自衛隊コンサートが論議に(写真はイメージ)

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陸上自衛隊の「ふれあいコンサート」に、広島県廿日市市立中学校の吹奏楽部が参加したことについて、地元の市民団体が自衛隊の勧誘活動につながるなどと抗議している。

後援した同市教委は、「勧誘につながっていない」と否定しているが、団体は、今後も抗議を継続する構えだ。その主張について、職業差別ではないかといった指摘も出ているが、団体側は、「見当違いだ」などと反論している。

市民団体主張「軍隊への警戒心を薄め、自衛隊の勧誘につながる」

この「自衛隊ふれあいコンサート」は、廿日市市内のホールで2024年9月14日に入場無料で行われた。

自衛隊家族会などが主催し、広島県内の海田市駐屯地に所属する陸自第13音楽隊と市立中学校の吹奏楽部がコラボした。ふれあいコンサートは、18年から始まり、今回で5回目となる。

これに対し、01年に結成され、教科書問題などで学校教育に発言している「教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま」など3団体が、10月7日になって廿日市市役所を訪れ、コンサートを後援した市と市教委に抗議文を出した。

抗議文では、コンサートは、「戦争や実質『軍隊』への生徒の警戒心を薄めつつ、音楽教育を通して将来のリクルートに繋げる機能を果たしている」「自衛隊は文民統制によって教育との距離をコントロールするべき危険な『実力組織』である」など5項目を指摘した。そして、「中学生にとって非常に危険であり、実質強制的に校番順に一部の生徒を参加させることは公教育の一環として不適切である」として、コンサートを後援したことに厳重に抗議するとしている。

こうした抗議内容が14日に一部で報じられると、ネット上では、様々な意見が書き込まれた。

「反対意見を持つ人がいるのは理解できる」「抗議をするのは自由だ」とする向きもあったが、抗議に違和感を持ったと明かす声の方が多かったようだ。「プロの演奏する音楽に触れて何が悪い?」「市民団体の主張は言いすぎだ」といった疑問のほか、「職業差別してますよね?」との指摘も出た。

廿日市市教委「学校の意向確認し、主体的に参加」

市民団体の抗議について、廿日市市教委の学校教育課は10月15日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように話した。

「様々なご意見をお持ちになる方もおられ、その1つと考えています。抗議文を持って来られ、『ご意見として承知しました』とお伝えしました。プロレベルの演奏に触れて、生徒らの意欲や技術が向上すればいいと考えており、悪いと思ってやってきたわけではありません。来年のことはまだ決まっていませんが、今のところ後援を中止する考えはありません」

自衛隊の勧誘につながるとされたことについては、こう説明した。

「以前は、自衛隊の活動をパネル展示するなどしたブースが会場にありましたが、今はなくなっています。自衛隊の勧誘活動にはつながっておらず、子どもたちの個人情報の提供もありません。そもそも、自衛隊は法で認められている組織です」

中学生のコンサート参加を強制していることも、否定した。

「吹奏楽部のある学校の校番順に回していることは事実ですが、何が何でも参加しなければいけないことはありません。『チャンスがありますがどうですか?』と学校の意向を確認し、その意思がある学校が主体的に参加しています」

一方、抗議した団体の1つ、教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしまの事務局では15日、取材に対し、その理由を次のように説明した。

「自衛隊の存在に抗議しておらず、廃止を求めてもいません。ただ、学校教育の中に入っていくことが、健全な状態にはならないことを心配しており、将来の子どもたちにとって危険なことを訴えたかったわけです。5項目の問題点が今の状況下で現実的になっており、自衛隊とのふれあいは問題があるので止めてほしいと思っています」

職業差別に当たるのではないかとの指摘については、こう反論した。

「差別になることは書いておらず、見当違いの思い込みではないですか。市や市教委には、後援するのを止めてほしいと思っており、抗議活動は今後も続けていきます」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)