iPhone 16の大胆なアップデートを市場はどう評価する? 気になるアクションボタンとカメラコントロールの未来

写真拡大

 iPhone 16より搭載された「カメラコントロール」は、これは表面がガラス製の感圧センサーで、スイッチとして押すだけでなく表面をなぞることによるスワイプの機能も備える、アップル独自のインターフェイスだ。また、iPhone 16は「iPhone 15 Pro」で初めて搭載された「アクションボタン」も備えている。これは従来消音スイッチのあった部位に備わるボタンで、消音だけでなく様々な機能の起動を割り当てることができるようになったものだ。2つの新たな操作系を一挙に搭載したiPhone 16の使い心地を確かめていこう。

【写真】iPhone 15とiPhone 16の比較画像

 Mac歴30年、iPhone歴は16年の私。コンピュータのレビューなどを書く仕事もしているが、iPhoneを買う際には基本的に「Proは買わない派」である。理由は「重くてゴツいから」。「Pro」と名の付くiPhoneは普通のiPhoneより重いし、カメラがゴツくていかついので苦手なのだ。素材にチタニウムを採用してからは幾分軽くなったものの、「もう一声!」という気持ちである。小型の「mini」があるときは迷わずminiを買っていたのだが、「iPhone 13 mini」を最後にminiはなくなってしまったのが残念だ。

 というわけでiPhone 16 Pro、ではなくiPhone 16を発売後数週間ほど使っている。冒頭にも紹介した「アクションボタン」は昨年「iPhone 15 Pro」で初めて採用されたインターフェイスで、消音ボタンを置き換える形で搭載されたものだ。自身の使い方を振り返るとiPhoneは基本的に消音モードで使っているので、アクションボタンになったことは大歓迎だ。Realsound Tech編集部で聞いたところによると「ボイスメモ」を登録しておけば取材時にワンボタンで録音できて便利らしい。

 加えて追加されたのが「カメラコントロール」である。これは触覚フィードバックを備えたガラス製のインターフェイスで、表面をなぞることによるスワイプのような操作、二段階の押し込み(カメラのシャッターの"半押し"に近い挙動だ)が可能だ。単なるボタンではないことから「カメラコントロール」という名前がついている。クリックすると即座に「カメラ」アプリが起動し、もう一度クリックすればシャッターを切れる。カメラの起動中、クリックせずに表面を軽く押すと触覚フィードバックとともに、スワイプして選べるメニューが出てくる。下記の画像は「スタイル」を変更する様子。

 さらに、この状態でディスプレイ左上に表示された項目を指で下にスワイプすると、カメラコントロールで変更できる項目の一覧が表示される。カメラコントロールをスワイプするか、画面上で左右にスワイプすると設定項目を選択できる。

 選べるのは「露出」「被写界深度」「ズーム」「カメラ」「スタイル」「トーン」の5つ。ところで「カメラ」アプリの中で「カメラ」を選ぶというのは少し奇妙だ。ここではズームレンズの変更を行うため、「レンズ」としても良かったと思う。

 実機を触るまでは「指先でこんなに細かい操作ができるのか?」と不安になったが、操作は驚くほど快適でさすがはアップルといったところ。筆者は昨年iPhone 12 mini から iPhone 15へと機種変更したのだが、まさか1年で操作系がこんなに更新されてしまうとは思っておらず驚いた。

 「カメラコントロール」は初めて搭載した操作系としては非常に操作感がよく、便利に使える。同時に秀逸だと感じるのは、こうした操作系を入れ込みながらもこれまでの操作には変更がないところだ。「カメラ」を開くさいには「カメラコントロール」を使わずともアプリアイコンをタップすることも、コントロールパネルから開くこともできる。画面についたシャッターボタンもそのままだ。今までの使い方に慣れているユーザは操作を新しく覚える必要はない。こうした過去の操作系との互換が保たれているのはありがたいことだし(なんせ、いまだにホームボタンがほしいという声を聞くのだから)、これはアップルが苦心したのだろうと感じる部分である。

 ただし、私はよく写真を撮影するしカメラが好きなのでこのアップデートに魅力を感じたが、カメラのアップデートを求めていないユーザにとっては「必要のないボタンが増えただけ」ということでもある。iPhoneに限らず、ソフトウェアの機能をどこまでハードウェアに表出するのか、というのはとても難しい判断だ。それを踏まえてもiPhone 16への「カメラコントロール」の導入は慎重かつ大胆なものだったと感じる。「アクションボタン」のように、Pro機で試験的に導入するようなプロセスを経ずに投入されたのだから。

 というわけで、新たに生まれた操作系「カメラコントロール」を歓迎しつつ、その行く先を見守っている。

(文=白石倖介)