ammo「やりたいことをやりたいようにやれました」 さらに進化したドラマチックな展開と斬新な言葉遊びが散りばめられた新作への想い
1月に同時リリースした『re:想-EP』と『re:奏-EP』でメジャーでの第一歩を踏み出した3ピースロックバンドammo(アモ)。3月に開催されたZepp DiverCity(TOKYO)公演のチケットがソールドアウトするなど、着々と活躍の場を広げている彼らが、メジャー1stアルバム『SONG LIE』(ソングライ)を完成させた。多彩なサウンドアレンジ、ドラマチックな展開、斬新な言葉遊びなど、このバンドならではの作風が存分に発揮されているアルバムだ。制作エピソードやツアーへの意気込みを、岡本優星(Vo.Gt)、川原創馬(Ba.Cho)、北出大洋(Dr)が語ってくれた。
――どのようなアルバムにしたいとイメージしていましたか?
岡本:特に何も考えず、「やりたいことをやろう」という感じで作りました。やりたいことがいろいろあったんです。
川原:僕も、いつも通り自由にやらせてもらいました。どの曲も優星らしかったですし、アレンジをする側としてもやりがいがありました。
――改めて才能を感じましたか?
川原:はい。優星は、天才だと思っています。
岡本:あなたこそ、アレンジの天才ですよ。
――2人の天才が高校の軽音部で出会って結成したのが、ammoということですね?
岡本:はい。
川原:気持ち悪いトーク(笑)。
――(笑)。北出さんは、今作に関して何か考えていたことはありましたか?
北出:僕もメジャー1stアルバムだからとか、そういうことは考えず、いつも通りにやりました。クオリティが高いものを作りたかったので、「ドラム、頑張ろう!」くらいです。
――レコーディングの環境は、インディーの頃よりも良くなっているんじゃないですか?
北出:はい。レコーディングを東京でするようになったんですけど、エンジニアさんは今まで通りです。でも、ドラムテックさんがついてくださるようになって、レンタルの楽器を試せるようになっています。スタジオによってもドラムの音が変化するんですよね。そういう面白さも知りました。
――ベースも様々な機材を試せるようになっていますか?
川原:そうですね。今回、3つのスタジオでやらせてもらったんですけど、3つ目のスタジオの時にローディーさんが機材を持ってきてくれました。「これはどう?」とか、いろいろ試させてくれたので、ちょっとだけ機材に興味が出ました。
――もともとは、機材に興味がなかったんですか?
川原:まったく興味がなかったです。「フェンダー、かっこいい」って、見た目で決める感じだったので。高2の頃からエフェクターが一緒ですし(笑)。でも、今回のレコーディングでは「この曲は、こういう音の方がいいんじゃない?」とか、ローディーさんがいろいろ提案してくれたのが楽しかったです。
――岡本さんは、機材に興味がありますか?
岡本:はい。僕は、機材が好きですね。今回のレコーディングでは、いろいろなアンプを用意していただきました。使わなかったですけど(笑)。いろいろ試したことで自分のアンプが一番好みだと知れたのは、意味があったと思っています。
――今作を聴いて改めて思ったんですけど、言葉遊びが好きですよね?
岡本:好きですね。それが武器だと思っているので。
――このバンドを始めた頃から、そういう作風を意識していたんですか?
岡本:意識はしていなかったです。もともと韻とかもよくわかっていなくて、言葉遊びとかもわからなかったので。でも、無意識でやっていたことを評価してもらえて、魅力だと感じてもらえるのがわかったんです。そこから意識的に言葉遊びをするようになって、どんどんのめり込んでいきました。
――今作のタイトルの『SONG LIE』も、日本語の「そんぐらい」という意味を含んだ言葉遊びですね。
岡本:はい。これは、先に決まっていたツアータイトルから思いついたんです。
――ツアータイトルの『Don’t Cry No Tour』は、「どんくらいのツアー」ですね。
岡本:そうなんです。
北出:歌詞の言葉遊び、面白いですよね。聴く度に発見があります。
――日本人だからこそわかる面白さも多いですよね。『SONG LIE』も、まさにそうですけど。
岡本:英語を使っている国の人は、どう思うんですかね?
川原:「こいつ、嘘歌ってるのかな?」ってなるのかも。
岡本:そんな直訳の感じ?(笑)。
川原:言葉遊びは、最初のアルバムの頃はそんなでもなかったんです。どんどん今の形になっていきました。どんどん言葉遊びを詰め込むようになって、何が正解なのかわからない感じもあって、優星の性格と似ています。なにがほんまでなにが嘘かわからへんやつですし、すぐに嘘をつくので(笑)。
岡本:『SONG LIE』は、俺の性格を表しているのかも(笑)。いろいろ遊べた1枚です。コーラスワークとか、音の面でも遊べました。
意解けない - Music Video
――1曲目の「意解けない」は、アニメ『小市民シリーズ』のED テーマですね。タイアップで曲を書き下ろすのは初ですか?
岡本:はい。
――『小市民シリーズ』に登場する小鳩常悟朗の小佐内ゆきに対する気持ちを描いていますよね?
岡本:はい。そういう曲にしてほしいというお話を先方から頂いて、それを踏まえながら作りました。原作を読み始めたら、止まらないくらい面白かったです。こういう曲の作り方は、楽しかったですし、得意かもしれないと思いました。もっとやってみたいですね。
――《尼そぎ》は、ゆきの髪型。《まだ今は狐狼の心を持つ》の狐=常悟朗、狼=ゆきとか、『小市民シリーズ』の要素をピックアップしながら盛り込んでいますよね?
岡本:そうなんです。ただの引用にはしたくなかったので、きっかけになるワードを使いつつ、自分の言葉として噛み砕いて、しっかり韻を踏むようにしました。
――《小賢しさも執念深さも片がつく》の《片がつく》もそうですね。
岡本:はい。《片がつく》は、常悟朗のキメ台詞ですけど、原作とはまた別の感じにしています。
北出:僕も原作を読んだんですけど、この歌詞はすごいですよね。上手いこと原作に出てくるワードとかを使っていますし、曲の世界観もアニメに合っていると思います。
――タイトルの「意解けない」も、歌詞の中に出てくる《幼いガール》の《幼い》に掛かっていますよね?
岡本:はい。《幼い》は「いとけない」と読むと辞書で調べて知ったので、タイトルを「意解けない」にすると常悟朗の感じも出ると思ったんです。
――歌詞を書く際は、辞書を活用しているんですか?
岡本:はい。言葉の意味や読み方をよく調べています。こういう歌詞を褒めてもらえるので、言葉について調べるのもどんどん好きになっています。
――『小市民シリーズ』の放送が始まったら、この曲に対するアニメのファンからの反応があると思います。
岡本:それが一番楽しみですね。エゴサします。これがきっかけとなってライブに来てくれたら最高です。
――アニメは海外の人も観ますから、MVのコメント欄に外国語が増えるかも。
北出:それは嬉しいですね。
川原:「意解けない」は、アレンジも面白くなりました。これだけ長い曲なのに、ずっと展開し続ける感じなので。
岡本:ライブでやるために、めっちゃ練習しないと。
北出:ドラムに関しても、感覚を掴むまでが大変そうです。頑張ります!
――「愛魔性の女」も、言葉遊びですね。《会いましょう》と《愛魔性》が掛かっていますし、《テレキャスター》の直後に《照れ隠した》が出てくるのも面白いです。
岡本:《テレキャスター》と《照れ隠した》の韻から作った曲なんです。音が似ているのに気がついて、曲にしようと思いました。「この韻を踏みたい」「この言葉遊びをしたい」というところから曲を作ることが多いです。
――魔性の女の虜になった男を描いたストーリーは、《会いましょう》と《愛魔性》の韻から思いついたんですね?
岡本:はい。こういう感じで誰かに惹かれるのは、多くの人が経験しているんじゃないですかね?
――川原さんは、こういう経験はありますか?
川原:…………ご想像にお任せします(笑)。
――北出さんは?
北出:こういう経験は、めちゃくちゃあります。毎月毎月。
――月刊「愛魔性の女」という感じですか?
北出:はい(笑)。
――(笑)。ammoの曲は、歌詞で描かれるストーリーも面白いです。
岡本:ストーリーを考えるのが好きなんです。タイトルを見て気になる感じも意識しています。
愛魔性の女 - Music Video
――「埃人間」も、気になるタイプのタイトルだと思います。《もがいている誇り高き埃人間》という一節にも表れている通り、《埃》と《誇り》のダブルミーニングですね。
岡本:はい。この曲は、ライブで大合唱してほしいですね。作った時点ではそういうイメージはなかったんですけど、創馬に送ったら「シンガロングを入れよう」という提案をしてくれました。
川原:アレンジの段階で、いろいろテコ入れしました。僕は歌がめっちゃ好きなので。
――風の噂で聞いたんですが、岡本さんはもともと音痴だったんですよね?
川原:めちゃくちゃ音痴ですよ。激しめの音痴キャラでした。
岡本:今も上手くないです(笑)。
川原:ボイトレに行くようになって、めっちゃ変わったんです。急にピッチがとれるようになってびっくりしました。「どうした?」って。
岡本:もともとピッチをちゃんとれているつもりだったんですけど(笑)。教えてもらうって大事ですね。自分に合っているキーがわかるようになると、作曲にも活かせるんです。ボツ曲がなくなって打率が上がった気がします。
――「埃人間」は、ピアノが入ったアレンジが新境地じゃないですか?
岡本:はい。こういうのは、初めてやりました。この曲のおかげで、今後の可能性も広がった気がしています。
――ammoは、1曲の中に起伏に富んだ展開を盛り込むバンドでもありますよね。「卒業」も、約1分の尺の中にかなり詰め込んでいるじゃないですか。
川原:そうですね。これ、どうしてこうなったんだっけ?
岡本:ショートチューンにしようという話はしていたけど……。
川原:作ったのは、結構前なので(笑)。
岡本:スタジオに入って3人でやってみると、デモとはかなり変わるんです。アレンジは全員で作っている感じがありますね。
――北出さんも、ドラムのアレンジをいろいろ提案するんですか?
北出:僕は、ほんまに全く提案しないです(笑)。「こういうのがいいんだけど」って言われて、それに対して「こんなんどう?」とかやってみるだけです。
川原:俺のアイディアをドラムで表現してくれるんですよ。
北出:いろいろやってみて、採用されたものが曲になっていくという感じです。
岡本:みんなと一緒に作っていくのが楽しいんですよね。最初にイメージしていたのとは全然違うものになると発見がありますし、勉強にもなります。「バンドやってる」っていう感じがすごくします。
――ammoのならではの作風に関しては、女性が主人公の歌詞が多いというのもありますよね。
岡本:そうですね。フィクションの曲は、女性目線になりがちです。フィクションだと男性目線のストーリーをあんまり思いつかないんです。男性だと、僕の本心がどうしても入ってきちゃうので。
――「ナイタールーム」も、女性が主人公ですね。
岡本:はい。「SHI'NE」と「ルウ」も女性目線です。
――「SHI'NE」の歌詞は切ないですけど、言葉遊びのユーモアによって柔らかなトーンが生まれていると思います。
岡本:隙を見せるというか、かっこつけ過ぎるのがあんまり好きじゃないんです。どこかちょっとズレていたり、良い意味でのダサさみたいなのがあった方がキュンとくると思うので、どの曲も重くなり過ぎないようにしていますね。
――「ルウ」もカレーをモチーフとしながら《涙で溶けたルウ うるうるうるうる》という感じで表現していますね。恋人と別れた女性を描いていますが、重くなり過ぎていないです。
岡本:《カレーライス》と《彼を思い出す》の韻が面白いなあと思いながら、こういう曲になっていきました。
――曲にしてみたい言葉遊びは、ふとした瞬間に思いつくんですか?
岡本:そうですね。じっくり考えながら出てくるものでもないので、思いついた時にメモっています。歌詞を書く時はメモを見て、「これをちょっと広げてみよう」ってなるんです。そういうストックは、めっちゃあります。
――女性目線の歌詞がある一方で、みなさんの実像を感じる曲もいくつかありますね。「SING ALONE GOOD」「High Ace!!!」「終わらないプレリュード」とか。
岡本:その3曲は、そうですね。「SING ALONE GOOD」は、「ライブの曲」っていう感じのストレートなものにしたいと思っていました。
――「High Ace!!!」も、とてもロックバンドらしいです。機材車は、ハイエースですか?
岡本:そうです。ハイエースでツアーしています。
――2022年8月の東名阪ワンマンライブツアーのタイトルが、『Let's Go! High Ace!!!』でしたよね?
岡本:はい。ハイエースは、その頃から乗っています。車のハイエースの綴りは「HIACE」ですけど、好きな言葉なので、今回は曲のタイトルにしました。
――ハイエースは、本当に頼もしい車です。日本のロックバンドは、ハイエースに支えられていると言っても過言ではないですからね。
岡本:本当にそうです。
[ SONG LIE ] 初回限定盤収録 2024.03.03「reALITY」at Zepp DiverCityダイジェスト
――《ステージ上では音に乗る ステージ降りても調子に乗る》とか、すごくバンドマンらしいフレーズです。《吐かず飲み込むゲロと弱音》とか、ライブ後の激しい打ち上げが思い浮かびます。
川原:打ち上げは、いつもそういう感じです(笑)。
――(笑)。このアルバムは「埃人間」で本編が爽やかに締め括られて、ラストの「終わらないプレリュード」がカーテンコールという印象がします。
岡本:まさにそういうイメージですね。
――「終わらないプレリュード」は、故郷への想いを歌っている曲ですよね?
岡本:そうです。地元を思い浮かべながら作った曲なので。地元を離れる引っ越しの当日に景色を見ながら歌詞を考えた感じです。引っ越す直前くらいまで練っていました。
――遠くの町に引っ越したんですか?
岡本:東大阪から別の町に引っ越したんですけど、地元からは10分くらいの距離です。
川原:近い(笑)。
岡本:10分で帰れます(笑)。それくらいの距離でも全然感覚が違うんですよ。
北出:この曲は、自分の地元を思い浮かべながら聴いています。僕は18歳の終わりくらいに地元を出たので、最後の日のことを思い出したりもしました。
――収録されている10曲について語っていただきましたが、それぞれに様々な要素が詰まっていますね。
岡本:はい。やりたいことをやりたいようにやれました。曲の種みたいなのは、たくさんあるので、また何か出すことになったら、そこから曲を考えようと思っています。
――このアルバムを引っ提げた東名阪ツアーが、9月から10月にかけての『Don't Cry No Tour』千ノ位編ですね。
岡本:はい。東京はZepp DiverCityですけど、今年の3月ぶりですね。
――キャパが1000人規模の「千ノ位」の会場でやれるようになっている状況については、どのように感じていますか?
岡本:嬉しいですね。2回目のZepp DiverCityのチケットを売り切ってこそ、正真正銘、そういう会場でやれるようになったということなんだと思っています。不安もありますけど、ツアーが楽しみです。
川原:このツアーで会場を埋められるのかはまだわからないですけど、今回のアルバムを機に大きくなれたらいいなあと思っています。
北出:3月のZepp DiverCityは、その規模感の初めてのワンマンライブだったんです。あの時は緊張が大きかったので、次のツアーは楽勝だと思っています(笑)。多分、楽しみながらやれるツアーになります。
――「千ノ位編」の後、ツアーは「百ノ位編」に突入するんですね。
川原:はい。年明けまで、いっぱい回ります。
岡本:ライブハウス編です。ammoの主戦場はライブハウスなので、かますしかないですね。「千ノ位編」でついた勢いを、お世話になっている各地のライブハウスに行って証明するようなツアーにしたいです。いつか武道館でライブするためにも、「千ノ位編」のチケットは、しっかりと売り切りたいです。
――「万ノ位編」も、いつかできたらいいですね。
岡本:それは夢がありますね。アリーナツアーをいつかやって、「千ノ位編」と「百ノ位編」の伏線回収をしたいです。
取材・文=田中大
[ SONG LIE ] 全曲ティザー映像