Galileo Galileiがニューアルバム『MANSTER』と『MANTRAL』を2作同時リリースした。「人間の外づら、他者から見たときの性質」をテーマに、「Human」と「Monster」を組み合わせた『MANSTER』と、「ニュートラルなときの人間性」をテーマに、「Human」と「Mantle」と「Neutral」を組み合わせた『MANTRAL』。ミクスチャーからニューウェイヴ、エレクトロまでを横断しつつ、ジャンルには収束されないGalileo Galileiならではの楽曲が14曲ずつ収録された、非常に濃密な仕上がりとなっている。

札幌のわんわんスタジオにいるメンバー4人とリモートを繋いでの1万字インタビューで、人間の持つ多面性を表現した作品の中に内包されている、様々な人の人生や物語を感じてもらいたい。

―アルバム2枚同時リリースで全28曲。どのような構想から制作がスタートしたのでしょうか?

雄貴:2枚組じゃなくて1枚ずつ同時に出すのはずっとやってみたかったことで、僕はsyrup16gの『動脈』と『静脈』がめちゃくちゃ好きなんです。あのアルバムを友達みんなで聴いて、『動脈』が好きなやつと『静脈』が好きなやつでわかれたりするのが最高に楽しかった記憶があって、好き嫌いがはっきり分かれてもいいアルバムを2枚出すっていうのはずっとやりたかったんですよね。実は以前にも何回かアイディア出したことがあって、その時点でご時勢的にもアルバムを2枚出すことに誰もOKをしてくれない感じだったんですけど、今はそういう場所から抜け出てしまい、自分たちでゴーサインが出せる状態になって、ずっとやりたかったしやってみようかなって。


尾崎雄貴

―BBHFでも対になるコンセプトの作品や2枚組を出していて、コンセプチュアルな作品を作るのはもともとお好きですよね。

雄貴:そうですね。『BBHF1 -南下する青年-』は2枚組でしたけど、今回はどっちかしか聴かれなかったとしてもそれでいいというか、そういう気持ちで制作をしてたんです。

岩井:Galileo Galileiは曲を書いてないと消滅してしまう生物だと思ってるので(笑)、その日に曲ができなくても、曲を書くという行為自体はずっとやってるんですね。そういう意味では、「2つのアルバムを作りたい」と雄貴が言ったときに、メンバーは迷わず「できるよね」ってなったし、多分次は4枚出すだろうなって(笑)。

雄貴:って冗談で言ってたら本当にやるかってなるから恐ろしいよ(笑)。

岩井:社会や周りの環境に書かされてるわけでもないというか、「こういう配信のプラットフォームがあるからこういうふうに攻めなきゃいけない」とか、外的な要因で書かされてるわけではなく、完全にメンバーの関係性や個人が思ってることに基づいて、内側から出てきてるものなので、その源泉は多分止められない気がしてますね。そういう欲望みたいなものって、別に曲を書くっていうことじゃないにしろ、人間には毎日何回も起こるじゃないですか。俺たちはその欲求にすごく忠実なんじゃないかなって。

雄貴:僕らは日々一緒に過ごしてて、ビールを飲みながらみんなで野球の試合を見てゲラゲラ笑ってるタイミングとかからもう曲作りが始まってて、そこからグッて何か持ち上がったタイミングで曲がもう形になってるんですよ。でも「はい、楽器持って曲書いて」って言われたら書けなくて、特に自分はそう思いますね。曲提供の苦労っていうのがあって、自分たちのことだったらいっぱい話せるけど、人に曲を書くときはその人の考えとかを聞いた上で作るわけじゃないですか。それは僕にはすごく難しくて、職業として作家をやってるコンポーザーのは人すごいなと思いますね。

―岡崎くんと和樹くんは今回の制作はどうでしたか?

岡崎:2枚のフルアルバムを同時にリリースするっていうのは、今の音楽の流通を考えるとなかなかないと思うから、珍しいリリースの仕方だと思われたりすることもあると思うんですけど、自分はこの2枚のアルバムを大作だと意気込んで制作に向かったわけではなくて、どちらかというとラフに、でも期待感もありつつ制作できたなと思っていて。制作自体も根詰めてやるっていうよりは、制作の合間にキャッチボールをしたり、自分たちのありのままの姿で制作に臨めたと思っていて、割と素の自分がアルバムに出せたなっていうのをすごく思いますね。

和樹:2枚アルバムを出すっていう、それをやりたいと思ってやったことが一番重要というか、「2枚アルバム出したら面白いっしょ」じゃなくて、「2枚アルバムを出したい!」っていう、メンバー全員がそういう気持ちになって、それをやり遂げることができたという達成感が自分たちのさらなる成長に繋がった……って言うと中学校みたいだけど(笑)、でもそういう気がします。


岩井郁人

雄貴:こうやって話す機会をいただいて初めて気付くことが今回特にあるなと思っていて。というのも、今回ミックス・マスタリングも自分たちでやったので、特に後半が過酷だったんですよ。なので、それぞれの曲を並べた上でしっかり客観的に聴いて、自分たちはこういうアルバムを作ったんだなって思う機会がなかなかなくて。この間やっとこのスタジオに集まって、改めて納品したデータを頭から聴いたんですけど、みんなまだ自分たちが作ったものを理解してなさすぎて、いつの間にかもう曲が終わっちゃって。アルバムについての会話は一切なく、むしろ中盤ぐらいからコロコロコミックの話をずっとしてて(笑)。

―「コロコロ派対ボンボン派」みたいな(笑)。

雄貴:そう、ボンボン派ってこういうやつだったよねみたいな、もうその時点で次に進んじゃってる感じがするんです(笑)。だから今作は特にこうやって話をして、いろいろ自分たちで気づくことがあるし、実際にリリースされて、ツアーをやって気づくことが今まで以上にいっぱいあるんじゃないかなと予感してますね。

―音楽性で言うと、ジャンル分けを意識的にやってるわけではないのかなと思いつつ、『MANSTER』の方がエレクトロニックなものもロックなものも含めて、アップダウンがある作品になっていて、『MANTRAL』の方が管弦をはじめ生感のある楽器の割合が多くて、それこそニュートラルなテンション感の作品だなという印象だったんですけど、本人たちとしてはどこまで意図的で、どこまで自然発生的でしょうか?

雄貴:7曲ずつぐらいできたあたりで振り分けをガチでやり始めたんですけど、でも結局最初に振り分けた曲と全く入れ替わっちゃってて、最後にマスター用のデータを書き出すまでずっと悩んでるというか、ずっとああだこうだやってました。やっぱりアルバムって面白いなと思ったのが、「激しい曲はこっち、激しくない曲はこっち」みたいに分ければいいように思えるけど、僕らが作りたかったのはそういうことじゃなくて、1枚のアルバムとしてそれぞれ成立してるものを作りたかったんです。ずっと考えてて、悩ましかったんですけど、でも楽しかったですね。打線を組んでるみたいな感じでした(笑)。

―ミックス・マスタリングまで自分たちでやったとのことですが、エンジニアリングの作業的な面では和樹くんがその役割を担ってると思うんですけど、いかがでしたか?

和樹:今回岩井くんがおうちにスタジオを作りまして。今まではこのわんスタでミックス・マスタリングを全部やろうとなると、どうしてもモニターと机が1個しかないので、その日スタジオに来て、家に帰るまでの10時間ずっと椅子に座り続けてるみたいな感じだったんですけど、今回はミックスを岩井くんのスタジオとわんスタで分けてやったんです。なので、『Bee and The Whales』と比べると労力自体は減りました。

雄貴:『MANSTER』がわんスタで、『MANTRAL』が岩井くんのスタジオで、全部ではないですけど、『MANTRAL』は岩井くんが1人でがっつりやる曲も多かったですね。

岩井:今回サウンドの違いは出たと思います。尾崎雄貴は破壊と構築の人間だと僕は思ってるんですよ。破壊的な音作りをして、1回ぶち壊したものを再構築するっていうことを思い切ってやるタイプ。でも僕はきれいに構築するタイプで、そこが2作の音の違いに出てるんじゃないかな。自分はどっちも実験的な作品だと思ってるんだけど、よりエレクトリックでオルタナティブな『MANSTER』、アコースティックでオーガニックな『MANTRAL』っていうところに繋がってるのかなと。

―まさにその印象があって、言ってみればFOLKSの音楽性は『MANTRAL』寄りというか、そういう相性の良さもあったのかなって。

岩井:さっき和樹が僕に話を振ってくれましたけど、和樹に対して言及すると、和樹は武器商人なんですよ。いつも新しい武器を仕入れてくるんです。


尾崎和樹

―機材のこと?

和樹:そうですね。プラグインだったり、「これがあったら楽らしい」みたいな情報を集めて、自分がいかに楽をするかを考える(笑)。

雄貴:和樹は僕が作品についてめっちゃ大事な話をしてるときとかでも、パソコンでプラグインを調べてるんですよ。ホント腹立つ(笑)。

岩井:面白いおもちゃを見つけたみたいな感じで教えてくれるんですよね。で、「これめっちゃ面白いじゃん!」って、そのおもちゃで遊んでたら曲ができちゃったみたいなパターンもある。そういう意味ではエンジニアリング的な立場と言いつつ、クリエイターな要素もあるのかなって、それは今作でより顕著に出てる気がします。

―じゃあ、岡崎くんのバンドの中での役割は?


岡崎真輝

岩井:雄貴と和樹と俺でいると上手く回らないときに……。

雄貴:めっちゃ同じこと言おうと思ってた。モチベーターだよね。

岩井:本当にそう。

雄貴:「MANSTER」、「ヴァルハラ」、「ブルペン」、「PBJ」、「UFO」とか、僕にとっては全部岡崎くんがいなかったら書けなかった曲ですね。リンゴ・スターみたいだなと思うんですけど、岡崎くんがいるだけで曲が書けるときがあるんですよ。僕らベースから曲を作ることが多くて、岡崎くんからベースをもらって、こういうメロかな、こういうギターかなとか、それが最初のプロセスとしてあることが多いから、最初の相手が岡崎くんなんですよね。ここからゲームスタートみたいな……キャッチャーだよね。

岡崎:キャッチャーで(雄貴が)ピッチャー。

雄貴:本当にそんな感じの流れですね。前のアルバムもそうだし、岡崎くんがサポートで入ってくれたあたりからもうそんな感じ。岡崎くんがいなくて3人だったら、もしかしたら生まれなかった曲たちが結構多いんじゃないかな。

―さっき挙げてくれた「MANSTER」、「ヴァルハラ」、「ブルペン」とかで言うと、ロック色が強い曲というか、ミクスチャーっぽい要素がある曲ですよね。

岡崎:レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは高校時代に聴きながら登校してたぐらい好きでした。

雄貴:BBHFのDAIKIくんがずっと「レイジいいよ」って言ってて、それには「大丈夫」って言ってたんですけど(笑)、岡崎くんがいいと言うならと思って聴いて、めちゃくちゃいいってなったので、僕は遅れてきたタイプですね。岡崎くんとレイジのライブ映像をスタジオで見てた時間が実際の楽曲に結構出てるなって。

―「CHILD LOCK」からもそれを感じます。

雄貴:そうですね。どっちかというと避けてきた雰囲気なんですけど、最近はオフスプリングもいいよね、みたいな感じで、岡崎くんからもらったものは結構でかいよね。「ヴァルハラ」に関しては、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアのソロがめちゃくちゃ好きで、「Rattle That Lock」のMVを流しながら作りました。

―先行で配信された「SPIN!」はどんな着想から生まれた曲ですか?

雄貴:そろそろ曲を書くペースをもうちょっと上げなきゃ、みたいな頃だったんですけど、ここは自分の家なので、子供と奥さんがめっちゃ邪魔をしてくるわけですよ(笑)。そんな中でも一番熾烈な邪魔が入りまくった日があって、めちゃくちゃイライラして、怒りを込めて人をびっくりさせるような曲にしようって、シンセとかいろいろぶち込みまくってできた曲です。で、サウンドを作ってる中で音が回転してるイメージがあって、実際曲の中でLRに振ったりしてるんですけど、それこそキャッチボールを本当にいつもしてて、変化球を投げれるようになりたくて、公園でずっと練習してて、そこでも回転をすごく意識してて。「ブルペン」でも書いたんですけど、僕らミュージシャンは0から1を作ることを何回も繰り返しやってるわけですけど、スポーツ選手は最適化したものをさらに最適化していくっていうのを継続してずっと続けてるじゃないですか。そこに自分が人生でずっと繰り返しやってるルーティンとか、自分に起こってる上がり下がりがちょうど重なって、それが「SPIN!」とも合わさったんです。さらに言うと、僕の娘のすずめちゃんは18トリソミーという障害を抱えて生まれてきて、そもそも生まれる確率すら低いし、生まれてもすぐ亡くなっちゃうことが多い病気なんです。心臓病を一緒に患うことが多くて、だから心臓について考えることも増えて、そういうことが全部ガチャンって合わさって、「SPIN!」になりました。それで楽曲の全体像ができたときに、野球の映像と合わせたんですよ。

―さっきの「ヴァルハラ」もそうですけど、ガリレオはよく映像をインスピレーション源に曲作りをするわけですよね。

雄貴:「SPIN!」をファイターズのスーパープレー集に合わせてみたらめちゃくちゃフィットして、「ファイターズガールが踊ってくれたりしたらめっちゃ良くない?」と思って、趣味でファイターズガールが踊ってる映像に合わせたやつとかも作ってたら、結果実現しちゃったんですよね。

―エスコンフィールドでライブをしたんですよね。YouTubeで見ました。

雄貴:こんなこと言っちゃいけないと思うんですけど、武道館でライブをやるより全然嬉しくて、初めて自分たちに舞い込んだライブの話で心から爆上がりしたなって(笑)。それも言ったらすずめちゃんがくれたチャンスですし、人生を楽しく生きるためにみんないろいろやっていて、それが曲になって、自分たちの希望や夢を自ずと叶えてくれるんだなっていうことを実感しました。

―だからユニフォームの名前が「SUZUME」だったんですね。

雄貴:18トリソミーの親御さんはいっぱいいて、重さはそれぞれ違うと思うんですけど、勇気を与えたいなって。呼吸器が必要ではあるけど、僕はすずめちゃんを連れて野球の試合を見に行ったりしていて、自分がやるべきこともやりつつ、一緒に生きていけるんだよっていうのを知ってほしいなと思って、背番号も18番でお願いしました。

―ちなみに、ここまで頻繁に野球の話題が出てるわけですけど(笑)、いつからガリレオの中で野球がブームになったんですか?

雄貴:去年からですね。野球自体にはもともと興味があって、「夏空」は自分が中学生のときにした経験から作った曲なんです。俺のことをめちゃめちゃいじめてくるクソみたいなやつがいたんですけど、そいつが中学校の野球部のピッチャーをやってて、僕は吹奏楽部でトランペットを吹いてたから、強制的に応援の曲を覚えて行かないといけなくて。でもマウンドに上がってきたそのクソ野郎がめちゃくちゃかっこよかったんですよ。あのときの記憶はすごく強くて、マウンドに上がるピッチャーの姿はずっと心の中にあって、warbearも含めて歌詞の中に野球のシーンが出てくることは結構あるんです。ただ野球自体を本気で見ようと思ったのは、去年のクライマックスシリーズからですね。僕の奥さんのお母さんが関西人で、ゴリゴリの阪神ファンで、一緒に阪神の試合を見るといろいろ説明してくれるんですけど、そこで野球はキャラクターものだなと思って。1人1人の選手の顔とか、ちょっとした仕草とかがめちゃくちゃエモーショナルに映って、野球めちゃくちゃ面白いかもと思ったんです。そこからしばらく阪神を見てたんですけど、北海道なのでファイターズも調べてみようと思ったときに、岡崎くんはもともと野球をやってて、しかもすげえ詳しかったんですよ。僕がわかってなかったルールとか、選手のこととか、その人が何を成し遂げた人なのかとかも全部教えてくれて。そこから一緒にファイターズを改めて好きになって、みんなでグローブを買いに行き、キャッチボールをして、カーブが投げられるとめっちゃ楽しくなって、それで今に至る感じです。

岡崎:自分は小学校から野球をやってたんですけど、まさかエスコンフィールドでライブができるなんて、そんなことは一切想像もしてなかった中で、こういう未来があるのはすごく素敵だなと。ボクシングもすごく好きなので、いつかボクシングっぽい感じの曲も作りたいです(笑)。

雄貴:一時期僕が「はじめの一歩」にどハマりしてて、そのときに「ヴァルハラ」ができたんですよ。

―確かに、「ヴァルハラ」の歌詞はちょっとスポ根感ありますね。

雄貴:岡崎くんは好きにさせるのが上手いんですよ。僕ボクシングのこと全然知らないのに、井上尚弥の試合、ちょっと泣きましたもんね。それぐらいドラマチックに語ってくれるんです。

―オリンピックとかにしても、競技のことはよく知らなくても、そこにある選手それぞれのストーリーを知ると、めちゃめちゃ面白いですもんね。

岩井:尾崎雄貴という人間は、完全に人への興味の塊なんですよ。僕は15年前に初めて出会ったときから、「なんて人に興味があるんだろう」と思ってます(笑)。

―「人への興味」ということでいうと、僕は「SPIN!」を聴いて、ポーター・ロビンソンを連想しました。去年は彼とのコラボがあって、来年はライブで共演することも決まっていますが、彼との出会いはバンドに何をもたらしましたか?

雄貴:コラボをしたときに、僕らに重ね合わせていろいろ思い出したことがあったのか、ポーターくんが涙を流してくれて、その衝撃がずっと残っていて。で、この間また別のタイミングでZoomでお話するタイミングがあったんですけど、そこでポーターくんに「『SPIN!』は僕の曲をイメージした?」って聞かれたので、「イエス」って言ったらめっちゃ笑ってました。ポーターくんは僕らも全然忘れてたような「ありがとう、ごめんね」って曲がすごく好きだってポストしてくれたり、今度のライブでも「四ツ葉探しの旅人」をやってほしいんだって言ってくれたり、ガチファンなんですよ。僕らは僕らでポーターくんの曲はずっと聴いてて、ガチファンだったので、こういう会話をしてるのがめっちゃ不思議というか、日本のアーティストともこんな会話はしたことなくて、「このサウンドはBBHFの、warbearのあれだよね」とか言ってきて、本当にガチガチのファンじゃんっていう(笑)。ポーターくんが僕らに影響を受けたと言ってくれるから、僕らも影響を受けたものを、お返事を書きたい気持ちがあって、もうこれはがっつりいっちゃおうと思って、それで「SPIN!」のメロディーを書きました。お互い文通してるみたいな感じになってて、それが楽しいですね。

―ポーターくんが7月に出した『SMILE! :D』はかなりバンド寄りになっていて、影響を与え合ってるようにも見えて面白いですね。

雄貴:アルバムの一番最後の曲(「Everything To Me」)は「ありがとう、ごめんね」をイメージして書いた曲だって言ってました。話してると、マジで純粋な人で、壊れちゃいそうなぐらいピュアな人なんですけど、僕らの人となりが出てるものがポーターくんにも伝わったから、ライブにも誘ってくれたりするんだろうなって。

―和樹くんはポーターくんとのコラボをどう感じてますか?

和樹:おそらくメンバーの中で自分が一番(ポーターの曲を)聴いてて。みんなで住み始めて、『PORTAL』を作った頃が、ポーター・ロビンソン、ゼッド、マデオン、スクリレックスとかの時代で、いろんな機材を、面白そうなおもちゃをいっぱい使って、電子音楽をやってる姿が自分にとってすごく魅力的で……。

―武器商人のルーツがここにあったわけですね(笑)。

和樹:その当時からずっとポーター・ロビンソンくんは自分の中では本当にもうただただ憧れる存在だったので、だからいまだに現実感が全くないんです。

雄貴:この前のアルバムにはキツネ・メゾンの曲があって、それもすごく懐かしいなと思ったし、それこそポーターくんと会ったときに当時聴いてた音楽の話をしたら、ついこの間解散を発表したMEWの話になったりして、僕らとすごく被ってるんですよね。ポーターくんが前に出した曲で、すっげえMEWっぽい曲あるなと思ってて、そういう答え合わせも本人とできました。

岩井:同世代の邦楽のバンドより、食べ物も文化も場所も違うけど、同じ音楽を聴いてきた海外の同世代の方が心が通じ合うのって、すごいことだなって。

雄貴:前回のコラボレーションのときに、ポーターくんのチームのスタッフが、「ポーターは今みんなの影響でバンドをやりたいと思ってるんだ」って言ってて。

―来年の来日はバンドセットらしいですね。

雄貴:僕海外アーティストのゲストで日本のバンド当てるのめっちゃ嫌いだったので(笑)、1〜2回ガチで「いや、やめます」って言おうと思ったんですけど、ポーターくんだしなと思って、今回受けさせていただいたので、ちゃんとハートで出ていこうと思ってます。

―『MANTRAL』の一曲目を飾る「リトライ」はどのような着想からできた曲ですか?

雄貴:「リトライ」は岩井くんがほぼ書いた曲です。バックトラックは他の3人が手を加えてるんですけど、メロディーラインはもう岩井くんの歌で乗ってる状態のやつをくれて、そこから僕が歌詞を考えて、曲にしたのが「リトライ」ですね。

岩井:『Bee and The Whales』のツアーが終わった後に、ミュージシャンとして稼いだお金で高いギターを買おうと思って、一生ものの一本だと思って、100万ぐらいするギターを買ったんです。ガリレオを一回抜けた頃の話に戻るんですけど、一時期死ぬほど貧乏になって、ギターとか機材を全部売っぱらったんですよ。そこからいろいろ苦労して、社会人になって働いたりとかして、またみんなで一緒に音楽をやるようになり、ガリレオが始動して、『Bee and The Whales』のツアーをやって、稼いだ金でまたギターを買って。

雄貴:そこまで長かったね。よく頑張ったよね。

岩井:すごいギュッと話しましたけど、その高いギターを買ったときに、いろんな思いがこみ上げて、ガリレオのメンバーのことを思って、一曲書いたんですよね。ガリレオをやめて、フロントマンとしてバンドをやり始めたわけですけど、ガリレオではギタリストなわけで、ギターを買って、ギタリストとしてやっていくことと、ガリレオのメンバーのことを書きました。ただとりあえず欲望のままに書いたけど、どうしようもないからメンバーに投げちゃえと思って、その曲が生まれ変わって、「リトライ」になったので、すごく思い出深い曲になりました。自分の曲を人に触らせるのがめっちゃ苦手だったんですけど、そこの壁がなくなった一曲でもあると思います。

雄貴:最初に聴かせてもらったときの歌詞は今の歌詞とは全然違うもので、本当にバンドに向けて書かれていて。岩井くんはよく「俺に向けて書いたんじゃないか?」みたいなことを言ってくるんですけど、それと逆で、「これ絶対俺らのことでしょ?」って思って、そのときパッと思い浮かんだのが、ブルース・スプリングスティーンの「Dancing In The Dark」で。当時の彼女か奥さんと一緒にステージの上で踊ってるライブ映像があるんですけど、それが思い浮かんで、闇の中で一緒に誰かと踊り続けてる絵がパッと浮かんで、その相手は結局岩井くんだよなって。もともと岩井くんが書いた曲が完全にこっち向きに作られてたので、さっきのポーターくんの話じゃないけど、これもお返事という感じで書いていて、大事な曲になりました。

―先日再結成を発表した兄弟バンドの大先輩であるオアシスにも今のタイミングで聴いてほしい曲だなって(笑)。

雄貴:多分最初にリハに入ったタイミングで、ノエルがブチギレてスタジオ出ていくと思いますけどね(笑)。そういえばオアシスで思い出しましたけど、音楽というか、ライブにも野球型とサッカー型があるよね、みたいな話をよくしてて。オアシスはサッカーが好きじゃないですか。でもライブは野球型だと思うんですよ。ライブ演奏でいうと、ヴァンパイア・ウィークエンドはめっちゃサッカーって感じがする。ボールをパスして繋いでる感じが思い浮かぶけど、オアシスはパス回してないじゃないですか。個人で決められたものをやってるみたいな感じで、それでいうとガリレオはどっちだろうね?みたいな話をしたことがあって(笑)。そうやっていろんな楽しみ方をしていて、「これは野球型だね」みたいに考えたら面白くなってくるというか、「ってことは、誰がピッチャーで誰がキャッチャー?」みたいな、そういうのが最近すごく楽しくて。それが今のガリレオの茶目っ気でもあるし、軸の部分でもあるというか、楽しめる方法を自分たちで作ればいいじゃんっていう、今回の2枚はそのスタンスがすごく出てるなと思います。

―人間の多面性を表現したアルバムの中に、いろいろな人の人生や物語が内包されていることがよくわかりました。アルバムが出てすぐツアーが始まるので、最後にツアーに向けて一言いただけますか。

雄貴:「Tour M」というタイトルになってますけど、完全にアルバムを表現するツアーになると思うので、最後に作った「KING M」という曲がすごく重要になってくると思います。今日の話もそうですけど、僕らは僕らが経験してきたことを変換して、音楽にしてるところがあって、今回のツアーは演劇的な要素を入れようと思っててるんですけど、その演劇もガリレオをずっと見てる人たちだったら気付くいろんな繋がりがあるものになっていて。アルバムのツアーなんですけど、結局ガリレオの今までの流れを一緒に追体験していけるような、そういうライブになると思うので、ぜひたくさんの人に来てほしいなと思います。

<リリース情報>



Galileo Galilei
『MANSTER』
2024年9月25日(水)リリース
価格:3300円(税込) 3000円(税抜)
https://virginmusic.lnk.to/MANSTER
=収録曲=
1. CHILD LOCK
2. SPIN!
3. MATTO LIFE
4. カメカメレオン
5. ナンバー
6. ブギーマン
7. ファンタジスト
8. MANSTER
9. ロリポップ
10. マイガール
11. PBJ
12. BABY I LOVE YOU
13. ヴァルハラ
14. KING M



Galileo Galilei
『MANTRAL』
2024年9月25日(水)リリース
価格:3300円(税込) 3000円(税抜)
https://virginmusic.lnk.to/MANTRAL
=収録曲=
1. リトライ
2. 若者たちよ
3. 季節の魔物
4. オフィーリア
5. カラスの歌
6. カルテ
7. ブルペン
8. チャウダー
9. MANTRAL
10. 5
11. UFO
12. タタラ
13. きにしないでね
14. やさしいせかい.com

<ライブ情報>

Galileo Galilei Tour2024 
Tour M
9月27日(金)札幌:Zepp Sapporo(18:00開場/19:00開演)
10月12日(土)福岡:Zepp Fukuoka(17:00開場/18:00開演)
10月13日(日)広島:HIROSHIMA CLUB QUATTRO(17:00開場/18:00開演)
10月19日(土)仙台:仙台PIT(17:00開場/18:00開演)
10月22日(火)愛知:Zepp Nagoya(18:00開場/19:00開演)
10月23日(水)大阪:Zepp Namba(18:00開場/19:00開演)
10月25日(金)東京:Zepp Haneda(18:00開場/19:00開演)

1階スタンディング/前売り¥5500(ドリンク代別)、2階指定席/前売り¥6600(ドリンク代別)
東京のみ:2階立ち見/前売り¥5500(ドリンク代別)
※広島、仙台は2階席無し
※東京、福岡は2階 : 指定席はSOLD OUT

チケットぴあ https://w.pia.jp/t/galileogalilei-hk/
ローソンチケット https://l-tike.com/galileogalilei
イープラス https://eplus.jp/galileogalilei/

https://www.galileogalilei.jp/live_information/schedule/list

Official HP https://www.galileogalilei.jp/