都内にある西武バスの停留所が、たった2mだけ移設されました。小さな変化に見えますが、実現まで5年がかり。この移設は大きな意味を持っています。

たった2m移設されたバス停 なぜ?

 西武バスが2024年11月8日、都内のあるバス停の位置を2mだけ移設しました。


清瀬駅南口に発着する西武バス(画像:写真AC)。

 移設されたのは東京都清瀬市の「三角山」停留所(花小金井駅方向)です。野火止用水が流れる「水道道路」上のバス停で、花小金井駅と清瀬駅南口を結ぶ路線などが停車します。

 周囲は住宅街で、ごく普通のバス停です。しかし、この移設は大きな意味があります。

 実はこのバス停は、東京都内における最後の「危険なバス停 Aランク」に位置付けられていたところです。

 2018年、横浜市でバスを降りて道路を渡ろうとした女の子が対向車にはねられる事故が発生して以降、「危険なバス停」が全国でクローズアップされました。

 これを受け国交省は全バス事業者に対し、「信号機のない横断歩道のそばにあり、停車時にバスが横断歩道にかかる」の数や状況を報告するよう求め、全国で1万195か所がリストアップされました。

 このうち、車体が横断歩道にかかるなどして、最も危険度が高いとされる「Aランク」1615か所を中心として、移設や安全対策が順次進められてきました。この西武バスの「三角山」(花小金井駅方向)は、都内における最後の「Aランク」バス停となっていたのです。

まだ危険度は残るも「最善の結果」の2m移設

 今回の三角山バス停は、停車すればバスが横断歩道をふさいでしまいます。しかし、道路のすぐ脇に野火止用水が流れているため、橋のたもとから移設しようとすれば、大幅な移設を余儀なくされます。危険を解消しようとすれば、住民の利便性が大きく変わってしまう場所にあるのです。

「所轄の警察や自治体、地元の方と約5年の協議を経て移設に至りました。車体がまだ横断歩道にかかることがありますが、危険度ランクは下がりました。これでおしまいではなく、引き続き安全対策を進めます」(西武バス)

 このバス停は利用者も多く、「いろいろなご意見いただき、最善な結果が2mの移設」だったと振り返ります。現在も、到着前に「下りたバスの直前直後の横断は危険」などの車内放送を流し、注意喚起を行っているそうです。

 これで都内のAランクバス停は全て解消されましたが、Bランク、Cランクバス停については、停留所の掲示物や車内放送による注意喚起が行われているものの、「安全対策検討中」とされている箇所も多いです。