2024年上半期「売れた・売れなくなった商品」TOP30

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(写真: MouseFamily/PIXTA)

コロナ禍が落ち着いてから、円安を背景とした物価高が続き、節約志向がいっそう高まっている。その一方でインバウンド需要が高まり、繁華街は外国人観光客があふれている。このように生活環境が目まぐるしく変化する中、どういった商品が売れているのだろうか。

全国のスーパー、コンビニ、ドラッグストアなど、約6000店舗の販売動向を追っている「インテージSRI+」のデータを基に、2024年上半期に「売り上げが伸びた商品」をランキング化した(販売金額を前年同時期と比較)。コロナ前と比べるため、2019年上半期比のデータも掲載している。

「売り上げが伸びた」商品トップ30の顔ぶれ

売り上げが伸びた商品1位のパックは、シートマスクを中心とするスキンケア用品で前年比153%と大きく伸長した。インバウンド需要が活況なだけではなく、外出増やマスク着用の緩和に伴い身だしなみへの意識が高まったのか国内需要も好調。

さらに、人気タレントが火付け役となったブームで、若年層に限らず幅広い年代の女性が購入を増やしている。毎日使うと効果が高まると話題になったのもあり、1枚当たりの費用を抑えられる30枚入りといった大容量の商品がとりわけ人気だ。

主にインバウンド需要で販売を伸ばしているのが、4位の強心剤、5位のリップクリーム、10位のビタミンC剤など。コロナの水際対策緩和や円安などを受け、訪日客が増加したことが寄与している。

2位の靴クリームは、革靴用のクリームだけではなく、靴用クリーナー全般を含む。コロナ下にオフィスカジュアルが加速したこともあり、革靴用のクリームは販売を落としていた。転機となったのは、スニーカー用のクリーナーシートのヒット商品だ。スニーカーで出勤することも増えるなどスニーカー用の需要が高まっており、シートタイプで拭くだけで使えて持ち運びもできるという手軽さが支持された。

料理に活用されるトマトジュース

3位のトマトジュース、6位のは、値上げによる販売金額の伸びも見られたが、販売量も堅調に推移した。

トマトジュースの販売増を牽引したのは、善玉コレステロールの増加や睡眠の質の向上などの効果を訴求する機能性表示食品。トマトジュースを飲用するだけではなく、スープや味噌汁、パスタソースといった料理に活用する人が増えていることも販売を押し上げたとうかがえる。

料理への活用が進むきっかけとなったのは、2023年の秋ごろの生鮮トマト価格の高騰だ。天候不順や燃料価格の上昇などが高騰の要因となり、価格が安定しているトマトジュースが生鮮トマトの代替品として注目された。2024年には生鮮トマトの価格は落ち着きを取り戻しつつあるものの、備蓄しやすく簡単に料理に使えるなどのメリットがあることから、トマトジュースを料理に活用し続けている人もいるのだろう。

物価の優等生ともいわれる米でさえ、価格が上昇してきている。前年の記録的な猛暑を受け米の作柄が減少した地域があったうえに、訪日客の増加で外食需要が活況となり、需給が逼迫してきているためのようだ。それでも米の販売量が底堅いのは、2022年ごろから値上げが続いていたパンや麺類などの主食類と比べると、依然として米に値ごろ感があるのではないだろうか。

トマトジュースや米は全体版のランキングでもトップ10に入っていたが、ここからは食品・飲料に絞った上位ランキングを確認したい。

4位の煮干し、5位のケチャップ、7位の冷凍水産などは、販売量が苦戦したものの、価格上昇で販売金額が増加した。これらの商品では、コスパのよいプライベートブランド商品が人気となっており、節約志向の高まりが表れている。

玩具メーカー菓子が躍進している背景

値上げ以外の要因で上位にラインクインしたのが3位の玩具メーカー菓子。2019年比では218%と、コロナ禍に市場が大きく伸長した商品とわかる。2020年には、大ヒットしたアニメの関連商品が市場を牽引していた。

2024年の売れ筋商品は、さまざまなアニメの関連商品だけではなく、ゲームやアイドル関連の商品など多岐にわたっている。親が子供用に買う場合もあるが、大人が昔好きだったキャラクター商品を自分用に買っている場合も見られた。子供や趣味のためとなると、お金を惜しまない傾向があるのかもしれない。

健康系の食品・飲料が上位に入ったのもランキングの特徴として挙げられる。飲料では、6位の炭酸飲料で糖分を控えた商品、10位の乳酸飲料で免疫力向上の効果を訴求する商品、11位の果汁飲料で熱中症の予防やビタミンの補給といった効果を訴求する商品が好調だった。

食品でも、8位のもずく・めかぶは、めかぶが大きく伸長しており、食物繊維やビタミンなどの栄養素が豊富で健康によいと注目されたためと見て取れる。

雑貨のランキングでも、値上げの影響が色濃く見られた。3位の中性洗剤、4位の漂白剤、10位のアルミホイルなどは、販売量が伸び悩む中、価格上昇で販売金額が増加した商品だ。19位のティッシュペーパーや20位のトイレットペーパーなどの紙製品でも値上げの影響が見られている。

ただし、同じ紙製品である5位の大人用紙おむつは、値上げによる販売金額の伸びがあるものの、外出増に伴いアクティブシニアの需要が高まったためか、軽失禁用の商品が販売量を伸ばした。9位の日焼け・日焼け止めも、外出増で販売を伸ばしている。

6位の洗濯用洗剤では錠剤タイプで使いやすく洗浄力が強いと訴求する商品が、8位のトイレ用クリーナーでは泡タイプでこすらなくても汚れを落とせると訴求する商品が好調となるなど、高付加価値化が販売増につながった。

「売り上げが落ちた」商品トップ30の顔ぶれ

最後に、売り上げが落ちた商品について確認したい。1位の検査薬、2位のマスク、9位の殺菌消毒剤、16位の体温計は、5類移行などによりコロナ対策の需要が落ち込んだことが影響した。

4位のオートミール、7位のビネガードリンク、28位のプロテイン粉末は、コロナ禍に販売を伸ばしていた商品で反動により販売減となっているようだ。それでも、オートミールは、コロナ前の2019年と比べればおよそ9倍の規模を維持しており、コロナを通じて市場が大きく成長したことがうかがえる。

2024年下期も値上げは続くと見込まれており、節約志向は強まっていきそうだ。また、7月に入ってからコロナの感染再拡大の動きもある。落ち込みが見られていたコロナ対策商品の需要も再び伸びていくのだろうか。今年も記録的な猛暑になると予測されていることから、暑さ対策商品の需要は堅調に推移していくと考えられる。

売り上げが伸びた商品


売り上げが落ちた商品


売り上げが伸びた食品・飲料


売り上げが伸びた雑貨


(木地 利光 : 市場アナリスト)