【独占入手】《良くて無期、悪くて死刑》岡山・兵庫連続女児刺殺犯が獄中で綴った“自傷行為”と“特異な性癖”「白いブラウスの女の子のお腹を…」「きっかけはいじめです」
2006年に兵庫県たつの市で発生し、長く未解決だった女児刺傷事件で突如容疑者逮捕の報が駆け巡ったのは今年11月7日。前日の神戸新聞には、同県加古川市で2007年に発生し、未解決となっていた別の女児殺害事件にも男が関与を認めたとあった。
【独占入手】自身の特異な性癖などを明かす勝田容疑者からの手紙 独特な丸文字が並ぶ
男の名は勝田州彦(45)。男と3年にわたって手紙のやり取りを続けてきたのがノンフィクションライター・高橋ユキ氏だ。手紙では逮捕前の夏から2つの事件への関与を認めていた。さらに今回、逮捕後の本人の肉声を独占入手した高橋氏がレポートする──。
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〈大事件ですっ!!また逮捕されそうですっ。〉
8月22日の消印で届いた勝田容疑者からの手紙だ。「また」というとおり、彼が逮捕されるのは初めてではない。
手紙は徳島刑務所から届いたものであり、勝田容疑者は別の女児殺害事件で無期懲役が確定し、服役中だった。
2004年9月、岡山県津山市で当時9歳だった女児が下校後に自宅で刺殺された「津山女児殺害事件(以下、津山事件)」で勝田容疑者が逮捕されたのは2018年5月。約14年にわたり未解決だった事件が急展開を見せたのは、兵庫県警の協力による。
岡山県警が県外にも捜査を広げるために兵庫県警に協力を求めたところ、“女児に犯罪を繰り返す人物”として存在が浮上、逮捕に至った。このときも勝田容疑者の身柄は刑務所にあった。2015年に姫路市内において下校中の女子中学生をクラフトナイフで刺したという殺人未遂事件で翌年に懲役10年が確定し、岡山刑務所で服役していた。
白いブラウスの女の子が標的
筆者は勝田容疑者が「津山事件」で逮捕された後、手紙を書き送っていた。初めての返信は2021年11月。接見禁止が解かれ、外部交通が可能になったことによる。以降約3年にわたり文通を続けていた。取材で彼が明かしたのは自身の腹を刺す過激な“自傷行為”だ。
〈切っ掛けは、中学3年の時のいじめです。最初は彫刻刀から始まり、千枚通し、果実ナイフ、クラフトナイフへと発展して行ったのです。時には、お腹を深く刺し過ぎて出血が止まらなかったり、腸まで刃が到達して腸液が出て救急車を呼ぶ事もありました〉(2021年12月14日付の手紙より)
4度の入院経験もあるという“自傷行為”には幼い女の子を傷つけたいという彼の“特異な性癖”が深く関連していると思しき記述も見られた。
〈私が最初に女の子のお腹を殴ったのは、高1の時です。主に、白いブラウスの女の子や体操着の女の子を標的にしていました。白いブラウスの女の子のお腹を殴る事を想像して自慰行為をするのですが、私の想像では、最終的にはお腹を刺されて出血し、死んでしまいます。歪んでいますよね?〉(2022年2月1日付の手紙より)
しかしこうした執着は明かしながらも、彼は公判でも取材でも「津山事件」の関与を否定し続けていた。無罪の可能性がゼロではない彼に、別の事件への関与を問いただすことなどできるはずもない。
ところが〈大事件ですっ!!〉の手紙には〈少し前の5月下旬から兵庫県警察がアタクシのところに突如来て、平成18年9月28日に兵庫県たつの市で発生した殺人未遂事件のことで取り調べを受けているのですっ。〉とあり、続けて〈まぁ、自分でした事なので仕様がないのですが、あと10年程刑期が追加されそうです。〉と、「たつの事件」を認める旨記されていたのである。
それだけではない。次に届いた9月12日付の手紙では、加古川市の女児殺害事件も認めたのだ。
〈また逮捕されそうなことについて。これは嘘ではありませんよ。200%間違いないですね。それも、2件の罪で、です(中略)どちらも自分がやった事なので、この前刑事に自供したんですよ。〉
未解決事件をいきなり2件も認めた経緯を勝田容疑者はこう綴る。
〈まず7月3日にたつの事件のことを認めて、そして8月下旬に加古川事件の方を認めたんですよ。途中から取り調べの雲行きが怪しくなって、加古川事件の方も言わざるをえなくなったんですよ。
これは10年どころか、良くて無期懲役、悪くて死刑のレベルですね。〉
勝田容疑者の“告白”はこれだけではなかった。
〈ユキ女史、この際だから正直に言いますね。
津山事件もワタクシがやったんですよ。嘘をついていて、たいへん申し訳ありませんでした。本当にごめんなさい、です。この件についても、今後詳しく正直にお話ししますね。〉
あれだけ否認していた「津山事件」についても認めたのである。
刑事さんが背中を押してくれた
ところが、「今後」の手紙を待つ中、勝田容疑者は11月7日の逮捕当日から接見禁止となり、弁護士以外の面会が認められなくなったうえ、外部との文通が不可能な状態となった。
その一方で、新聞やテレビでは「警察が提供した情報」として勝田容疑者の逮捕後の供述が報じられる。しかし、一介のフリーライターが警察から情報を得るのは難しい。
そこで筆者は「なぜ突然3事件の関与を認めたのか」を本人に聞くため、大阪で活動している弁護士の中道一政氏に勝田容疑者への接見を依頼。11月10日夜間の接見で本人からの伝言を得た。
「刑事さんが背中を押してくれ、自分でも人として、人間の心を忘れてはいけないと思ったことから、すべてを認めることにしたのです」
逮捕前、9月12日付の手紙で、勝田容疑者は筆者にこう告げている。
〈事件の真相をこれから正直に、有りのままにお話ししていきますので、ユキ女史は面白可笑しく書いてくださいねっ。〉
重大かつ凶悪な事件を“面白可笑しく”書くなどという約束は到底できないが、今後も彼の言葉を聞き続けるつもりだ。
【プロフィール】
高橋ユキ(たかはし・ゆき)/1974年、福岡県生まれ。ノンフィクションライター。2005年、女性4人の傍聴集団「霞っ子クラブ」を結成しブログを開設。以後、フリーライターに。主に刑事裁判を傍聴し、さまざまな媒体に記事を執筆している。『つけびの村 山口連続殺人放火事件を追う』(小学館文庫)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』(小学館新書)など、事件取材や傍聴取材を元にした著作がある。
※週刊ポスト2024年11月29日号