/昨今はやりのタダ・ビジネスなどというものは、経済学的には、まったくの空理空論だ。そのツケの方が、はるかに大きい。ところが、バカな経営者は、自分自身でさえコストの見積もりを勘違いし、大勢の顧客まで巻き込んで自滅する。/

 こんなの、メディアリテラシー以前の問題だろう。企業が商売でやっている以上、そして、その円環の中でビジネスが行われている以上、半額だの、無料だの、ということがあるわけがない。

 昨年、『フリー』という本がたいそう売れたが、結局は、昔ながらの三つのモデルに還元される。一つは、三角サービス。獣医は犬を治療するが、カネは犬からではなく、犬の飼い主から得る。行為の依頼者と、行為の対象者がずれている。このために、一見、行為の対象者からすれば、タダであるかのように思われる。しかし、たとえば、視聴者にとってタダのテレビでも、実際は、番組スポンサーの商品の価格に広く薄くその費用が乗せられ、見てもいない番組の分まで、ごたまぜに払わさせられている。ほんとうは、実際に見た番組の視聴料だけを払った方が、はるかに安い。

 もう一つは、寄せ餌サービス。タダだ、半額だ、と、人を集めて、その中から客を釣る。羽布団や健康食品なんかでもよくあるインチキ手法だ。それが、最近は、ネットや携帯に出てきた。これも、タダの部分は、結局、後で高いカネを払わさせられるので、かえって高くつく。100円バーガーにつられて入ってきた客に、うまくセットメニューを売りつけられれば、原価率からしてボロ儲け。もちろん、デパ地下などであれば、味見だけして食い逃げ、という手もないではないが、携帯ゲームの場合、こいつらが、高いカネを払う連中の寄せ餌そのものとなるので、むしろタダで負け組のサクラを雇っているようなものだろう。


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