わずか3年で約100店を新規出店。23区内「どこへでも」配達を実現するためにカクヤスが採った拡大戦略だ。しかし、結果はぼろぼろ。全店の半数以上が赤字となった。崖から転げ落ちかけた同社を救ったのが、Amazon、アスクルに並ぶ『カクヤス・モデル』である。

第1回 
「泡が売れた、泡が弾けた」


■ディスカウントショップへの参入

「あのコンビニ、どう始末すんだよって。バブルが崩壊した頃の先代の言葉がすべての始まりだったのかもしれませんね」

カクヤスは、いまの佐藤順一社長で三代目。代替わりする前は業務用酒販店だったが、あるときから先代社長がサイドビジネスにとコンビニ経営に乗り出していた。

「これがまた素晴らしい場所でしてね。クルマ入れない、人も通ってない。一番売れていたのが店の前のガチャポン、一日の売上がトータルでたったの18万円。笑っちゃうような店だったんです」

土地と建物は先代の持ち物だから家賃はかかっていない。にも関わらず累積赤字は数千万円規模にふくれあがっていた。しかも、折からのバブル崩壊を受けて、本業の酒販店も利益は急減。コンビニをたたんで損失計上するとなれば信用問題に関わりかねない。

「ビールも泡、シャンペンも泡ですからね。そりゃバブルの時は、めちゃくちゃ景気良かった。一時は売上が15億円ぐらいで、営業利益率が6%ぐらいありましたから」

ところがいったんバブルが弾けると、飲食店へのダメージは壊滅的なレベルに及んだ。接待需要がなくなったのはいうまでもなく、小遣いを減らされたお父さん達も帰りに「ちょっと一杯」飲んで帰るゆとりがなくなってしまったのだ。


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