標題のような問いかけをすると、「福島第一原子力発電所の事故の影響」と答えるのが、マスコミを含めた標準的な回答であろう。これは「完全な間違い」ではないが、回答として十分なものでもない。事態はより複雑なのである。まず、3月11日に発生した東日本大震災とその後の津波によって停止を余儀なくされた発電所は、どれぐらいあったか。その後の事故を考えると関心が福島第一に向くのは当然だが、実は11の水力発電所、7つの火力発電所が停止したのが決定的だった。細かい数字は省くが、被害が福島第一だけであれば、その後の「計画停電」は避けられていた。


■問題は火力の復旧具合
 その後の復旧作業で、現在、水力発電所のすべてが復旧している。火力発電所については、3月20日段階で4カ所が停止していた。広野(福島県双葉郡広野町)、常陸那珂(茨城県那珂郡東海村)、鹿島(茨城県神栖市)、東扇島(神奈川県川崎市川崎区)だが、東扇島は3月24日、鹿島は4月20日までに、常陸那珂も5月15日に運転を再開した。残るは広野だが、福島第二原発の10km圏内・福島第一原発の30km圏内に位置するということから作業が難航。福島第二原発の避難区域を「10km」から「8km」に縮小するという「政治的荒技」を使って、復旧作業を始めた。今夏までに復旧を完了させ、稼働させる計画だ。

■「節電15%」は必要か?
東京電力によれば、7月末の電力供給見通しは5500万kWである。ただし、これには広野の再稼働分(総出力380万kW)と、1000万kW以上ある揚水発電分(夜間に余分な電力でダム湖に水を上げておいて発電する)は含まれていない。これを合わせれば、夏のピーク時電力は5500万〜6000万kWなのでギリギリ間に合う。「大企業・家庭一律15%程度」とされている節電目標はクリアされる可能性がある。むろん広野の復旧具合次第だが、政府や東電の「電気が足りない」というのは、多分にキャンペーン的な要素がある。そもそも現状は、原発なしでも電力は「足りている」のである。

■社会は「元に戻れる」か?
現在、JRの駅では昼間のエスカレータ停止が行われているし、企業などでも照明の「間引き」が盛んだ。オマケに、東電の賠償案として電気代への転嫁(電気代値上げ)が確実な様相である。日本経済も活況には遠い。こうなると、大震災を機に「慣らされた」節電の様相は、当面は続くことになるだろう。誰だって、大局レベルの「電気が足りるかどうか」よりも、家庭レベルの「電気代が高いから」の方が、節約の動機づけが強くなるものだ。現状では情報公開が不十分なのだから、怪しげな「電気が足りない」キャンペーンに付和雷同する必要はない。個々人にとって「最適な生活とは何か」を考えて行動することが第一であろう。

digi2(デジ通)
大島克彦


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