地球の潮汐力でばらばらに引き裂かれた小惑星の破片が地球を周回している様子を示す想像イラスト (c) Oliver Hull(画像: モナシュ大学の発表資料より)

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 豪モナシュ大学は16日、地球には今からおよそ4億6600万年前、土星のような輪があったかもしれないという研究結果を発表した。

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 今回の研究では、今から4億年前までの古い時代に形成された21個の小惑星衝突クレーターを調査。4億8,800万から4億4,300万年前にかけて形成されたクレーターは、全て赤道から30度以内の低緯度地域にあることを突きとめた。

 これらのクレーターは、小惑星帯から飛来した小惑星が地球に接近した後、地球の潮汐力によってばらばらに破壊され地球を周回するようになり、それらが約4500万年かけて地球に衝突したものであるとの見解に達したという。

 通常であれば、小惑星が地球に衝突する際の緯度はランダムな分布になるはずであり、30度以下の低緯度地域に衝突が集中するのは非常に不自然と考えられる。つまり、低緯度地域にクレーターが集中しているのは、地球に小惑星の無数の破片からなる土星の輪のようなものが約4億6600万年前には存在しており、それらが数千万年の時間をかけて、地球に落下したと考えるのが妥当であるとの主張だ。

 土星の輪は有名だが、現在は木星、天王星、海王星にも輪が存在することが確かめられている。またかつては、火星にも輪が存在したとの説もある。

 惑星に輪が形成されるには、その惑星に強い引力が存在することが必要条件だ。少なくともその惑星に異常接近した小惑星が、その惑星の強い引力によって生じる潮汐力によってばらばらに解体されなければ、輪は生じないからだ。

 土星の輪は口径6cm程度の小望遠鏡でもその存在をはっきりと確認できるが、数千万年後には見えなくなってしまう。その意味では、今我々は美しい土星の輪を堪能できる幸運な時代に生かされているのかもしれない。さらに言えば、地球に輪が存在すれば、その分太陽光が遮られ、寒冷化する。今人類は地球の輪を見られない反面、温暖な気候の中で生かされているのだ。

 今回の研究成果は、海外科学雑誌「Earth and Planetary Science Letters」に16日付けで掲載されている。