【独自】福岡厚労相「必要な対応行う」 小池都知事「路頭に迷うなどあってはならない」 無給で働き続けた元職員は健康に支障も “見捨てられた老人ホーム”問題

「イット!」が連日追跡してきた“見捨てられた老人ホーム”問題に、新たな動きがあった。
福岡厚労相は「必要な対応を行う」と閣議後の会見で述べ、小池都知事も「いきなり路頭に迷うなどということがあってはならない」と話した。

施設から退去も敷金は戻らず

退去期限日から一夜明け、人の姿が消えた室内。

11日正午前の千葉市の住宅型有料老人ホーム「ドクターハウス ジャルダン寒川」の内部の映像。

入居していた夫の荷物を運び出していた70代の女性は…。

ーー敷金は？
入居者の妻：
8万5000円（ほど）払いましたけど。

ーーそれって戻ってきました？
入居者の妻：
いや戻ってないですね。ちょっと無理ですよね。経営がずさんっていうか、あいまいだったんだなぁと。

この老人ホームに入居する際に支払う「敷金の請求書」には、「82,000円」と記載があった。
月の利用料は、10万6000円ほど。
周辺の相場に比べ、格安な設定で入所者を集めていた。

入居者の家族：
うちらもね、素人だからわかんないでね、いいように入っちゃったけど、安いと思って。実際こうなっちゃうとは思いもしないですからね。

しかし給料の未払いで職員が一斉退職、さらに突然施設の閉鎖が決まり、入居者は10月10日までの退去が求められた。

同様の問題は、同じ会社が運営する東京・足立区や神奈川・横浜市の施設でも同時に発生していた。

千葉市の施設からも入居者の転居完了

10日の時点で、千葉市の施設だけがまだ転居先が決まらない入居者が残っていて、11日も入居者が家族の手を借りながら施設から出てくるなど、引っ越し作業が行われていた。

千葉市によると、11日午後までにすべての入居者が転居を終了して、3施設すべてで転居が完了した。

ロッカーの荷物を取りに来たという元職員は「もうガラーンとしていて、すごく寂しい感じでした。ここで『最後を迎えたい』と言っていた方もいらっしゃったので、その気持ちに応えられなかったことは、私たちもすごく悲しいなって」と話した。

ひと気の消えた職員控室の壁一面にカビが発生していて、衝撃を受けたという。

元職員も、2カ月分の給料が払われておらず、「2回分もらえてない感じで、めちゃくちゃ困っています。ものすごく腹立たしいですね」と語る。

収入が途絶え、職も失った職員の厳しい生活。
問題の施設の1つ、横浜市の「ジャルダン本郷台」の元職員・Aさんは「先が見えない状態で働いていたので、かなり精神的に苦痛でした」と話し、それでも残る入居者を見捨てられず、無給で働き続けたという。

横浜市の施設元職員・Aさん：
“情”ですとか、使命感というんですか、この人たちを残して（去れない）。自分も早く見切りをつけて辞めればよかったんですけど、なかなか辞められずにズルズル来てたら…。

その影響で自分の健康に支障が出ていたという。

横浜市の施設元職員・Aさん：
精神状態が自分の中でまだちょっと普通じゃないっていうか、物を食べてても、味がなんかしなかったりとか、すごいストレスで、口が開かなくなった時もあったりとか。

国や東京都が対応に乗り出す

一方、“見捨てられた老人ホーム”問題をめぐり、ついに国や東京都が対応に乗り出す動きが出ている。

11日の閣議後の会見で、福岡厚労相は「まず報道については承知をしております。本事案が発生したことにつきましては、 誠に遺憾であるというふうに感じておりまして、関係自治体と連携し、『老人福祉法』等に基づく必要な対応を行うとともに、より実効性の高い指導監督の手法について検討してまいりたいと考えています」と話した。

午後2時には、足立区の施設を抱える小池都知事も「この老人ホームなどはですね、“ついのすみか”と考えられるわけでございまして、そういう思いで入る人たちが、いきなり路頭に迷うなどということがあってはなりません」と話した。

一部の「住宅型有料老人ホーム」が抱える問題点について、淑徳大学総合福祉学部・結城康博教授は「住宅型有料老人ホームっていうのは、“届け出制”というか、規制が非常に緩和されているところに問題があって、乱造してしまう可能性が非常に指摘されていました。今回の問題を受けて、厚生労働省はしっかりと法整備をしていくべき。そのうえで都道府県や市町村は、しっかりと良質なサービスが維持されているか監査体制をしっかりしていくべき」と指摘する。
（「イット!」10月11日放送より）

※FNNでは「老人ホーム一斉退職問題」を継続取材しています。情報提供してくださる方は、ぜひこちらまでご連絡ください。