夏休みの“ラジオ体操”に異変…「うちの子は一度もやったことがない」 小学校での実施率は約6割、背景には猛暑、世話人不足、騒音苦情も
「朝6時半、公園に集まり、ラジオ体操をしてスタンプを押してもらう」――そんな夏の風景が少しずつ姿を消しつつある。中には「うちの子は一度もラジオ体操をやったことがない」と話す保護者もいる。
関連団体の調査によれば、小学校でラジオ体操を実施している割合は63.2%。2004年度調査の76.4%から、10ポイント以上低下している。その背景には複数の要因があった。誕生からまもなく100年を迎えようとする国民的体操はこのまま子どもたちの日常から消えてしまうのか。
「うちの子は保育園でも小学校でも一度もラジオ体操をやったことがない」
「子どもがラジオ体操を一度も経験したことがない」と話すのは、小学生の子どもを育てる40代の母親だ。
「私自身は子どもの頃、夏休みにラジオ体操へ行った記憶があります。お菓子をもらえるのがうれしかったですね。ただ、うちの子は保育園でも小学校でも一度もラジオ体操をやったことがないと言います。運動会の準備体操も、児童が振付をしたダンスを準備運動としてみんなでやっていました」
ラジオ体操のはじまりは、旧逓信省簡易保険局が1928年に制定した「国民保健体操」にまでさかのぼる。戦後に現在の形へと改められ、学校や職場、地域社会に広く浸透してきた。しかし、少子化や地域活動の縮小などを背景に、ラジオ体操を取り巻く環境は変化。中でも子どもたちのラジオ体操離れが顕著になっている。
一般財団法人簡易保険加入者協会が令和2年度に実施した「小学校におけるラジオ体操の実態調査」によれば、「ラジオ体操を実施している」と回答した小学校は全体の63.2%で、16年前の調査時から10ポイント以上実施率が下がったことが明らかになった。
ラジオ体操を教えられない教員が増加
ラジオ体操の普及発展などを推進する全国ラジオ体操連盟の担当者も、以前に比べて小学生が学校の授業でラジオ体操を行う機会が減っていると話す。
「企業の健康経営の推進等により職場での実施者が増えている一方、少子化の進展に伴う子ども人口の減少等により、小学生が学校の授業でラジオ体操を行う機会が減っています。要因としては、ご当地体操や小学校のオリジナル体操およびストレッチが普及したことに加え、小学校の先生が子どもの頃にラジオ体操を行なっておらず、ラジオ体操を十分教えられないことがあります」
さらに、学校の授業のみならず、夏休みに行われるラジオ体操会に参加する子どもたちも減っている。
「統計データはありませんが、以前に比べ、小学生が参加するラジオ体操会は減少していると思われます。理由としては、少子化により子どもの人口の減少、高齢化などにともなう世話人の減少に加え、猛暑の影響で朝6時台でも暑いこと、熱中症などの事故が起きたときの責任問題や、早朝からのラジオ体操会に対する苦情などもあります」
これらの理由により、夏休みラジオ体操会を中止したり、期間が短縮されたりする動きがみられるという。
「小学生にラジオ体操を普及させることが大きな課題です」
学校でも地域でもラジオ体操を経験しない子どもが増える中、同連盟では小学生への普及を重要な課題と位置付けている。
「当連盟では、将来の日本を担う子どもたち、特に小学生にラジオ体操を普及させることが、次のラジオ体操100年に向けた大きな課題と認識しています」
その一環として、小学校教員や体育系大学等の学生を対象とするラジオ体操講習会を開催するほか、「全国小学生ラジオ体操コンクール」(かんぽ生命と共同実施)を運営。また、小学校の授業で活用できるラジオ体操教材の開発も検討しているという。
さらに、「1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭」や「夏期巡回ラジオ体操・みんなの体操会」(かんぽ生命・NHKとの共同開催)の開催、ラジオ体操指導者の養成などにも取り組んでいる。2026年3月末時点で資格保有者は「1級ラジオ体操指導士」1544名、「2級ラジオ体操指導士」1785名、「ラジオ体操指導員」3万3903名にものぼる。
「近年、ラジオ体操は『体の健康づくり』のほか、『心の健康づくり』や『人と社会のつながりづくり』の役割を果たしていることが注目され、ラジオ体操が社会に果たす役割はますます高まっていると認識しています。当連盟としては、ラジオ体操の効果を積極的に発信し、ラジオ体操を一層普及させることで、体と心の健康づくり、地域の活性化に貢献したいと考えています」(全国ラジオ体操連盟担当者)
少子化や猛暑、学校教育や地域社会の変化の中で、ラジオ体操を取り巻く風景は大きく変わりつつある。それでも約100年にわたって親しまれてきた背景には、わずか3分余りで全身を動かすことができる完成度の高さがあるのだろう。まずはラジオやインターネットなどを通じて、自分の好きな時間に気軽に取り組んでみるのも一つの方法かもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

