お金持ちになるのに必要な能力とは何か。実業家の堀江貴文さんは「お金を適切なものに使う判断力は稼ぐ力に直結する。その意味では、決裁権のない『小遣い制の人』はその機会に乏しく、出世することはないだろう」という--。

※本稿は、堀江貴文『やってはいけない 絶対損する金の使い方』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

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■「小遣い制」は現代の奴隷制度

月4万円。SBI新生銀行の調査によれば、男性会社員が毎月自由に使えるお金は平均3万9081円だという(2024年6月の調べ)。稼ぎは全額家計に吸い上げられ、稼いだ本人に配給されるのは月4万円。わたしはかねがね、小遣い制は現代の奴隷制度だと言ってきた。

月4万円で何ができるだろうか。昼飯を1回1000円とすれば、20営業日で2万円。残りの2万円も、飲み会が2回と散髪代で消える。書籍を買うお金も、AIツールに課金するお金も、後輩に奢るお金も、気になる人を食事に誘うお金もほとんど残らない。

■「誰の許可もいらずに使えるお金」にこそ稼ぐ力は宿る

わたしは日ごろから、経験にお金を使え、人に奢れ、信用を貯めろと言い続けている。どれも稼ぐ力と人脈を複利で増やすお金の使い方だからだ。小遣い制の男にはその全部ができない。原資がないのである。

「セミナー代くらいは家計から出してもらえる」「仕事に必要なものは経費で落ちる」そう自分をなぐさめる人もいるだろう。わかっていない。配偶者や会社の決裁がいる時点で、そのお金はもう自由なお金ではないのだ。

家計から出るのは配偶者が納得した出費だけ。経費で落ちるのは会社が業務に直結すると認めた出費だけ。会社が認める範囲の勉強だけしていては、会社の外で通用する力はつかない。自分の稼ぐ力に注ぎ込むお金、つまり自己投資は、誰の許可もなく思い立った瞬間に撃ててこそ効くのである。

■「小遣い制」は「稼ぐループ」から外れている

小遣い制にはもっと単純な欠陥もある。がんばる理由が消えるのだ。残業しようが、資格を取ろうが、必死の思いで昇給を勝ち取ろうが、本人に配給される額はほとんど変わらない。給料が増えたぶんは家計に吸い上げられ、ボーナスも没収される。がんばりのリターンが本人に還元されない設計である。歩合ゼロの営業マンが数字を追わなくなるのと同じで、これでやる気を保てというほうが無理がある。

かたや稼ぎを自分で握っている人は、稼げば稼いだだけ自由なお金が増える。学べること、会える人、試せることが増え、さらに稼げるようになる。大成する人はみんなこのループを回している。小遣い制はそのループを入り口で断ち切っているのだ。

小遣い制で失うのは、自己投資の機会や稼ぐ意欲だけではない。お金を使って、自分で判断する経験まで減っていく。何にいくら払うのか。これは必要な出費か、ただの浪費か。少し高くても買う価値があるのか。お金を自由に使える人は、大小さまざまな買い物のたびに、こうした判断を繰り返している。

提供=徳間書店
堀江貴文氏 - 提供=徳間書店

■稼ぎ頭の稼ぐ力を増やすのが一番の近道

わたしは昔から「自分のパンツくらい自分で買え」と言っている。パンツまで妻に選んで買ってもらっている男は、日常の小さな意思決定まで人に預けているということだ。自分の頭で考え、お金を使う経験が圧倒的に少なくなる。

お金を使う判断力は、筋肉と同じである。日々鍛えなければ身につかない。使わなければ衰える。数千円、数万円の買い物ですら自分で決める機会が少ない人が、ある日突然、会社で数千万円の予算を任されて的確な判断ができるだろうか。

自分の財布を明け渡すということは、単に自由に使えるお金を失うだけではない。出世に必要な「お金を動かす訓練」の機会まで手放しているのである。

「うちは妻が家計を守ってくれているから回っている」と言う人もいるだろう。であれば財布を握る側にこそ損得を考えてほしい。世帯でいちばん利回りの高い投資先は、NISAでも節約でもなく、稼ぎ頭の稼ぐ力だ。月4万円に切り詰めて浮かせた数万円とは、リターンの桁が違う。

小遣い制とは、目先の管理のしやすさと引き換えに、世帯最大の収益源への投資をゼロに絞る行為なのだ。妻に小遣いを増やしてほしいとお願いするのではない。「このお金を使って、もっと稼ぐ。家計にも返す」と伝えろ。そして有言実行で稼げ。

■「NISA貧乏」も稼ぐ力をドブに捨てている

「NISA貧乏」という言葉が流行っているらしい。生活費を切り詰め、遊びも趣味も我慢して、節約したお金をすべてNISAの積立投資に突っ込む。SNSでは「最短で生涯投資枠1800万円を埋めるのが正解」なんて言説が飛び交っている。

NISA貧乏の問題は2026年3月、国会でも取り上げられた。若者が生活を切り詰めてまで投資にお金を回している。それは問題ではないか、というわけだ。

わたしが問題だと思うのは、若者が節約していることではない。何にお金を使うかの優先順位だ。若いうちにしかできない旅行や遊び、人とのつき合いまで削って、そのお金をすべてNISAに回す。そこまでして金融投資を優先する必要はない。

20代の数万円は、株に入れるより、自分の経験や稼ぐ力に使ったほうが大きなリターンにつながる可能性がある。まずいのは、将来のためにお金を貯めることではなく、将来につながるはずの経験まで捨てていることである。

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■短期間で人生が変わるほどの利益は出せない

そもそもその積立投資でいくら増えるのか。計算してみればいい。20代が捻出できる積立額は、がんばっても月3万円程度だろう。これを10年続けて、年5%で運用できたとする。元本360万円に対して、増えるのは100万円ほどだ。

10年間、飲み会を断り、旅行を我慢し、話題の店にも行かず、手に入るのが100万円。年に直せば10万円。我慢の対価としてはあまりに安い。しかもこれは、10年間相場が崩れなかった場合の皮算用である。

株や投資信託のように、お金がお金を生む元手を「金融資本」と呼ぶ。金融資本には単純な限界がある。元手が小さければ、増える金額も小さい。年5%で運用できたとしても、100万円から増えるのは1年で5万円程度だ。20代が毎月数万円を積み立てたところで、短期間に人生が変わるほどのお金にはならない。

■AIに課金して、海外に行って、一流に触れるほうがいい

その一方で、増え方のスケールが違うのが「人的資本」だ。あなた自身が働いてお金を稼ぐ力である。人の市場価値は「能力×実績×働ける残り時間」で決まる。能力と実績を早く身につけるほど、それを長く使える。若いほど知識やノウハウの吸収も早い。

経験を積んで能力を上げ、年収が300万円上がれば30年間で9000万円。NISAの生涯投資枠を5回埋められる計算だ。どちらの利回りがいいか、小学生でもわかる話である。

だから若いうちは経験にお金を使え。話題のサービスは片っ端から触る。AIに課金して使い倒す。一流の店で一流の技ともてなしに触れる。海外に出て、日本の常識が通用しない世界を見る。それらはすべてあなたの能力と実績、つまり人的資本として積み上がっていく。

■年老いた成功者が何億円払っても手に入れられないもの

堀江貴文『やってはいけない 絶対損する金の使い方』(徳間書店)

20代の海外旅行と70代の海外旅行では、得られるものもそれを活かせる残り時間もまるで違う。わたしのまわりの成功者はよく言う。何億円払ってもいいから、あのころの若さが欲しい、と。感傷ではない。彼らが買い戻したいのは思い出ではなく元手だ。

尽きない体力、膨大な時間、失うもののない身軽さ。それを使ってもう一度、経験を積みたいのである。若者は成功者たちが切望しているその元手を持っている。お金ではどうやっても買えない元手を、月3万円の積立投資のために切り売りするのは投資判断として下の下である。

積立投資をやめろとは言わない。ただ、若者にとってNISAは最優先の使い道ではない。経験や学び、人づき合いに使って、それでも余ったお金の行き先くらいに考えておけばいい。人的資本が先、金融資本が後である。

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堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)
実業家
1972年10月29日、福岡県生まれ。実業家。SNSグループ株式会社ファウンダー。現在はロケット開発や、アプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙する等、様々な分野で活動する。会員制オンラインサロン『堀江貴文イノベーション大学校(HIU)』(http://salon.horiemon.com)では、500名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開している。著書に『小学ゼロ年生 7歳からの進路相談』(小学館集英社プロダクション)『体力が9割  結局、動いた者が勝つ』(徳間書店) 『僕が料理をする理由 AI時代を自由に生きる40の視点』(オレンジページ)など多数。その他詳細はhttps://zeroichi.media/
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(実業家 堀江 貴文)