これからは「JALの長距離線はエアバス」の時代に……。

「パイロットに優しい機体」

 JAL(日本航空)が、長距離国際線主力機として使用してきた「ボーイング777-300ER」の退役を2024年8月から進めています。この機体はどのような特徴を持っているのでしょうか。


JALの777-300ER「JA734J」ラストフライトの様子(乗りものニュース編集部撮影)。

 同社初の777-300ER退役機となったのは、8月20日に定期便ラストフライトを迎えた「JA734J」。この機の導入は2005年で、最終便は羽田〜シドニー線でした。

「本日の巡航前半は天候に恵まれ、ラストフライトのJA734Jにグレートバリアリーフや通称『バタフライアイランド(積乱雲が立ちやすい場所にあるため、運良く見られた人は幸せになれるといわれている)』などのきれいな景色を見せてあげることができました。20年近く安全運航をともに支えてくれたJA734Jへのご褒美でしょうか。当便を担当した機長として、とてもうれしく思っております。長い間お客さまに安全にご搭乗いただき、感謝の気持ちでいっぱいです」――。JA734Jの最終便を担当したパイロットは、このように話します。

 JALで777シリーズは777-200、777-300、777-200ER、777-300ERの4タイプが運航されてきましたが、-300ER以外の機種はすでに退役済みです。-300ERは777シリーズの初期タイプであった-200から、胴体延長と航続距離の延伸が図られたモデルで、75m近い胴体長と1万4000kmを超える航続距離を持っています。座席構成は4クラスで、計244席です。

 この機について、前出のパイロットは次のように評しています。

「-300ERは2023年の11月に退役した-200ERに比べて、巡航速度が運用限界速度に対して余裕があります。上空の風の変化で速度が変わりやすい時など、速度変化のモニターの負担が少なく、パイロットに優しい機材です」

 777-300ERは不定期で国内線を担当することもありました。とあるパイロットは羽田〜伊丹便を担当し、特に出発地の羽田空港で、エンジンを離陸出力まで上げてから一気にブレーキを開放する「ロケットスタート」での離陸滑走を印象に残るエピソードとして挙げ、「この離陸は、まさにロケットでした」と話します。なお、同型機に搭載されているエンジンはゼネラル・エレクトリック製の「GE90」で、実用化されている旅客機向けエンジンとしては世界最大のサイズです。

 現在JALは、777-300ERの後継機として「エアバスA350-1000」の導入を進めており、JA734Jの退役はこれに伴ったものです。