カバンにGPSを仕掛け、置き引きの犯人を自ら捕まえに行く。そんな動画を撮影したのは、過激系YouTuberの先駆者とも言われるエドさんだ。「ずっと注目を集めていたい頭になり、一歩離れて自分を見られなくなる時期がある。気がついたら取り返しが付かなくて、信頼も失う。麻薬と一緒だ」と、過去の活動を振り返る。

【映像】ボロボロの様子で“引退宣言”したエドさん

 エドさんはケンカや危険な場所に潜入するなどの動画で、一時は登録者数100万人を超える人気を得たが、昨年引退宣言した。「過激をやっていて、YouTuberとしての末路が危うくなり、失うものもでかいと気づき、とりあえず休もう」と決めたエドさんとともに、『ABEMA Prime』では過激動画が増え続ける理由を考えた。

■カップル系から過激系に「数字の回り方が圧倒的に違う」

 エドさんは当初、グループYouTuberだった。「アイドル育成的に『半年で卒業』となったが、影響力は媒体のもので、自分に力が付くわけではない。1年研究して、過激動画が伸びると気づいた。カップルチャンネルよりも、数字の回り方が圧倒的に違う。当時は“過激系YouTuber”もなかったので、先駆者になれると感じた」。

 しかし、過激系として活動する中で、歯止めが聞かなくなっていったという。「他のYouTuberと違って、人に迷惑をかけないことをモットーにしていたため、迷惑をかける意識があまりなく、ブレーキがきかなくなってしまった」と語る。最盛期の収益は「毎月、高級車を何台か買えるくらい」にのぼった。

 命の危機にさらされる可能性もあるが、「過激系はビビらない」という。「拳銃よりカメラの方が怖い時代だから、襲われても『ネタにしよう』と考える」。過激系を始めた当時は21〜22歳と、まだ若かった。「子役から芸能活動していたが、外国人で太っていたため仕事がなく、『有名になりたい』とだけ考えて成長してきた」と、幼少期を振り返りつつ、「有名になって満たされすぎたが、失ったものは大きい。アイドル売りからの広げ方や、目先の数字を追いかけない未来もあったと後悔している」。

■なおも増える過激系「お金も増えて、視聴者の支持も増える。ゲーム感覚」さらに悪質な“迷惑系”も

 ネットの話題や炎上に詳しいITジャーナリストの篠原修司氏は、過激系が増える背景を「お金が入ってくる点が大きい」と指摘する。「お金が増える楽しさで、どんどん過激になる。視聴者の支持も増えて、ゲーム感覚なのではないか」。

 過激系YouTuberは「有名でない下の方では、どんどん増えている」と予測する。「どれだけの数かは認知できないが、まねをする人が増え、全体数も増えているのではとの肌感覚がある」。近いジャンルとして、“迷惑系”もあるが、「どちらかというと迷惑系に寄っている。法を守っていると言いつつも、よく見ると迷惑防止条例違反となっている動画が多い」と解説する。

■数字に追われたYouTuberたちと過激動画の行き着く先は…

 エドさんの転機は2020年、「違法風俗店に潜入動画」でのトラブルだった。撮影をめぐり金銭を請求されるなど、3年間逃げ続けるも、暴行を受ける。そして2023年に「血だらけの顔」で引退宣言するも、2024年にYouTuber再開を公表した。今後は「殺人犯に話を聞いて状況を再現する」「暴力団組員に小指の詰め方を聞く」などを構想している。

 活動を続ける中では、葛藤もあった。エドさんは「数字がなくなると、元の生活に戻らないといけないプレッシャーがあった」と明かす。「そこにやめられなくなる理由があり、過激系から迷惑系へと移っていく。もはや『○○してみた』『食べてみた』は面白くない。ゼロから人気になれる方法は、過激系しか残されていない。『有名であることが正義』となって、視野が狭まる」。

 篠原氏は「過激の“限界”に興味がある」と話す。「どんどん過激になる中で、行き着くところはどこなのか。人を殺すわけにはいかない。100年後には過激動画の限界が見えてくるかもしれない」。
(『ABEMA Prime』より)