<プールの授業「日焼け止め使用禁止」で論争>「肌が弱い子がかわいそう」「使うとプールの水が汚れる」「先生は更衣室でこっそり塗っていた」教育委員会は「校長の判断に委ねてる」と話すが…

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「青汁王子」こと実業家・三崎優太(みさき・ゆうた)氏が、プールの授業で日焼け止めの使用を禁止している学校を批判し、話題になっている。そこで今回、現役の教師たちに「学校のプールでの日焼け止め事情」についてリアルな声を聞いてみた。また、小学生の保護者たち100人を対象に街頭アンケートを行い、学校の実態を調査してみた。

〈画像あり〉学校側がプールでの日焼け止めを禁止する“意外”な理由とは…

 

都内小学校では寛容になってきた日焼け止めクリーム

「青汁王子」こと実業家の三崎優太氏が7月21日、自身のX(旧Twitter)に「学校のプール授業で日焼け止め禁止なんて、本当に古臭い考え方だな。こんな時代遅れの規則で子供たちの健康を犠牲にするなんて、あり得ない」と投稿し、話題になっている。

この投稿に対し、Xでは「考え方が古すぎて、親としてもモヤモヤする」「時代に合わせてもっと柔軟な対応をしてほしい!」などといった共感のコメントが多数寄せられた。

本件について、まず教育委員会はどう考えているのか。都内某区の教育委員会の担当者はこう語る。

「教育委員会からは、学校に対して一律で『日焼け止めを認めてください』といったことは一切言っていませんが、学校も昔と違ってだいぶ柔軟な対応をするようになってきているかなと思います。

昔は日焼け止めを禁止している学校が多かったです。でも、今はいろんな事情もありますし、これだけ日差しが強い今、日焼け止めを禁止している学校は少ないです。 

これまで日焼け止めを禁止にしていた学校が多かった1番の理由は、大人数で一斉にプールに入ったときに、みんなが日焼け止めを塗っていると、水質が変化してしまう可能性があるからだと聞いたことがあります。水質が変化してしまうと衛生面での問題が懸念されます。 

ただ、プールの授業の際は毎回、水質に問題ないか数値を測ったり、汚れていないかチェックをしたりしているのですが、日焼け止めが原因で問題が出たケースは、今まで一度も聞いたことがありません」(担当者)

また、別の区の教育委員会の担当者もこう語った。

「日焼け止めに関して、教育委員会では特にルールは定めていません。水泳の授業は、東京都が作成した『水泳指導の手引』に沿って指導することが定められていますが、それ以外の細かいルールに関しては、学校ごとの実態に応じて学校長の判断で定められています。

学校によってさまざまな実態があるので、どのような理由で学校がプールの授業で日焼け止めを禁止しているかは、こちらで把握していません」(担当者)

 水が汚れてプールに入るのを嫌がる児童も

今回の件に対して、現役の教師たちはどう考えているのか? 東京都の小学校に勤務する男性教諭は、次のように実情を語る。

「私が勤務する小学校では、10年くらい前から、プールの授業で日焼け止めを使用することが許可されています。最近は紫外線対策のため、日焼け止めの使用を許可する学校が多くなったと思います。

ただ、日焼け止めにより、プールの水が汚れることがあるのは事実です。過去には水面に日焼け止めの油が浮いているところを見て、プールに入るのを嫌がる子どももいました。

1年くらい前の職員会議で、プールの水が汚れることを防ぐため、日焼け止めの使用を禁止する提案が出ました。

しかし、『子どもたちの肌の健康を守るために、日焼け止めはこれまでどおり許可したほうがいい』という意見の先生が圧倒的多数でした。話し合いの結果、耐水性のある日焼け止めのみ使用を許可することになりました。」(40代男性・東京都小学校教諭)

次に、都内の小学校で働く30代の女性教諭に話を聞いた。

「私の学校では、プールの授業で日焼け止めの使用を禁止されています。理由は『日焼け止めをつけたままプールに入ると、水が汚れるから』と学校から説明されています。

でも正直、職員用の更衣室で日焼け止めを塗っている先生を見かけることは多いです。最近は連日、かなり日差しが強いですし、日焼け止めを塗らずにプールに入ることは教師も辛いです。禁止されているとはいえ、実際は家で日焼け止めを塗ってきている児童も多いのではないかなぁと思います」(30代女性・東京都小学校教諭)

「日焼け止め禁止」に対する保護者のリアルな声は?

では、親側の意見はどうだろうか? タワーマンションが立ち並ぶ、二子玉川駅周辺で小学生の子を持つ保護者100人を対象に街頭アンケートを行い、学校の実態を聞いてみた。

結果として、「プールの授業で日焼け止めが禁止されている」と答えた人はわずか18人で、「禁止されていない」と答えた人は82人。禁止されていない学校が圧倒的に多いということがわかった。

まずは、プールの授業で日焼け止めの使用を禁止されている保護者の意見をいくつか紹介しよう。 

●30代専業主婦・小3女子の母親

紫外線によって、肌が炎症を起こすリスクもあるので、早く許可されることを祈っています。肌が弱い子の親は学校に内緒で毎朝、日焼け止めを塗ってから登校させているとママ友が言っていました」

●30代パート・小4女子の母親

「日差しが強いこの時期、日焼け止めを塗らせてもらえないのは心配ですね。でも、学校が定めたルールだから仕方ないかなぁと思います。水泳の授業のときは上にラッシュガードを着ているので、身体が焼けることはないです。

でも、毎年プールの時期になると、顔は日焼けで真っ黒になります。ゴーグルの跡が顔にくっきりとついていて、可哀想になりました」

●30代パート・小4男子の母親

「私のママ友は、日焼け止めが禁止されていることに対して、学校にクレームを入れていましたよ。私も耐水性がある日焼け止めであれば許可してもいいのでは?と思うので、そう言いたくなる気持ちもわかります。

紫外線を浴び続けると将来、皮膚ガンになるリスクが高くなると聞いたことがあるので心配ですね」

「もし学校が禁止したら、即クレームを入れますよ」

次に、日焼け止めの使用が許可されている保護者の意見を紹介しよう。

●40代自営業・小6女子の母親

「私は娘に毎日、日焼け止めを塗るように言っています。もし、学校がプールのとき日焼け止めを塗ることを禁止したら、即クレームを入れますよ。そのせいで将来、シミになったら可哀想じゃないですか」

●40代会社員・小3男子の母親

「︎うちの子の学校では、日焼け止めを学校に持って行くことが許可されていて、みんなプールの授業前に教室で日焼け止めを塗っていると聞きます。

今どき、日焼け止め禁止の学校があるということに驚きです。肌を守るためにも、日焼け止めは絶対に必要だと思います」 (40代会社員・小3男子の母親)

●30代事務職・小5女子の母親

「日焼け止めについて、学校から特に何か言われたことはないので、禁止はされていないんだと思います。娘は毎朝、日焼け止めを塗ってから登校していますね。

『プールの時間はもちろん、登下校のときも日差しが気になる。絶対に日焼けしたくないから、本当はこまめに塗り直したいけど、日焼け止めを学校に持って行くことは禁止されていて、それができないのが辛い』と娘は言っていました」

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2024年も全国的に厳しい暑さが続き、屋外では非常に強い日差しが連日のように降り注いでいる。紫外線による児童の肌へのダメージを防ぐためにも、学校側には柔軟な対応を期待したいものだ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班