こちらは「おとめ座(乙女座)」の方向約5400万光年先の銀河「NGC 4694」です。ぼんやりと輝くNGC 4694には渦巻腕(渦状腕)はみられず、塵(ダスト)の雲が輝きを覆うように広がっています。


【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野カメラ3(WFC3)で撮影された渦巻銀河「NGC 4694」(Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Thilker)】

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」による観測データをもとに作成されました。ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 4694の観測は、宇宙のあらゆる時代において銀河の成長と進化を促進する重要なプロセスであるガスの流れ・星形成・フィードバックのサイクルを解明するために、近隣の55の銀河を観測する調査の一環として2024年5月に実施されました。


NGC 4694は一見すると渦巻腕のような目立つ構造を持たない楕円銀河のようですが、欧州宇宙機関(ESA)によればその形態と星形成活動をもとにレンズ状銀河に分類されています。レンズ状銀河は渦巻銀河と楕円銀河の中間にあたる形態の銀河で、中央部分の膨らみや円盤構造はあるものの、渦巻銀河の特徴である渦巻腕は持たないとされています。


楕円銀河には大量の塵は存在していても新しい星の材料となるガスはほとんどありませんが、NGC 4694は水素ガスの巨大な雲に囲まれているといいます。ガスの雲はここには写っていない近くの矮小銀河「VCC 2062」との間をつなぐ長い橋のような形をしていることから、2つの銀河は過去に激しい衝突を経験したことがあり、より大きなNGC 4694のほうにガスが引き寄せられているとみられています。


冒頭の画像は“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”としてESAから2024年9月30日付で公開されています。


 


Source


ESA/Hubble - Playing against type

文・編集/sorae編集部