◆邦船大手もクルーズ事業に積極的

 近年、世界的な観光需要の回復が見込まれる中、邦船大手のクルーズ事業への投資は拡大しています。例えば日本郵船グループの郵船クルーズは、2025年夏にクルーズ船「飛鳥III」(5万2200総トン)の就航を予定しています。また商船三井グループの商船三井クルーズも、3万5000総トン級の新造クルーズ船2隻を2027年までに就航させる計画を進めています。さらに同社が新たに購入した「MITSUI OCEAN FUJI」(3万2477総トン)が2024年12月から運航を開始する予定です。

 ちなみに「飛鳥III」は日本初のLNG燃料クルーズ船であり、環境面からも今後のトレンドになることが予想されます。なぜならLNG燃料を使用することで、従来の重油焚きと比較して約30〜40%もCO2削減が期待できるからです。

 LNG燃料とは、油田などから産出される気体の天然ガスを約−162度で冷却し、容積を600分の1にしたものを指します。2023年の世界LNG輸出国は1位米国(85.1MT)、2位オーストラリア(81.4MT)、3位カタール(79.5MT)、4位ロシア(32.0MT)と続いていきます。

 日本で供給されている大半のLNGは外国船で輸入されているため、円高だと安く仕入れることができる一方、円安になると仕入れ価格が高騰するリスクもあり、この場合クルーズ観光の価格にも反映されることが予想されます。

◆オリエンタルランドの株価

 ここまでディズニー・クルーズや邦船大手の動向について解説してきましたが、オリエンタルランド、日本郵船、商船三井の直近の時価総額や株価なども見ていきましょう。なお数字は執筆時点(2024/8/8)のものとさせていただきます。

【オリエンタルランド】
・時価総額 約7兆2992億円
・株価 4014円
・自己資本比率 70.067%
・PBR 6.88倍
・PER 54.5倍
・配当利回り 0.34%

 オリエンタルランドの自己資本比率は、70.067%と非常に高く、財務の安定性がうかがえます。自己資本比率が高い企業は、借入金に依存せずに運営していることを示し、長期的な成長や困難な経済状況でも持ちこたえる能力があると言えます。

 PBRが6.88倍と非常に高い(PBRの目安は1倍)です。これは市場がこの企業を高く評価しており、将来的な成長性に期待が込められていることを示します。ただし、PBRが高い場合、株価が過剰に評価されている可能性もありますので、四半期決算などの数字を把握しておくことが重要になるでしょう。

 PERが54.5倍と非常に高い値(PERの目安は15倍)を示しています。一般的にPERが高い企業は成長期待が高いとされますが、この値が高すぎる場合は市場が企業の利益成長を過度に期待している可能性があります。PERが高い企業は、利益が予想を下回ると株価が急落するリスクがあるため、高い期待に見合った事業成長率を続けていける企業であるのかが重要になるでしょう。

 配当利回りは0.34%と低いです。配当利回りが低いことは、企業が配当よりも内部留保や再投資に重点を置いていることを示しています。高成長企業に多い傾向ですが、配当を重視する投資家にとっては魅力に欠けるかもしれません。

◆日本郵船の株価

【日本郵船(9102)】
・時価総額 約2兆1118億円
・株価 4596円
・自己資本比率 62.292%
・PBR 0.78倍
・PER 5.3倍
・配当利回り 3.48%

 日本郵船の自己資本比率は62.292%と高く、財務の安定性が高い企業です。自己資本比率が高い企業は、負債に依存せずに事業を運営していることを示しており、経済の変動にも強い耐性を持つと言えます。

 PBRが0.78倍と低めです。これは市場が企業の純資産価値に対して割安と評価していることを示します。一般的に、PBRが1倍を下回る企業は市場に過小評価されている可能性があり、投資家にとって割安な投資機会となることがあります。