まさかまさかの劣勢に絶句する自民党…落選危機にある大物議員リスト「調査から判明」

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 政権選択を問う衆院選は10月27日投開票される。石破茂首相が率いる自民党は各種情勢調査でピンチが伝えられ、公明党の獲得議席を合わせても与党で過半数(233議席)に届かない可能性がささやかれる状況だ。石破氏は政権を維持できるのか、それとも退陣を余儀なくされるのか。選挙分析に定評がある経済アナリストの佐藤健太氏が“落選危機にある大物議員”の今を解説する。

発言ブレブレの石破政権、支持率下落

 首相就任から戦後最短での解散総選挙に臨み、連立与党での過半数確保を目標とする石破氏から余裕が消えた。序盤戦は主要メディアの情勢調査を見ても、「与党の過半数維持」はクリアできると見られていた。だが、自民党派閥の政治資金パーティー収入をめぐる不記載問題に加えて、中盤戦からは石破首相の「発言のブレ」も追及されて支持率が下落。不記載問題への関与が指摘された候補者はもちろん、本来は無関係の候補者にまで大逆風が吹き荒れている。

 自民党は今回の衆院選で旧安倍派幹部11人と旧二階派幹部の計12人を公認せず、34人には比例重複立候補を認めない措置を決めた。46人の中には終盤戦でも優勢に立っている候補者がいるものの、多くは厳しい戦いを余儀なくされている。時事通信は10月21日に「与党過半数うかがう」との記事を配信したが、産経新聞とFNNは10月19、20両日実施した情勢調査と取材の結果を踏まえて「与党で過半数を割り込む可能性がある」と分析した。

自民党への逆風、勢いを増す一方

 朝日新聞や共同通信でも与党での過半数確保は微妙とされており、自民党は公示前の247議席から大幅減となる見通しが示されている。10月31日号の「週刊文春」は、「自民197議席で石破退陣!」との見出しで最終予測とともに石破首相の退陣可能性に触れた記事を掲載した。各政党、各社の調査を見る限り、自民党への逆風は止まっていないどころか、投開票日に向けて勢いを増しているようにさえ感じる。

 では、自民党はどこまでピンチなのか。“落選危機”にあるとされる大物議員の選挙区を見ていこう。まずは、東京24区。かつては自民党最大派閥「安倍派」の幹部として権勢を振るった“八王子のジャイアン”こと、萩生田光一元政調会長は自民党が「非公認」とした1人だ。政治資金収支報告書に2728万円の不記載があり、無所属での立候補となった。比例復活がない中での苦戦には危機感が強くにじむ。

非公認の萩生田、自民党要人が応援に駆けつける

 自民党の高市早苗前経済安全保障相や茂木敏充前幹事長、小林鷹之元経済安保相らに加え、故・安倍晋三元首相の昭恵夫人や大阪維新の会創業者の松井一郎元大阪府知事も“応援”に駆けつけているが、「政治とカネ」や旧統一教会との接点問題などで激しい追及にさらされている。

 東京24区は萩生田氏と立憲民主党の有田芳生元参院議員が伯仲しており、どちらが競り勝つのか最後までわからない状況だ。萩生田氏は「不記載があったことは事実だが、事務所で裏金づくりだとか、私的流用だとか、あるいは脱税だとか、そういうことは一切ない」と繰り返している。だが、逆風を弾き返せるかは不透明だ。有田氏は「石にかじりついてでも、岩をこじ開けてでも、大きな勝利を勝ち取るために最後まで全力で戦っていく」と無党派層への浸透を図る。

 筆者が入手した自民党による10月16~20日の調査結果によれば、萩生田氏はリードしているとされる。だが、まだわからない。24区には、日本維新の会の佐藤由美氏や国民民主党の浦川祐輔氏、参政党の與倉さゆり氏、無所属の畑尻文夫氏も立候補している。

同じく非公認の下村、釈明から入る戦い

 次の“落選危機”に名が上がるのは、東京11区の下村博文元文部科学相だ。旧安倍派の事務総長経験者で476万円の不記載があり、自民党は4月に党員資格停止1年の処分を決めた。下村氏も公認を得られなかった1人で、無所属での立候補となっている。

 9期28年間の実績を訴える下村氏は「崩れゆくかもしれない、衰退していくかもしれない日本の立て直し、教育改革を実現したい」と語りかけ、自民党支持層を中心に固めている。接戦を繰り広げる立憲民主党の阿久津幸彦氏の応援には野田佳彦代表らが駆けつけ、阿久津氏は「災害に対して、今の自民党政権は真剣味が足りないのではないか」と力を込める。

 先の自民党調査では2人が互角の戦いとなっている。釈明から入る戦いは厳しいと言え、どこまで下村氏が挽回を図ることができるのか注目だ。11区には、維新の大豆生田実氏、共産党の伊波政昇氏、無所属の斎藤孝幸氏も立候補している。

丸川「どうかお助けください」

 3人目の“危機”は、東京7区の丸川珠代元五輪相だ。政治資金収支報告書への不記載額が822万円あり、自民党から戒告処分を受けた丸川氏。今回は衆院転身を目指し、参院議員からの“鞍替え”となる。自民党公認は得られたものの、比例重複立候補は認められず選挙区で敗北すれば比例復活の道はない。

 丸川氏は「組織の中で私自身が不透明なカネの流れに早く気づいて、それを正すことができなかったことは本当に申し訳なく思っています」「どうかお助け下さい」と涙ながらに訴えるが、立憲民主党元職の松尾明弘氏は「最大の争点は裏金問題」と追及を緩めない。維新前職の小野泰輔氏も不記載問題に「良識が試されている」と怒りをにじませる。

 自民党の調査では松尾氏と丸川氏が激しく競い合っている。丸川氏の涙は票につながるかは不透明だ。東京7区には、参政党新人の石川友梨香氏も立候補している。

 4人目は、石破内閣で現職閣僚の牧原秀樹法相だ。埼玉5区は立憲民主党の枝野幸男元代表の地盤で、牧原氏は2005年以来6連敗してきた。

牧原vs枝野、枝野が先行か

「政治とカネ」問題は無関係のため今回も比例復活の道は残されているが、安倍元首相の死去後に問題視された旧統一教会との接点が判明。10月8日の記者会見では旧統一教会の関連イベントに秘書の出席も含めて計37回参加していたことを明らかにした。

 自民党や主要メディアの情勢調査によれば、知名度の高い枝野氏が先行している。閣僚として絶対に負けられない戦いとなる牧原氏は挽回することができるのか。埼玉5区には、共産党の山本悠子氏、れいわ新選組の辻村千尋氏も立候補している。

 現職閣僚の“落選危機”は、鹿児島3区にもみられる。石破内閣は不記載問題に関係した議員はいないものの、旧統一教会との接点を認めた8人が入閣している。小里泰弘農林水産相もその1人だ。2021年の前回衆院選と同様、立憲民主党前職の野間健氏との一騎打ちとなっており、初入閣による知名度アップで雪辱を果たせるか注目されている。

 前回は9万票弱を獲得したものの、野間氏に惨敗。その前の2017年衆院選は10万票超を得て勝利した小里氏。これまで互角と言える戦いを展開してきた2人だが、自民党や主要メディアの情勢調査によれば、小里氏は野間健氏にリードを許している。

政界に激震

 自民党の「大物」というカテゴリーでいえば、福井2区の高木毅元国会対策委員長や神奈川20区の甘利明元幹事長も週刊文春の分析で立憲民主党候補にリードを許している。また、他党では公明党の代表に就任したばかりの石井啓一氏が埼玉14区で接戦を強いられ、維新は東京1区で音喜多駿政調会長が“ピンチ”だ。各党・各候補者は10月27日の投開票に向けて激しくしのぎを削る。

 各種情勢調査を見ると、自民党は2009年に政権交代を許して以来の危機を迎えていることになる。選挙結果次第では、石破首相の退陣や連立組み替えもあり得るだろう。数々の大物議員が“落選危機”にある中で、その後のカタチは誰がどのように描くのか。11月の米大統領選前に政界には激震が走りそうな気配も感じる。