成田空港を飛び立つ中国国際航空(写真・時事通信)

 外国人の企業経営者向けの在留資格「経営・管理ビザ」の保有者が急増している。

 法務省が発表する在留外国人統計によれば、2023年6月末の保有者数は約3万5000人を突破。前年比で10%以上の上昇だという。

「2019年6月末の保有者数は約2万7000人超で、今年は特に顕著です。しかも、驚くべきことにその純増分のうち約90%、約4000人あまりが中国人なのです」(社会部記者)

 その背景には、法務省がおこなった「経営・管理ビザ」の取得要件の緩和があるという。

「これまでは500万円以上の資本金を支払った証明書や、2名以上の常勤従業員が雇用されていること、事業所の確保などの要件がありました。しかし今年になって、ほぼ撤廃されました。滞在期間も1年間から2年間に延びました」

 と、明かすのは、外国企業の日本支社等の労務管理を代行している社会保険労務士だ。同制度の狙いは野心を持った優秀な外国のビジネスマンを日本に呼び込むこと。問題があるようには思えないが……。

「実態は、まったくその狙いはうまくいっていません。法務省としては事業を起こすというなら、当然、自己資金をある程度持った人たちがやってくる……と考えていたのでしょう。しかし、実際には中国の中でもいわゆる“底辺層”つまり、着の身着のままの人たちが来日するようになってしまったのです」(前出・社会保険労務士、以下同)

 中国人といえば、銀座でブランド品を“爆買い”する観光客や、都内のタワーマンションを買い占める投資家、子供を都内の名門学校に入学させるために、日本に移住するパワーカップルなど、“リッチ”な人々を中心に報じられてきた。

「たしかに、これまで経営・管理ビザで来日する人々も、こうした富裕層が中心でした。しかし規制緩和後は、中国で貧困にあえぎ“脱出”するためのいわば移民としてやってくる人たちが増えたのです。彼らを手助けしているのが、移民ブローカーです」

 彼らの手口はこうだ。

「ビザの申請には事業計画書が必要です。移民希望者はブローカーに手数料を払い、代わりに事業計画書を用意してもらうなどビザ取得に必要な要件をそろえてもらいます。たとえば国内の法人登記されている休眠会社を買い取って代表者として登記する場合が多いですが、適当な会社がない場合は、先に移住した中国人経営者と謀って、取引履歴をでっち上げる、といったこともしているようです。だいたい費用は100万円くらいですね」

 こうして晴れて日本の「経営・管理」ビザを取得したとしても、“幽霊会社”の社長では食べていけない。結果的に、国内にある既存の中国人コミュニティーで働くしかないのだという。

「法人は持っているので、業務委託のような契約を、中国人が経営する会社と結ぶようです。不動産の仲介業や中華料理店の運営など、色々な仕事があるようですが、白タクや、キャッチといったグレーな仕事も少なくありません。また、多くはフルコミッション(完全歩合制)なので、収入が安定しません。すでにブローカーへの手数料で多額の借金を背負っていることも多く、移住が失敗しても帰国は困難です。

 困りきった彼らは、最終的にどんどん“闇”の仕事に就かざるを得なくなる可能性もあります。結局、下手に緩和しても、同ビザで来日する中国人にとっても、迎え入れる日本側にとってもいいことにはなりません。運用を見直すべきではないでしょうか」

 一文無しの中国人社長が増える未来も、遠くは無いのかーー。