン』が28年のときを経て、今度は3D映画として(こちらは全編立体撮影!)続編が公開となるなんて、製作者側のイマジネーションにようやく技術が追いついた、とでもいうべき夢みたいな事態じゃないだろうか? 

 

 デジタル業界のカリスマであった父が突然失踪してから27年。続編である本作は息子のサムが、父が創造したデジタルの世界=『トロン」というゲーム内に足を踏み入れることになる。サムはそこで背中にはめられたディスクを武器に“擬人化された不良品プログラム”たちと闘うはめに。話の展開としては、『スターウォーズ』? みたいな父と子のドラマ界では普遍的な“男の子物語”であるんだけど、そこが逆に安心して観られたりするわけで。

 近未来SFといいながら、ヴィジュアルも効果音もどこかノスタルジックな80’sノリなのがうれしい。とくに『トロン』内のヴィジュアルには引き込まれる。黒を基調としたサイバースペースに、サムたちが投げ合う蛍光グリットに光るディスクがめちゃめちゃクール! 行き交うディスクの光線の疾走感や、壮大なコロシアムに埋まる群集の映像も3D効果とあいまって臨場感も倍増! 近未来SFのヴィジョンってコレだよ! と確実に膝を打つ。

 

 『マトリックス』を観たときに、“21世紀はすぐそこ!”と痛感したけど、あまりその世界観に未来を感じることはなかったんです、じつは。私の想像とする未来の世界を軽く超えてきちゃってたし、暗いでしょ、アレ。ところが『トロン』は先にも述べた通り、じゃっかんのレトロさが、子供のころに夢見た“未来”の映像を再現してくれたように感じた。80年代に思い描かれていたデジタル世界のビジュアルってやっぱり夢があるよなー。

 今回ブルーレイ 3D版で観たのだけど自宅でこれだけの映像の広がりを楽しめることに、3Dテレビ初体験の私は未来を感じたというか(笑)、主人公サムと一緒にトロンの世界を体感できたような気がした。何よりこれだけ周到に立体にこだわって制作してある映画は2Dで観ても充分楽しめるけど、3Dで観ると更に楽しいと思う。

藤江ちはる
元「この映画がすごい!」編集長。現「Love Celeb」編集長。1976年4月8日、静岡県出身。2006年、宝島社入社。2007年より月刊「この映画がすごい!」編集長に就任。同誌は映画だけでなく、海外セレブ情報、韓流スター情報、独占対談記事など、幅広く取り扱うミーハー映画雑誌として、多くの女性ファンに支えられていた。

『トロン:レガシー』特集 - MOVIE ENTER