NTTとNECが長距離の光伝送技術を確立 3,000km以上の伝送性能の確保を実験で確認 IOWNで長距離エンドツーエンド光パスの実現へ

写真拡大 (全4枚)

NTTとNECは、IOWN オールフォトニクス・ネットワーク(「APN」)の適用エリア拡大に向けて必要となる波長アダプタ機能を有した光ノードシステムを開発し、光ノードシステムが複数回の波長変換を行いながら長距離伝送可能であることを実証した。

将来的には、この波長アダプタ機能を有した光伝送システムをAPN装置として実現することが期待される。

●背景



IOWN構想では、光技術を最大限に活用したAPNにおいて、大容量・低遅延なエンドツーエンド光パスを、消費電力を抑えつつユーザーに提供することにより、工場DXやインタラクティブなライブ映像配信サービス、遠隔手術などを可能にすることが期待されている。より広範囲にエンドツーエンド光パスを提供するためには、割り当てられた波長が異なる光パスをつないでいくことが求められる。これは、APN内の光パスが経由する光ノードシステムにおいて、光パスの波長を低遅延かつノージッタに所望の波長に変換することで実現が可能だ。

NTTは、APNを構成する光ノードシステム「Photonic Exchange」を研究開発してきており、長距離のエンドツーエンド光パスを効率的に提供するためには、Photonic Exchangeが光パスの波長を所望の波長に変換して適応させる波長アダプタ機能と、伝送性能の確保を両立する必要がある。一方NECは、各光パスの波長を任意の他の波長に変換できる光-電気アナログ-光(Optical-Analog-Optical、以下「OAO」)型波長変換技術の研究開発を進めてきた。

今回、NTTが研究開発を進めているPhotonic ExchangeにNECが研究開発を進めているOAO型波長変換技術を活用して、波長アダプタ機能の実験実証を行った。

●技術のポイント



●1:Photonic Exchange

従来の光ノードシステムは、接続先に合わせて光パスの方向を物理的に切り替えるクロスコネクト機能や、ネットワークに光パスを出し入れする機能を有していた。Photonic Exchangeではさらに、接続先の未使用な波長に合わせて波長を適用させる波長アダプタ機能を具備する。波長アダプタ機能を長距離なエンドツーエンド光パスに適用するためには、波長変換による信号影響を抑制する必要があるため、適用する波長変換方式の物理現象を踏まえて信号品質を推定し、波長変換による信号影響を抑制した光ノードシステム構成を設計した。これにより、エリアごとの使用されていない波長を有効活用した長距離のエンドツーエンド光パスの提供に貢献する。

●2:OAO型波長変換器

OAO型波長変換器は、Photonic Exchangeの波長アダプタ機能を実現するために必要となる光パスの波長を任意の波長に変換することが可能である。従来の波長変換手法では、電気デジタル信号処理部分に起因した遅延や揺らぎが生じていたが、OAO型波長変換器は光信号から電気アナログ信号への変換に留め、電気デジタル信号へ変換することなく波長を変換することが可能なため、これまでデジタル信号処理で生じていた遅延や揺らぎをなくすことができることから、低遅延かつノージッタなエンドツーエンド光パスの特徴を損なわずに光パスの波長を変更することができる。

●実験の概要



Photonic Exchangeの波長アダプタ機能を適用した場合のエンドツーエンド光パスの伝送性能を評価するために、NTTとNECは共同で伝送実験評価を行った。

OAO型波長変換器のプロトタイプを使用して、1周回あたり2個のOAO型波長変換器を含む周回伝送実験系を構築。この実験系を使用して、複数回の波長変換を伴う100Gbps/λの光信号品質を測定した。その結果、4回の波長変換を施しても3,000km以上の伝送性能の確保ができたことを確認した。さらに、本実験で使用したOAO型波長変換器では、従来の波長変換手法と比較して、波長変換により生じる消費電力を約90%削減、遅延量を約99%削減することができた。

本実験で確認できた伝送距離は、日本で提供することを想定した場合、本州を縦断できる距離に相当。これにより、工場DX、インタラクティブなライブ映像配信サービス、遠隔手術等のIOWNサービス提供エリアの拡大に寄与する。また、本実験で複数回の波長変換を確認できたことから、異なる事業者が管理するネットワークを跨ったエンドツーエンド光パスの実現にも貢献する。

●各社の役割

NTT
Photonic Exchangeの研究開発
NEC
OAO型波長変換器のコア技術研究開発

●今後の展開

今後は、APNの発展に向けて、波長アダプタ機能を有したPhotonic Exchange適用のユースケース実証を進めていき、IOWN Global Forumにて定義するOpen APN Functional Architectureへの提案を通じて、APNの普及展開を推進していくとしている。