この記事をまとめると

■2010年代から自動車メーカーは「コネクテッド」に取り組み始めた

タイヤメーカーは通信によってデータのやり取りをする「コネクテッドタイヤ」を開発中

■将来的にはクルマや道路インフラとつながることで新サービスが生まれるのかもしれない

次世代のクルマにもタイヤは欠かせない

「コネクテッドタイヤ」という表現がある。ここでいうコネクテッドとは、通信によってデータのやり取りをすることを指す。つまり、「つながるクルマ」ならぬ「つながるタイヤ」だ。

 このコネクテッドという概念については、自動車業界では2010年代半ば頃からグローバルで一気に注目が集まるようになった。

 背景には、欧州メーカーを主体とした次世代車開発に対するビジョンがある。そのなかでも、ドイツメルセデス・ベンツ(当時:ダイムラー)が掲げたのCASEの存在が大きい。コネクテッド、自動運転技術、シェアリングなどの新しいサービス事業、そしてパワートレインの電動化が複合的に関係することを、それらの頭文字をとってCASEと呼んだ。

 あくまでもメルセデス・ベンツという個社のマーケティング用語だったが、日本の自動車メーカー各社、そしてタイヤを含むグローバルの自動車部品大手でも、将来事業計画のなかでCASEという表現を使うようになったといえる。

 こうしたCASEによる技術進化が進むと、既存の自動車部品では今後、消滅したり需要が低減する領域もある。とくに、電動化によって内燃機関関連の部品業界では生き残りをかけて既存技術を活かした次世代技術の開発を真剣に取り組んでいるところだ。

 そんな時代の変化のなかでも、「タイヤはこれまでの通り必要だ」という声が少なくない。どのようなエネルギーを使い、どのようなシステムで駆動力を発生させても、その力を路面に伝えて走るためにはタイヤは必然というわけだ。

 その上で、タイヤメーカーとしては、「これから先、タイヤができうる新しいこと」を考えており、ひとつの方法がコネクテッドである。

 コネクテッドタイヤという発想で、すでに実用化されているのが、空気圧の把握だ。ホイールにセンサーを装着し、Bluetoothなどの通信手段によって空気圧の変化が分かる仕組みだ。一部で標準装備されているクルマもあれば、アフターマーケット用の商品としてスマートフォンアプリでデータ管理できるものもある。

 そのほか、実験レベルでは、非接触充電ができるタイヤがある。道路に埋設したコイルとタイヤホイール内に装着したコイルによって充電が可能だ。

 こうした事例を見る限り、実質的にはタイヤではなくホイールがコネクテッドしていることになる。

 将来的には、タイヤ自体を構成するゴムや金属素材を介して、クルマ本体や道路インフラとコネクテッドすることで、新たなサービスが生まれるのかもしれない。

 いずれにしても、将来的にクルマによってタイヤは必然だと考えるため、コネクテッドタイヤの可能性がさらに広がることは間違いないだろう。