『素晴らしき哉、先生!』©︎ABCテレビ

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「へなちょこな教師だったなぁ。でもね、人間としてへなちょこなんかじゃないから。ママは、そう思うよ。娘のあなたを、誇りに思うからね」 

参考:生田絵梨花、『素晴らしき哉、先生!』笑顔と涙のオールアップ 「やりきったなという達成感」

 『素晴らしき哉、先生!』(ABCテレビ・テレビ朝日系/以下『すばかな先生』)第7話。りお(生田絵梨花)の母・奈緒(田中美佐子)の言葉を聞き、思わず涙がこぼれた。

 仕事で失敗したとき、プライベートで壁にぶつかったとき。つい、「はぁ、なんてダメダメ人間なんだろう……」と自分のすべてを否定してしまいそうになった経験はないだろうか。ひとつの場所でうまくできなかったからといって、その人のすべてがダメダメなわけじゃないのに。

 未婚の母になるというりおの選択は、決して間違っているものではない。浮気性で、「間違いなく俺の子……なんだよね?」なんて言ってくる聖也(小関裕太)とともに育てていくよりは、温かい笹岡家のなかでみんなで育てていった方が、いいに決まっている。

 しかし、りおは教師だ。未婚の母になるのは悪いことではないが、いわゆる“普通”のレールからは外れてしまう。多様性が叫ばれる世の中だとしても、“普通”の生き方ができないのなら、教師を辞めるしかない。

 これまで、「教師だって人間なんだ」「先生も、自由で悪いか?」と文句を言ってきたりおだが、ここで「教師だって人間なんだから、未婚の母になったっていいじゃん!」と言わないところが、彼女らしいなと思った。

 すべてを自由にしてしまえば、なんでもありになってしまう。何かにつけて文句をつけてくるモンスターペアレントの声をすべて吸収すると心がもたないので、“ここからはNG”という線引きは、自分で決めなければならない。りおのなかでは、教師が未婚の母になるのはNGだったのだろう。

 たとえ、素晴らしい先生になれなかったとしても、素晴らしい人生になるのなら、それでいいと思う。

 また、第7話は茅島みずきの演技が光った回でもあった。『すばかな先生』の玲奈もそうだが、最近の茅島はどこか影を纏った役柄を演じることが多い。同世代の俳優陣と比べると大人びており、達観している部分があるため、そういったキャラクターをあてがわれるのだろう。同クールに放送されていた『あの子の子ども』(カンテレ・フジテレビ系)でも、家庭に問題を抱えて心を閉ざすようになってしまった女子高生を演じていた。

 玲奈も、高校生でありながら銀座のホステスで働き、母が営むスナックの手伝いをしている……という実年齢よりは大人びた経験をしている役柄だ。第7話では、大学の費用を稼ぐため、国会議員の吉沢(田口浩正)にゆすりをかけたときの挑発的な眼差しと、反撃を喰らったときの脆さ。その両面を演じ分けなければならなかった。

 どれだけふてくされたことを言っていても、視聴者が玲奈を応援したくなるのは、その奥にピュアな心がちゃんと残っているのが伝わってくるからだと思う。玲奈は、かなり自分勝手な母・夏子(鈴木紗理奈)のことも見捨てずに、どうにか助けようとしている。「これって、共依存のようになっているのでは?」と心配になる瞬間もあったが、玲奈が母を守りたいと思う理由は、「産んでくれたから」。

 玲奈をみごもったとき、夏子は未婚だったため、堕ろす選択もあったはずなのに、産むことを選んでくれた。「それで、今ここにわたしがいるから」と言ったときの玲奈の晴れ晴れとした表情を見て、子どもにこんなふうに思わせることができたら、子育ては成功なのかもしれないなぁ……なんて思った。

 “素敵な大人”の姿を見せるため、吉沢を警察に突き出したりおの父・秀樹(高橋克典)。りおが涙ながらに妊娠のことを話したとき、そっと寄り添い、「(教師失格だって)思われたっていいじゃん。パパもママも、全力で守ってあげるからさ」と励ました母・奈緒。妹のせり(内海誠子)も、いつでも明るくりおの悩みを吹き飛ばしてくれる。この家族のなかで育っていく子どもは、きっと素敵な人間になるはずだ。りおと、りおの子どもの成長が楽しみでならない。

(文=菜本かな)