阿部サダヲと深田恭子が夫婦役を演じた受験ホームドラマが2017年に放送された「下剋上受験」だ。

夫婦役を演じた阿部サダヲと深田恭子

阿部といえば、伝説のドラマ「池袋ウエストゲートパーク」など、宮藤官九郎が携わった作品に出演してきたことでもおなじみ。最近では、昭和から令和にタイムスリップし、"コンプライアンス"の違いに戸惑いまくる主人公を演じたドラマ「不適切にもほどがある!」が話題になった。また、大河ドラマ「いだてん」で演じた、1964年の東京オリンピック招致を成功させた人物・田畑政治役も印象深く、せっかちで饒舌で人を巻き込んでいく人物像が阿部にピッタリの役柄だった。

一方の深田は、可愛らしいロリータファッションを披露した映画「下妻物語」で注目を浴び、2019年にはアラサーの予備校講師を演じたドラマ「初めて恋をした日に読む話」が人気に。可愛くてマイペースだが自分の芯をちゃんと持っている、そんな役が深田にはよく似合う。

阿部と深田は2024年12月に公開予定の、細胞を擬人化した漫画が原作の「はたらく細胞」で久々に共演。阿部は人間の父親・漆崎役を、深田は肝細胞役を演じている。

そんな阿部と深田が2017年に共演し、本物の夫婦のような空気感を醸し出していたのが「下剋上受験」だ。ベストセラーになった実話の同名小説をモチーフにした作品で、小学校5年生の一人娘・佳織(山田美紅羽)と共に偏差値72の私立名門中学校の受験に挑む父親・桜井信一を阿部が、健気に頑張る娘と手のかかる夫をサポートする母親・香夏子を深田が演じている。

■熱血で涙もろい父親が奮闘する様を、阿部が持ち前のコミカルさで演じる

桜井家は信一の父親である一夫(小林薫)を含めて全員が"中卒"。不動産会社に勤めている信一はエリートの新人・楢崎(風間俊介)とコンビを組み、お客様に出身校を聞かれた時には「中卒大学です」とボケて見せるも全くウケず、「一人娘には違う景色を見せたい」という想いから佳織に中学受験をさせることを決意。小学生のうちは友達と遊ぶ方が大事だと思っている香夏子は中学受験に難色を示すが、佳織は信一の熱い気持ちを受け止める。

偏差値41の佳織が塾講師に相手にされなくても「まだ間に合う」と涙ながらに娘を励まし、「目指せ。偏差値72 桜葉学園合格!」と書いた横断幕を作る。さらには大工の父に「俺塾」と付けた部屋を作ってもらって嬉し泣きする信一は、娘への愛が暴走する"猪突猛進タイプ"だ。自らも猛勉強し、"つるかめ算"をわかりやすく教えるために、中卒仲間が集まる居酒屋に折り紙を持っていって鶴と亀を折ってもらったりと大奮闘。佳織の成績に一喜一憂し、時には「なんで(勉強したことを)忘れちゃうんだよ」と苛立ったり、模擬試験の日には自分がプレッシャーでお腹が痛くなったりと、娘以上に受験生な父を演じた阿部。その喜怒哀楽が忙しすぎる演技に注目だ。

■父の期待に応えようと一生懸命な娘を癒す母親役が深田にぴったり

佳織が受験を嫌になったらやめることを条件に、中学受験に奮闘する佳織と信一をサポートする妻の香夏子。飾らないおおらかな性格で、入浴しながら佳織に漢字を教え、時には落ち込んでいる佳織を後ろから抱きしめる、優しい母親。大きな子供のような信一のみならず、義父の世話も焼く桜井家のムードメーカーのような存在だ。そんな香夏子が一家の大黒柱になってスーツ姿で出勤するキリッとした姿や、家では我慢している涙を楢崎の前で流す場面もチャーミング。深キョンの包みこむような存在感と演技が、時に佳織を号泣させるほどの"お受験バトル"を緩和させる。

本作が下町感のあるあたたかいドタバタホームドラマとして成立しているのは、阿部と深田の明るいコンビゆえだろうと思わせられる。阿部と深田のハマリ役ともいえる演技に注目しながら、お受験バトルの行く末を見届けてほしい。

文=山本弘子

放送情報【スカパー!】

下剋上受験
放送日時:2024年10月5日(土)21:00〜[#1〜#5]、2024年10月6日(日)21:00〜[#6〜#10]
チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
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