“モラハラ”“托卵”がテーマで「重い」「しんどい」 フジ「わたしの宝物」が見逃し配信で大バズリするワケ
夫婦のタブー描く
「重い」「しんどい」…。10月期放送のあるドラマをめぐって多くの視聴者がため息をついている。10月17日にスタートした松本若菜主演のフジテレビ系ドラマ「わたしの宝物」(木曜午後10時)のことだ。同ドラマのテーマは「托卵(たくらん)」。同局によると、踏み越えてはいけない一線で葛藤する女性を描いた「昼顔」「あなたがしてくれなくても」に続く夫婦のタブーを扱ったドラマの第3弾だ。(※以下、ネタバレを含みます)
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ドラマでは、夫以外の男性との子供を夫の子と偽って産んで育てる「托卵」を題材に、“大切な宝物”を守るために悪女になることを決意した1人の女性(松本若菜)の生き方を描いている。「重い」「しんどい」という視聴者の感想が渦巻いたドラマといえば、7月期放送の同じフジ系「海のはじまり」が真っ先に思い浮かぶはずだ。
連ドラに詳しい放送ライターがこう話す。
「『海のはじまり』はSnow Manのメンバーである目黒蓮が主演し元恋人(古川琴音)が知らない間に子供を出産。現恋人(有村架純)には中絶の過去があり罪悪感に苦しんでいる、など主要キャストのほとんどが苦悩を抱えていたことからネットには『重い』『苦しい』といった声が相次いでいました。
今期放送の『わたしの宝物』も子供を軸にしたストーリーで、松本演じる専業主婦が幼なじみの冬月稜と再会し妊娠。生まれた子供を夫の子供として育てる決断をします。主人公の罪悪感や家族の愛と葛藤を深掘りして描いているところは『海のはじまり』のテイストにそっくり。幼なじみの冬月を演じている深澤辰哉がSnow Manのメンバーであること、図書館が大切なスポットとして登場するところも共通点として挙げられます」
確かに「海のはじまり」と「わたしの宝物」は同じ路線を狙っているように見える。重いテーマを扱った「海のはじまり」の平均視聴率は世帯7.6%(ビデオリサーチ、関東地区)で9月23日放送の最終回は番組最高の9.5%に跳ね上がった。
「テレビ各局は最近、13〜49歳のコア視聴率や見逃し配信の再生回数を重要視しているためSNSを使った宣伝に力を入れています。『海のはじまり』はプロデューサー自らSNSで連日発信し視聴者をどんどん巻き込んでいきました。特に有村架純演じる弥生が主人公の夏と破局するストーリーについて『かわいそう』と物議をかもしましたが、それがかえって話題性を煽ることになりTVerのお気に入り数は200万に迫る勢いでした」(前出の放送ライター)
お気に入り100万人突破
そんな戦略が「わたしの宝物」にも受け継がれている。主人公が抱く罪悪感や周囲の葛藤、苦悩など重いテーマがかえって視聴者の共感を呼び起こしているかのようだ。世帯視聴率は第1話(10月17日)5.1%、第2話(同24日)5.1%、第3話(同31日)3.7%と絶好調というわけではない。
だが、個人が好きな時間に好きな場所で見るという視聴習慣が定着する中、TVerのお気に入り数は102万1000人に達しており、フジ月9「嘘解きレトリック」(月曜午後9時)の67万7000人、TBS系日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(日曜午後9時)の76万9000人を大きく引き離す人気ぶりなのだ。
フジテレビ関係者が指摘する。
「松本演じる専業主婦の神崎美羽が、外では理想の夫に見えるエリート商社マンの夫・宏樹(田中圭)から家庭でモラハラ発言を繰り返されます。そんな中、かつて“ヒーロー”のような存在で密かに思い続けていた幼なじみの冬月稜(深澤)と偶然再会して、一夜を共にして彼の子供を宿します。こうしたドロドロの展開は、どうしてもこの先の3人の運命を知りたくなります。
『海のはじまり』もそうでしたが、フジは人間が抱える罪悪感にスポットをあてて丹念に描くスタイルのドラマをあえて狙っているように見えますね。ネット広告につながる見逃し配信数を稼ぐ戦略という点で、フジは新たな金鉱を探し当てたのかもしれません。『わたしの宝物』は第1話から第3話までTVerのほかフジが運営する配信サービスのFODでも視聴できます。これもネットシフトを重視する姿勢の表れです」
「海のはじまり」「わたしの宝物」でハッキリしてきたフジの「重い」「しんどい」路線。視聴者はどこまで耐えられるか――。
デイリー新潮編集部