8回を無失点に抑え、雄叫びを上げるDeNA・堀岡隼人【写真:小林靖】

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DeNAの堀岡が2点リードの8回から登板して1回1安打無失点

■DeNA 2ー0 巨人(16日・東京ドーム)

 DeNAの堀岡隼人投手が16日、東京ドームで行われた巨人とのクライマックスシリーズ(CS)、ファイナルステージ第1戦の8回から4番手で登板し、1回を1安打無失点でホールドをあげた。昨季限りで巨人を戦力外となり、育成で加入した26歳がかつての本拠地で輝いた。シーズンわずか6登板だった男の“勝ちパターン”起用の裏には、キャッチボールがあった。

 先発のケイが6回1安打無失点でつないだバトン。守護神の森原が肩のコンディション不良によりベンチを外れて必死の継投となった中、8回から4番手でマウンドに上がったのが堀岡だった。先頭の丸に右前打されるも、増田大を中飛、オコエを空振り三振、岡本和を右飛。中軸相手に威力ある直球とキレのあるフォークで得点を許さず、雄叫びをあげた。

 6月に支配下を掴み、2度の登録抹消を経験。今季はわずか6試合の登板で0勝0敗1ホールド。防御率0.00とはいえ、大事な初戦の8回の出番には左翼席のDeNAファンからどよめきが起きたほどだった。9回に投げた伊勢を除いても、ベンチには佐々木も中川颯もいた。なぜ堀岡に託したのか――。大原慎司チーフ投手コーチが明かす。

「CSが始まる前にキャッチボールを見ていて、一番球がよかったんです。これはいいところでいけるんじゃないか、秘密兵器じゃないけどリリーバーの救世主になるのではないかと小杉(陽太投手コーチ)と話をしていた。いけるとは思っていたけれど、その通りになってくれました」

 投手の基礎ともいえるキャッチボール。9月29日に3度目の昇格を果たしたときから、大原コーチはその球筋に好調さを感じていたという。「『キャッチボールを大事にしろよ』と口酸っぱく言ってきて、毎日よかった。これはたぶんいけるのではと。よかったので、どんどん使っていきますよ」。期待に応えてくれた右腕を称えてうれしそうに目を細めた。

 堀岡自身も、特別な思いを投球にぶつけた。2016年育成ドラフト7位で巨人に入団。1軍登板はわずか18試合だったが、昨年まで7年間を過ごした古巣だ。「(特別な思いは)もちろんあったんですけど、あまり気にしすぎてもいい方向に動かないと思ったのでとにかく打者を抑えることだけを考えていきました」と仕事を遂行した。

 ちょうど1年前は巨人を戦力外となり、人生の岐路に立っていた。それが今や、1勝のアドバンテージがある王者・巨人との大事な初戦を制するキーマンとなった。これで対戦成績は1勝1敗のタイ。「横浜さんが拾ってくれたので、それに尽きるかなと思います」。さまざまな思いを胸に秘め、堀岡が巨人相手に腕を振る。(町田利衣 / Rie Machida)