トヨタが時速300キロの「空飛ぶモビリティ」日本で初飛行! 「東京から東富士まで25分」 クルマなら4倍かかる? 25年にはドバイで運行目指す! トヨタとJobyの共感とは
「空のモビリティ」の実用化を加速!?
2024年11月2日にトヨタとJobyは、両社の創業以来の夢である「空のモビリティの実用化」に向けた発表会をトヨタの東富士研究所にて行いました。
トヨタの理念は「Mobility for All、全ての人に移動の自由を」です。
【画像】これが時速300キロでる「新しいモビリティ」です(10枚)
それは陸だけでなく、海や空も含まれています。海は1997年にマリン事業を立ち上げ、ボートの企画・開発・生産管理・販売・サービスなどを行なっていますが、空はどうでしょうか。
実はトヨタグループ創始者・豊田佐吉氏の「飛行機に載せて、太平洋をひとっ飛び」できる性能を持つ蓄電池の開発を推奨。
その夢は喜一郎氏、章一郎氏、そして章男氏と代々受け継がれてきました。
モビリティカンパニーへの変革を掲げるトヨタは、アメリカのエンジニアのスタートアップとして始まったJobyの空のモビリティへの夢と情熱に共感し、共に挑戦をスタート。
約7年に渡る両社の取り組みを得て開発されたヘリコプター、ドローン、小型飛行機の要素を持つ電動垂直離着陸機「eVOTL」を、日本で始めてトヨタ・東富士研究所の上空で試験フライトを行ないました。
その辺りのニュースはすでに様々なメディアで紹介されていますが、なぜトヨタとJobyは協業したのでしょう。
その決断をしたトヨタ会長の豊田章男氏と副社長兼CTOの中嶋裕樹氏、Joby創業者兼CEOのジョーベン・ビバード氏はそれぞれ次のように話してくれました。
―― この協業は「環境への影響がより小さくなる世界、渋滞に悩まされることなく、大切な人や場所と過ごす時間を増やせるような世界に変えたい」という夢と情熱を持つジョーベン・ビバート氏と、「すべての人に移動の自由をお届けすることを願う」と言う豊田章男氏の想いが合致した事だと聞いています。まさに会社と会社と言うより、人と人の繋がりだと思いますが、「この人とならやっていける」と直感したのは、どこでしょうか。
豊田:トップ同士の信頼関係に加えて「ブレない軸」ですね。
初めてジョーベンさんと会った時に、「世の中を変えたい」、「新しいモビリティを提供したいね」と聞きましたが、その軸が今も全く変わっていないと今日も思いました。
ただ、発表会の壇上では「今日はゴールではなく、リアルスタートだよ」と。
ジョーベン:私は何か関係を作る時に生涯続くような関係を造りたいと思っています。
世界が良くなるために、「自分ができる事する」を大事にしています。
更に私たちの持つ価値「世界をよりよくしていきたい」と言う想いが豊田さんと共通していた事ですね。
―― 発表会では雨で飛行ができませんでしたが、日本の空で実際に飛んでいる姿を見てどのような感想を持ちましたか。
ジョーベン:「夢が叶った」その一言に尽きると思います。
それで、自分たちの機体が日本で飛んでる姿、それも富士山と言うアイコニックなアイコンの目の前で、飛行してる姿は感動的でした。
更にトヨタと築いてきたパートナーシップを示す、ショーケースのような場面だったと思います。
―― eVOTL は電気で動きます。10月30日の豊田佐吉翁の顕彰祭で「佐吉電池」の話をしていましたが、トヨタのバッテリーを搭載して夢はアメリカまでですか。
豊田:佐吉電池はともかく、トヨタもバッテリー作り始めているOEMの1つですから、eVOTLにトヨタのバッテリーがいつか使われるようなレベルを目指していきたいですね。
ジョーベン:トヨタのイノベーションの一つに「水素燃料電池」があります。
航空機の推進力を生むエネルギーこれこそが未来の航空業界を変えていくものだと思っています。
なぜなら、ジェット燃料に比べると水素燃料はマスあたりのエネルギー量は3倍、更に水素を推進力に転換する効率性は2倍、合わせると6倍良くなるからです。
中嶋:これは技術屋から言うなと言われていますが(笑)、実は最初にジョーベンさんと出会ったのは、「水素をやろうよ」と言う声がけが発端で、まさに「夢」だなと。
もちろん困難は山ほどありますが、僕らも水素技術をずっとやってきていますので、そちらも是非とも一緒にやりたいと話をしている所です。
豊田:トヨタはモビリティカンパニーになると宣言していますので、それは水素とか自動運転とか自動車における技術も相当アジャイルに進む可能性があると思います。
その部分でパートナーと認めてもらっている事は、とてもありがたし、期待はもてると思います。
―― eVOTLの特徴の1つはヘリコプターなどと比べると「音が静か」ですが、それ以外に優位性はどこにあるとお考えですか。
ジョーベン:1つ目は「安全性」。複数のレイヤーで冗長性を持たせています。これは旅客機の安全性の確保の考えと非常に似ています。
2つ目は運行上の「経済性」です。エンジンで推進力を生む航空機は保全やオーバーホールが大変ですが、電気で推進力を生む機体だと航空機自体がシンプルな構造になるので保全コストも抑えられます。
3つ目は「スピード」です。300km/hで飛べるので日本の都市間を速く効率よく繋ぐ事ができるはずです。
―― 将来的には乗客が支払うコストはヘリコプターよりも安くなる可能性はありますか。
ジョーベン:考え方としては「タクシーよりも5倍早く移動できるけれども料金が同じ」を目指してます。
最先端の技術は「技術的にできること」と「法律の元でやっていい事」にギャップになると思います。
今後は国ごとの競争になると考えています。交渉や実験をしている中で、どこが1番早いでしょうか。そして日本はどうでしょうか・
私たちはドバイ政府と6年間の独占商業権、承認を受けています。
今考えているのは2025年末までにドバイでサービスを開始することを目指しています。
日本に関しても航空局の人達は新たな可能性に対して非常に積極的に関与していただき、飛行に関する様々なルールの検証していただいています。
中嶋:ただ試作機で何かしようとすると結構大変なんです。
今日もヘリポートの所で飛ばしたかったのですが、聞くと「ヘリポートのスペースだと足りません、まだ実績がないのでもっと広い所で」と言われてしまいます。これは水素の時と同じですね。
豊田:そういう意味でも日本の頑張っている企業を応援してほしいですね。
日本で「成長」とか「新しい技術」と言うならば、それは規制を含めて新しい未来づくりが必要です。
共感で一緒に未来を作ろうと言うムードに官庁も入ってほしいですね。
―― 今回のパートナーシップにより、豊田家4代の空への想いが実現しそうな想いがありますが、その辺りに関してはどうでしょうか。
豊田:私は4代で完成するとも思っていません。この想いと言うのは1代で無理です。
だから、大事なことはジェネレーションを超えても「その軸をブラさない」であり、それには大きな夢がない駄目だと思っています。だから、その夢を多くの人に応援してほしい。
これまでトヨタがやってきたのは、クルマも量産化し、「一般の人でも乗れるクルマをつくる」事が目的でした。
そういう意味では、eVOTLも同じ考えです。
だから、「世界で速く飛ばしたい」ではなく、多くの人に移動の自由、そして困ってるものを直していこうというMobility for allの考えなので、いい意味で煽ってほしいと思います。
ジョーベン:これから新しい“日常的”なモビリティとして新しい領域に入っていきますが、単にAからBに移動するのではなくて、より安全な移動、より速い移動、そしてもっと美しい形での移動ができるようにしたいと思っています。
これから創る未来は本当にワクワクしますが、今までも、それからこれからもやろうとしていることはトヨタとのパートナーシップがなかったら、何もできなかったと思っています。
―― ちなみにトヨタのマスタードライバーは豊田章男さん(=モリゾウ)ですが、このeVOTLで飛行する日はいつでしょうか。
豊田:私もさっき聞きましたが、ジョーベンさんから「Soon」と言われました(笑)
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ちなみに東京から今回の試験飛行を行なったトヨタ東富士研究所までクルマで向かうと通常で1時間半〜2時間、休日などで渋滞が発生するとそれ以上の時間がかかります。
しかし、eVOTLであれば渋滞はゼロな上に僅か25分で辿り着くことが可能だと言います。
距離と時間の感覚を大きく変える可能性としての「空のモビリティ」と言う新たな選択肢、実用化がとても楽しみです。