各国首脳らがトランプ氏に相次ぎ祝意、中国・イランが警戒感…ロシアは「非友好国であることを忘れてはならない」
米大統領選で共和党のトランプ前大統領が6日、当選を確実にしたことを受け、イスラエルはじめ各国の首脳らからは祝意の表明が相次いだ。
一方、中国やイランは論評を避け、トランプ外交への警戒感をにじませた。
「新たな始まり」
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は6日、トランプ氏が当選確実を待たずに勝利宣言した直後、「歴史上最大のカムバック、おめでとうございます」と祝福する声明を出した。
パレスチナ自治区ガザやレバノンで戦闘を続けるネタニヤフ政権には、民主党のハリス副大統領が勝利すれば、武器禁輸などの措置を取るのではないかという懸念があった。
ネタニヤフ氏はトランプ氏の勝利を「あなたのホワイトハウスへの復帰は、米国の新たな始まりで、米国とイスラエルの偉大な同盟を再確認することになる」と手放しで喜んだ。
新興・途上国「グローバル・サウス」の盟主を自任するインドのナレンドラ・モディ首相はX(旧ツイッター)で祝意を表した。モディ氏はトランプ氏を「友人」と呼び「前の任期での成功に基づき、両国の協力関係を新たに築くことを楽しみにしている」と述べた。
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は6日、Xにトランプ氏への祝賀メッセージを投稿した。尹氏は「これまで見せてくださった強力なリーダーシップのもとで、韓米同盟と米国の未来はさらに輝きを増すでしょう。今後も緊密に協力していくことを期待します」と書き込んだ。
サウジアラビアのサルマン・ビン・アブドルアジズ国王はトランプ氏への祝電で「中東と世界の安定実現に向けた任務の成功を願う」と述べた。
トルコのタイップ・エルドアン大統領は6日、SNSに「選挙によって始まる新時代にトルコと米国の関係が強化され、地域と世界の危機、パレスチナ問題やロシアとウクライナの戦争が終結することを願う」と投稿した。トランプ氏は、ガザでの戦闘やロシアのウクライナ侵略を直ちに終わらせると主張してきた。
中国の脅威にさらされている台湾の頼清徳(ライチンドォー)総統は6日、自身のXでトランプ氏の勝利に祝意を示した。頼氏は英語と中国語で「共通の価値観と利益の上に築かれた台湾と米国の長年にわたる協力関係は、今後も地域の安定の礎になり、更なる繁栄につながると確信している」と投稿した。
論評避ける
中国外務省の毛寧(マオニン)副報道局長は6日の記者会見で、「大統領選挙は米国の内政であり、我々は米国の人々の選択を尊重する」と述べるにとどめ、論評は避けた。
対米外交については「政策は一貫している。相互尊重、平和共存、協力とウィンウィンの原則に基づいて中米関係に対応していく」と述べた。
米国の制裁下にあるイランのファテメ・モハジェラニ政府報道官は6日、「米大統領選は我々とは特に関係がない。人(大統領)が交代しても深刻な変化はなく、トランプ氏勝利に懸念はない」と述べた。
トランプ氏は前政権時代、一方的に核合意から離脱してイランへの制裁を再開した。トランプ氏の復帰で、対イラン圧力の強化を警戒する国民の不安を打ち消した形だ。
欧州委員長「再び協力 楽しみ」
トランプ前大統領の安全保障政策や関税政策を強く警戒する欧州首脳もひとまず、祝意を送った。トランプ氏と在任時に対立した欧州連合(EU)のウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長は「再び協力し、大西洋にまたがる課題に取り組むのを楽しみにしている」と声明を出した。
英国のスターマー首相は「英米の特別な関係」が「今後何年にもわたって繁栄し続けることを私は確信している」と声明を出した。ドイツのショルツ首相も「今後もドイツと米国の国民利益のために連携する」とX上で強調した。
自国優先主義がトランプ氏に近いイタリアのメローニ首相は6日、「イタリアと米国は揺るぎない同盟、共通の価値観、歴史的な友情で結ばれた『姉妹』だ。今後さらに絆が強まると確信している」とXに書き込んだ。
トランプ氏と親密なハンガリーのオルバン首相はX上に「米国政治史上最大のカムバックだ! 世界にとって必要とされていた勝利だ!」と興奮をにじませた。
ゼレンスキー氏「力による平和」期待
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6日、米大統領選でトランプ前大統領の勝利宣言から1時間もしないうちにSNSに「素晴らしい勝利を祝福する」と投稿した。トランプ氏が提唱する「力による平和」が「ウクライナにとって公正な平和の実現に近づけるのに必要な原則そのものだ」とも指摘し、ロシアによるウクライナ侵略での米国の主導的役割に期待感を示した。
トランプ氏はウクライナへの軍事支援に否定的で、当選すれば、来年1月の就任までに和平を実現すると主張してきた。ゼレンスキー氏が早い段階でトランプ氏を称賛するメッセージを送ったのも、トランプ氏がウクライナに不利な条件でプーチン露大統領との「ディール(取引)」を提案するとも限らないとの警戒感が背景にありそうだ。
一方、タス通信によると、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領府報道官は6日、米国が「我が国に対する戦争に直接・間接に関与する非友好国であることを忘れてはならない」と指摘しつつ、「(トランプ氏が大統領に就任する)1月に何が起きるか見てみよう」と述べた。ロシアが米大統領選に介入したと批判されている点に関しては「我々は強く否定する」と語った。