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今年もイチロー氏(50)率いる「イチロー選抜KOBE CHIBEN」VS「高校野球女子選抜」のエキシビションマッチが9月23日(東京ドーム)に開催される。4回目となる今回は、元巨人、ヤンキースなどでプレーしていた松井秀喜氏(50)が初参戦。3年連続の出場となる松坂大輔氏(43)を加えたメジャーリーガートリオの豪華共演が実現する。イチロー氏が独占インタビューに応じ、松井氏の参戦や女子野球への思いを語った。

【写真を見る】イチロー氏が松井秀喜氏を語る 参戦決断に「痺れました」再会するなら「やっぱりユニフォームを着て」【独占インタビュー】

Q.女子高校生と対戦することについて

イチロー氏:元々は僕が引退してチームを作って、草野球を最初やったんだけど僕としては物足りない。そういうタイミングで、女子野球がすごく盛り上がっていて、だけどなかなか脚光を浴びる場所がない。盛り上げたいけど、その術がないというかね。その時に僕たちのチームと対戦したら恐らくいい試合になるだろうというところから始まってるんですよね。最初は神戸でやったんだけど、(自身が)引退をした場所である東京ドームでそれができたら盛り上がるんじゃないかなと思って。東京ドームで今年3年目を迎えられるわけなんだけど、僕わりと古いタイプの人間だから、始めたことを3年続けることってすごく大事という価値観がいまだに僕の中に深く宿っていて。1年目はこの試合だと明かさずに集めた試合、チームだったんで。新しいメンバーも加わってくれるかもしれなくて、当初抱いてたイメージが2年経ってどんどんこうしていきたいなっていう。 最初は妄想に近かったんだけれど、まず何ができそうだっていうことを形にならなくても口にしていくことってすごく大事なことなんだなって思ってます。 

Q.松井さんの参戦について 

イチロー氏:東京ドームであることがすごく重要なんですけど、神戸でやってたらこの発想にはならないと思うんですよね。

Q.松井さんに声をかけようと思ったのはなぜですか。 

イチロー氏:僕の引退の時に松井秀喜が「いつかお酒でも飲みながら話できたらなぁ」というようなニュアンスのメッセージを残してくれてるんですよね。再会するならやっぱりユニホームを着て再会したい。僕は今、このKOBE CHIBENの活動が幸いにもあるから、東京ドームでだったらそれが叶うんじゃないかなっていう思いがあった。(松井氏が)野球教室をやったりだいぶ体もシェイプアップされてるみたいだし、これは面白いし僕も見てみたい。 ユニフォーム姿を、「55番」を見てみたいし。 これ誰も想像しないというか考えもしないんじゃないかと思うんですよ。それが形にもしなったらそれは東京ドームのジャイアンツファン、松井ファンが喜んでくれると思うんですよね。女子野球の注目度も当然上がってくれるだろうし、いいことしかないと思うんです。そこに(松坂)大輔もピッチャーとして「18番」付けてさ、僕と松井が守って。考えるだけでもう幸せな気持ちになっちゃうよね。

Q.「YES」の返事をもらった瞬間は何を感じましたか。

イチロー氏:遊びじゃないっていうのは当然理解をしているから、「NO」は簡単に出せる。でも「YES」の返事はなかなか出せないと思うんですよ。 僕は松井のことをそんなにプライベートで知っているわけではないけど、きっと真面目な人だろうし野球は大好きだろうし。これ以上のこのKOBE CHIBENの活動の中でサプライズはないと思いました。痺れましたね。

Q.“イチロー・松坂”っていうのは時代を作った一つの組み合わせですけど、“イチロー・松井”っていう二人の並びっていうのも、松坂選手とは違った意味で時代を作ってきたと思うんですよ。松井さんは、イチローさんにとってどういう存在?

イチロー氏:僕が引退して5年、松井が10年とか11年。時間が経って“イチローと松
井”って盛り上げてくれた、そういう存在がいたっていうのはすごく幸せなことだったんだなってすごく思うんですよ。だから僕は51歳、松井が50歳のタイミングが最高なんじゃないかなって思う。改めて時間が経って同じ時代を生きてきた選手としてそういう良い関係だったんだなって今凄くそう思います。 

Q.松井さんは日本(巨人)でホームランをたくさん打ったというイチローさんとは違う武器を持ってアメリカに挑んだ。その時点でのイチローさんの松井さんに対する期待みたいなものを僕は凄く感じたんですけども、そういう思いはあったんですか? 

イチロー氏:アメリカ人とかラテン系の選手とかにライバルと言える選手は毎年いるんだけれど、それが日本人でいてくれるって全然違うんですよね。やっぱりそういうライバルがいて自分も磨いていけるっていうかね。自分一人の力では、なかなか研鑽を重ねるっていうのは難しいんですよ。それが同じ日本人でいてくれたらやっぱり最高だからヤンキースとの試合の時は当然意識するしね。周りもそういう目で、それはすごく幸せなことだったんだね。

メジャーリーガートリオの共通マインド「野球が大好き」

Q.(松井さんが参加することは)松坂さんには直接お伝えしてない? 

イチロー氏:してない。大輔どう思うんだろうね。大輔は日本でも結構対戦もあるよね、日本シリーズだっけ?共通点は高校野球にフォーカスすると、3人とも甲子園には出てる。大輔はもう甲子園でとんでもない、最後ノーヒットノーランやっちゃうし、松井秀喜といえばもう伝説の合計5敬遠だよね。ストーリー持っているよねそういう選手って。

※松井は松坂に対して2002年日本シリーズで3打数無安打3三振、メジャー通算は14打数3安打、打率.214、2打点、1三振

Q.イチローさんと松坂さんと松井さん、この3人がアメリカでプレーしたことも含めて共有するマインド、思いみたいなものは何か感じますか? 

イチロー氏:僕は僕自身のことを客観的に見られないから分からないけど、本当にその競技が好きでやってる選手の周りに流れている空気ってすごく、気持ちのいい空気が流れていると思うんですよ。 体を動かすことが好きな人たちにすると、「ああいい空気流れてるなこの人の周り」とか。東京ドームに来るといい空気が流れているんですよ。神宮外苑とか、体を動かす人たちの空気って凄くいいんですよね。元気になるんですよ。恐らく松井も大輔も野球大好きだと思うんで、そういうのがあるはずなんですよね。僕もきっとあるはず。はっきり言えるのは3人とも野球大好き。これは共通してると思いますね。 

Q.そういう3人が女子と対戦するということで、女子の思いも高まると思うんだけど、松坂大輔が投手っていうところにこだわってる理由は? 

イチロー氏:それは大輔の球を打ってみたいじゃない。松井と対戦したいでしょう。「あ、松坂選手だ」って絶対になるんですよ。感動すると思うんですよね。大輔は投げるなら先発しかないですよ。せめて1イニング、理想を言えば3イニング9人と対戦してほしいと考えてます。

Q.その時に、イチローさんはライト、松井さんがセンターという考え方もあれば、松井さんがサード、 イチローさんはショートという考え方も? 

イチロー氏:あります。松井がサード、僕ショートはあります。どっちがいいだろうね。久しぶりの松井ファンが東京ドームに来てくれるとしたら、どっちを見たいだろうか。 

Q.三遊間じゃない? 

イチロー氏:そうかな? 

Q.そこに集まっている感じがやっぱり。

イチロー氏:確かにね。3人が近い場所にいるっていうのは確かにそうだな。

Q.先発しないという覚悟も、今年の背番号には託されているんですか? 

イチロー氏:去年「大輔が先発できるなら、僕は51番をつけて」という話をしてますから、松坂大輔に対するプレッシャーでもあります。ちゃんとやってこいよと。 

Q.イチローさん、松坂さん、松井さんと聞くとつい忘れちゃうんですけど、KOBE CHIBENの人たちも一つずつ年を取るおじさんじゃないですか。 

イチロー氏:そうですよ。みんなおじさんですよ。これまで3回勝ってますけど、何とかね。その不安もあります。着実にレベル上がってきてるから女子は。今回ファンの人に対してどうやって楽しんでもらえるか考えないといけないのも課題としてあります。

Q.今女子はレベルが上がってるっていう風におっしゃいましたけど、この何年かをやってみて、女子の選手たちの課題はどんなところに感じてますか。 

イチロー氏:女子の課題は周りなんですよ。結局どうやって盛り上げるか。こんなに面白いんだよって知ってもらえるかどうかのきっかけが一番の課題なんで。見てもらわないと一定以上の力がでないから。そこなんですよ女子野球の課題は。 

Q.イチローさんが立ちはだかるという意味では、ピッチャーとしての部分が大きくて、やっぱりイチローさんのボールは女子には体感できないスピードが出る(去年自己最速138キロ)。イチローさんの中では“140キロ”という数字ってどのくらい意識してるんですか。

イチロー氏:やっぱりキリのいい140キロは51歳になる年に投げたいですよ。

「軽く命削ってやってる」51歳の年でも“発展途上”

Q.「50歳の年に発展途上だと言いたい」ってずっとおっしゃってきた。もうついにその年ですが、その発展途上の感覚って今持てていますか。 

イチロー氏:発展途上であるかどうかを見極めるためには、結局やり続けるしかないわけでね。50歳になると体の変化があったり、怪我したり体調を崩しやすくなったりとか。「50歳を超えたら何があるか分かんないよね」で片付けたくないから。続けていたらなぜか(球速が)4キロアップするわけでしょう。でもやってなかったら、「50歳を越えたらもうそうだよ」で終わりなんですよ。そんなこと僕は許さないっていうかそういう自分を許せないから。 女子との対戦もそう。高校生たちとの交流もそう。マリナーズでもコーチが「イチちょっと一緒に守って。スローイング今日やるから外野手は一緒にやってよ」って突然言われるんですよ。何日か前に言われるんじゃないんですよ。でも「いや、ちょっと体調がまだ万全じゃないからできない」って言いたくないです。その時にできる状態にありたいわけ。でもそれがいつ訪れるか分からない。だからつまりやり続けるしかないってことでしょう。発展途上であるかどうかは、それを継続することでしか見極めることができない。ピッチャーとしてはまだ始めたばかりだからその可能性を去年は1つ示せたわけでね。「俺は今も発展途上だ」と胸を張って言うことはできないけれど、これを続けてたらそんなことが示せるかもねとは思ってます。 

Q.去年はヒット2本という結果。今年、バッターとしてイチローさんのずっと培ってきたバッティングという部分で、なにか示さないとな、みたいなものってありませんか? 

イチロー氏:去年がそのいいチャンスだったんですよね。右中間にヒットで三塁まで行くのが一番きれいなんですよ。恐らく僕のプレーで。それはホームランでもないし、その足を生かした内野安打とかっていうのもあるけど、あれが一番きれいなはずなんですよ。それでしくじっちゃったから(二塁に到達した際もも裏を叩く)、あれもう一度やって三塁打にしたいというのは難しいけどね。三塁打を狙えないから、あれやりたいよね。やっぱりきれいに三塁まで走りたい。 

Q.今年、イチローさんが51歳になる年に見に来てくれるこのお客さんたち、いろんなツー ルを通じて見てくれる人たちにこういうものを見せられたらいいなっていうものを言葉にしていただくとしたら、今年の試合はどんな想いを込めて戦うイメージ? 

イチロー氏:よく今挑戦することって大事、挑戦というのはやっぱ自分の能力を少し超えたところに向かわないと挑戦とは言えないでしょう。能力以内でやっていることは挑戦と言わないよね。でも、この試合は僕たちにとって明らかに挑戦なんですよ。そういう意味でもうボロボロになるから体。これ大袈裟だけど、軽く命削ってやってるんですよ。でもピッチャーやるとどうしても必死になっちゃうんだけど、それを何かサラッと見せられたらいいなと思うのね。練習ではもう元気出して声を出して現役の時、高校時代もやってなかったようなことを今やるわけですけど。でも試合ではやっぱりサラッと綺麗にやりたいなって。そんな風に思ってます。 

Q.女子の選手たちは3年戦った分の選手たちがいて、それぞれ次のステージで野球を続けている。今年出会うであろう高校3年生の女子の選手たちに対しては、この先も含めて野球に対してどんな思いを持っていてほしいとか、その彼女たちに対しての想いは? 

イチロー氏:それはもう僕ら次第なんですよ。お願いしてそうなるわけじゃなくて、一緒に対戦、 真剣勝負して、彼女たちが何を感じるのかによるわけで。「僕はこういう気持ちで臨むからこんなことを感じてよ」というのはおかしなことなんですよね。だから、それを感じてもらえるような状態に僕はもう絶対しなきゃいけない。

Q.イチローさんからヒット打ったとか三球三振とったとかってその人たちからしたら一生の宝物だもんね。 

イチロー氏:今やってることが正解だったかどうかっていうのは時間が経たないとわからないことだけど、でもよくこの3人を同じチームに。1度もWBCでも実現しなかったし、まさかこの3人が同じユニフォームを着る日が来るとはね。