預金が「5000万円」もあるので、将来は“相続税”が発生すると思います。一部を「タンス預金」で隠しておけば、相続税対策に使えますか?

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「自分に万一のことがあった場合、家族が相続税を負担することは避けたいから銀行にお金を預けないようにしよう……」 このように、相続税対策としてタンス預金を考えている人もいるかもしれません。しかし、結論からいうと、タンス預金で相続税対策はできません。 安易にタンス預金を選択すると、いざ相続になったときにトラブルが発生したり、税務署から追徴課税のペナルティを受けたりと、かえって家族に迷惑をかけることになります。 本記事ではタンス預金の概要と、相続税対策にならない理由を解説します。

相続税回避のためのタンス預金は必ずバレる

タンス預金は銀行預金と同じく立派な財産であるため、相続が発生した際には相続財産として相続税の課税対象になります。
タンス預金の存在を隠そうとしても、税務調査によってバレる可能性が濃厚なので、タンス預金による財産隠しはやらないほうが賢明です。万が一財産隠しが発覚した際には、大きなペナルティが科されることになります。
なぜタンス預金がバレてしまうかといえば、税務署が預金口座を調査する強力な権限を有しているためです。脱税などの疑いがあると、税務署は金融機関に照会する権限がありますが、被相続人(亡くなった人)だけではなく、相続人である家族の口座情報も開示請求ができます。
高額なお金の引き出しの記録があれば、そのお金の行方が徹底的に調査されます。例えば、被相続人の口座から数百万円が引き出されていてその後の入金記録がない場合、タンス預金が疑われることになります。
また、長年にわたってタンス預金していて銀行の口座からお金の流れを確認できない場合でも、税務署は被相続人が住んでいた家屋の「実地調査」が可能です。タンスや押し入れ、ベッドの下、金庫などに計上漏れの財産がないかを調査されると、ずっと隠してきたタンス預金でもあっさり見つかる可能性があります。
 

タンス預金による相続財産隠しが発覚したときのペナルティ

タンス預金の存在自体は悪ではありませんが、タンス預金で相続税逃れをしていたことが発覚すると「加算税」「延滞税」という追徴課税が課されます。加算税のなかでも相続財産を隠ぺいしたことで課される「重加算税」は税率40%と大変重いものです。
また、「偽りその他不正の行為によって相続税を免れた者」に該当した場合は脱税の罪に問われ、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科されることがあります。
 

タンス預金は紛失や盗難のリスクが大きい

タンス預金で相続税の対策をしようと自宅に大量の現金を保管しておくと、「紛失」「盗難」のリスクが大きいです。
また、銀行預金と違って、現金が移動した記録が残らないため、相続時にトラブルになる可能性もあります。例えば、タンス預金の隠し場所を知っている相続人の1人が無断で持ち出した場合は、証拠がないため、ほかの相続人と深刻なもめ事が発生するかもしれません。
 

まとめ

預貯金が多くあるからといって、タンス預金に切り替えても財産を隠し通すことはまずできません。故意に財産隠しをしたと認められると、延滞税や罰金などのペナルティが発生するため、安易な相続税逃れを目的にタンス預金をするのは避けましょう。
かえって家族の相続を複雑にするだけでなく、税務署からのペナルティに苦しむことになる可能性もあります。
相続の負担を減らしたいなら、年間110万円までの基礎控除を活用して生前贈与するなど、ほかに有効な対策は多くあります。紛失や盗難による相続時のトラブルを避けるためにも、預貯金は銀行口座で保管することをおすすめします。
 

出典

財務省 加算税の概要
国税庁 No.9205 延滞税について
e-Gov法令検索 相続税法
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー