「アイドルは“全部見られる”が前提」元BiSHモモコグミカンパニーに響いた言葉

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BANDAI SPIRITS のプラモデル公式 PR アンバサダー、LINKL PLANET(リンクルプラネット)の3期生オーディションに密着したドキュメンタリー番組「人生下剋上オーディション」(毎週水曜深夜3時20分)。


番組ナレーションを担当するモモコグミカンパニーさんと、リンプラ現メンバーの荒井芽依さん、天川れみさんのインタビュー【後編】。

【前編】では、モモコさんのオーディション秘話や、“アイドルの存在価値”についてのトークを。

【動画】ファイナル審査目前!「人生下剋上オーディション」これまでの歩み

アイドルは“全部見られる”が前提




――アイドルやアーティストなど人前に立つ方々は、本来の自分と人から見られている姿との乖離があったとしても、自分がどう見られているかということは、結構、気にしていますか?

モモコ「めちゃめちゃ気にするタイプです。ライブのMCで数分話すのにも、ライブをぶち壊さないか考えながら一言一句作って臨んだり、トイレに籠ってボイスメモを聞き直して確認したり、モニターに映る自分の顔や歌声も気にしていました。でも、それって当たり前のことで、人前に立つ人は見られないと意味がないんですよね。

WACKのオーディションでの、プロデューサー・渡辺淳之介さんの言葉が印象に残っていて。7日間ずっと撮影されている中で、候補生の一人が『渡辺さんと話したいので、ちょっとカメラを止めてください』と言ったら、渡辺さんが『見られる前提だから。アイドルの“見られちゃいけない”はプロとしてダメ』と怒ったんです。その言葉が響いて、“全部見られる前提”でいないといけない、逆にいえば“素の自分”でいることなんだと思ったんです。だから“見られること”“気にすること”は当たり前で、それに加えていろいろ考えることがあるんだろうなと気づかされました。

“見せている部分”がアイドルだし、例えば誤爆とか見せる気がなくても誰かの目に映ったら、それはもう“アイドルの自分”。今は、そこも気をつけなきゃいけない時代ですね」

荒井「私は周りの目が気になるタイプで。いつも『これでいいのかな』と考えてしまっていたんですが、アイドルになってから“ステージ上では絶対ネガティブな事はしない”と決めてポジティブに変換するようにしています。それでも、“大丈夫だったかな”と不安になったり、“このポジティブ発言をどう見られているんだろう”と考えることはまだ多いです。モモコさんのお話を聞いて、自分は一日中カメラを向けられていたらどうなるんだろう…とちょっと考えちゃいました」

天川「モモコさんにはバレてしまったんですが、“あざとい”を追求しています(笑)。表情、角度、ダンスの振り付け…どうやったらかわいく見られるかを研究するのが好きなんです。

自分がどう映るのかを気にしている分、しゃべる時も言葉を選んでしまってまとまらないことが多かったんですが、今回のオーディションの合宿では『もういいや』と思って。手一杯だったこともあるんですが、『アイドルしていない(天川)れみも好きだよね?』という気持ちで挑んでいました。あまり器用な方ではないので、いっぱいいっぱいになると、そうなる自分に気づきました」

モモコ「合宿では、そういう部分が見たいんじゃないですかね」

天川「カメラマンさんに『目がキマってたよ』と言われました(笑)」

モモコ「それだけ真剣だってことだよね」


――モモコさんは“全部見られるのが前提”と気づいてから、素の自分とはどう折り合いをつけていたんですか?

モモコ「“飾らない”ことを大切にしていました。ダンスや歌をずっとやってきていたわけじゃないので、自分が戦えるところは“素人感”だと思っていた時期があって。できないことも表に出すし、本当のことしか言わない、そういう部分を見せよう、と。さらけ出すことって大変ですが、そうしないと人に響かないとも思っていました」

埋もれないグループの秘訣



――今やアイドルもアーティストも群雄割拠する中、埋もれないために個性やキャラクターを模索していっていると思いますが、モモコさんの考える埋もれないグループの秘訣とは何だと思いますか?

モモコ「それが分かれば、みんな苦労してないんですが(笑)。BiSHで考えると、個性的を超えて“個性しかない”みたいなグループで。逆に個性がありすぎて一つにまとまることが大変だったというとこともありますが。他と違いすぎて比較されるグループもなくて浮いていたと思うんですが、そこを合わせにいかなかったのは、私たち偉かったんじゃないかな、と思います。『これが流行ってるからこうしようよ』とかは、全くなかったので。

BiSHの振り付けは全部簡単なんです。ライブでお客さんも一緒に盛り上がれるようにサビは手だけでできる簡単な振り付けにしたところも、受け入れてもらえる一因になったんじゃないかと思います。実は、私ができないから簡単になった説もあって(笑)。ずっとダンスをやってきた上手いメンバーも、私にレベルを合わせてくれていたんです。

私は歌割りも少なかったんですが、“モモコは歌割り少ないから、ずっとセンターにいな”みたいな曲もあって(笑)。そういう優しさでなんとか乗り切っていたし、それがいびつなグループの個性のひとつにもなっていたんじゃないかな、と。BiSHについてきてくれる方々がいたのは、そういう優しさとか気持ちの面で何か胸に響くものがあったのかなと思います。だから、“埋もれる”と悩んだことはないですね」

――流行りに乗ろうと考えがちですが、そうしなかったのはなぜなんですか?

モモコ「みんな『売れなくてもいいもの作っていたらいいよね』という感じだったんです。私自身も、“めっちゃ売れたら忙しくなんだろうな”とか“大人たちが入ってきて、BiSHがBiSHでなくなっちゃうのも嫌だな”とか、なんなら“メジャーデビューも嫌だな”と思っていたタイプで。もちろん売れた方がいいけど、自分たちが納得するものをまず作って、『受け入れられなくても別にいいよね』というスタンスは、突き抜けるためには必要だったのかなと思います」


――リンプラは、今、悩んだり試行錯誤したりしていると思いますが、今日のモモコさんのお話を聞いて、どう感じましたか?

荒井「自分も楽しみながらファンの人を楽しませるという気持ちでやっていましたが、モモコさんのお話を聞いて『やっぱり自分も楽しんでいいんだ』と自信が持てました。リンプラのグループにとしては“プラモデルアイドル”以外の個性をどうしていくか、自分の中でも考えていけたらいいなと思いました」

天川「甘えたことを言うと、現状でも楽しくて、アイドルとしてのやりがいも感じているんですが、プラモデルを普及させるための“プラモデルアイドル”としては、もっと知名度を上げていかないといけないと思っています。

どうすればいいかをメンバーで話し合うと、今、売れてる子たちを参考にすることになってしまって、結果、自分達のしたいことができていない状態になってしまって。でも、知名度を上げるために必要なのは、売れている人たちが持っていて私たちにはないものを取り入れていくことなのかな?と思うこともあって。何が正解なのか、新たな?(ハテナ)も生まれてきました」

モモコ「グループとして考えると難しいところもあるんですよね。話し合いももちろん大切ですが、話し合いすぎるのもどうかな、というところもあって。みなさんメンバーも大勢いらっしゃいますし、誰かが突き抜ければ自ずとグループの知名度も上がるということもあると思います」

グループ解散後の新たな活動



――モモコさんは、2023年の解散でグループの活動は一旦区切りをつけて、個人での活動をスタートされましたが、ファンの方々との関係に変化はありますか?

モモコ「BiSH時代のファンにとっては、ずっと“BiSHのモモコグミカンパニー”なんです。私が辞めても、別のことをやっても、いつまでもそれは変わらないと思っています。その中で、今の自分の課題は“BiSHを知らなかった人に知ってもらう”こと。でも、ずっと応援してくださっている方の思いは裏切らないように、『支えてくれてありがとう。もうちょっと頑張るわ』という気持ちですね」

――リンプラのお2人は、ファンの方たちとの関係で大切にしてることは何ですか?

荒井「共通点を大事にしています。プラモ好きという共通点から(荒井)芽依を見てくれるようになった方もいるから、ずっとプラモを発信し続けようとか、『かわいい』と応援してくれている方もいるから、もっと美も磨いてみようとか。みんなに飽きられないよう頑張りたいと思っています」

天川「ファンの方にできるだけ近い距離だと思ってもらいたいので、お話ししたことを大事にしています。『覚えてくれていたんだ』と喜んでくれるのがうれしくて。あと、れみといる時間は、楽しい、うれしい、幸せ、かわいいとか、いいことで終わらせたいと思っています。今のオーディション中はファンの方もモヤモヤしていると思うので、れみといる時だけは楽しい時間にしたいです」


――“飽きられないように”という言葉が出ましたが、モモコさんは“飽きられる”という怖さとは、どう戦ってきましたか?

モモコ「それは気にしなくていいと思っていて。BiSHもそうでしたが、ファンの入れ替わりって必ずあるんですよね。子どもから大人になるにつれて取り巻く環境が変わっていったように、ずっとついてきてくださる方は大切にしながらも、周りは変わっていくものなんじゃないかなと思います。

離れてしまった方たちも、飽きたんじゃなくて対象が移っただけで、その人自身も成長や変化しているということだと思うので。飽きる・飽きないではなく、その時々の状況で『どこまでも応援したい』と思って応援している方が多いんじゃないですかね」

――元々 “物書き”になりたかったとおっしゃっていましたが、アーティストとして活動されていた中で、その思いはどのように育ってきたのですか?

モモコ「解散がきっかけですね。以前からエッセイとか何冊か出していましたが、解散という一つの区切りを提示された時に “一番怖いことをやってみよう”と小説を書きました。『一度きりの人生だからやんなきゃ。死ぬ気で書こう』と。

自分で手を伸ばして自分で切り開こうと、小説を書いて自分で編集者に送りました。それが自信にもなったし、自分のタレント性はそこで確立されたのかなと思っています」

――“一番怖いことをやってみよう”というのはなかなかできることではないと思いますが、どう立ち向かっていったのですか?

モモコ「明日死ぬとなったら、今日やりたいことをやりますよね。解散によってグループ抜きの自分の人生を考えた時に“自分ができることはなんだろう”という思考にシフトできて。東京ドームに立つのはグループとしての目標で自分の目標ではないと感じたので、自分の目標を探しました。

小説は書けないと思っていたのですが、『そもそも書いてないよね』と気づいて。何年も鍛錬してから“いざ小説を書こう”ではなくて、書きながら小説家になっていけばいいよねと思ったんです。

これは全てにおいて言えることで、完璧になるのを待っていたら何もできないから、やりながら成長していけばいい。“未熟だけどやろう”という精神は必要かな、と。やってみてダメだったら、見切りをつけてやめてもいい。『自分にはこれしかない』と思わない方がいいんじゃないかなと思います。

私も小説が書けないなら、また他の人生を考えよう、という気持ちでいました。気持ちを楽にして踏み出してみたら、単純に小説を書くのが楽しくて。“自分はここにいる。いていいんだ”という感覚を持てるようなことを頑張れたらいいんじゃないかなと思いました」

いよいよ大詰め! モモコさんがナレーションを担当する、LINKL PLANET3期生オーディション密着ドキュメンタリー番組「人生下剋上オーディション」(毎週水曜深夜3時20分)。「TVer」、「ネットもテレ東」で期間限定無料配信中! 「U-NEXT」で過去の放送を一驚配信!

 


【プロフィール】
モモコグミカンパニー
9月4日生まれ。東京都出身。2015年、“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバーとしてデビューし、最も多くの楽曲の作詞を手掛ける。2023年6月29日、東京ドームのライブをもってグループ解散後は、小説家、アーティストなどマルチに活躍。著書に「目を合わせるということ」(シンコーミュージック)、「きみが夢にでてきたよ」(SW)、小説デビュー作「御伽の国のみくる」、渾身の青春サスペンス「悪魔のコーラス」(ともに河出書房新社)、初の短編小説集「コーヒーと失恋話」(SW)。「人生下剋上オーディション」(テレ東)のナレーションを担当している。
X:@GUMi_BiSH
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LINKL PLANET(リンクルプラネット)
2022 年、プラモデルの魅力を伝えるため BANDAI SPIRITS のプラモガールズプロジェクトから誕生したアイドルグループ。5 名(荒井芽依、安藤玲菜、石川恵里加、大音奏依、宮粼菜々)でデビューし、同年12 月の初単独ライブで 2 期生4 名(天川れみ、石田悠佳、小橋川梢、佐藤咲菜)か加入し9 人体制で活躍。しかし、2nd 単独ライブで掲げた目標動員数を達成できず、グループを”組み立て直す”ことに。2024 年 、3 期生を募集し、現メンバーと新たな候補生が“新生LINKL PLANET”の座をかけた「人生下剋上オーディション」を開催。
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(撮影:田中健児/取材:寺原洋平 文:編集部)