なぜ相談してくれなかったのか……怒りに震える相談者が直面した意外な事実とは/写真はイメージです

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―[モラハラ夫の反省文]―

 DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。コミュニティではさまざまなグチや悩みなども共有されるのですが、共通するものがたくさんあります。
◆「大事なこと」を勝手に決めたパートナーに怒り

「今回のケンカのきっかけは、パートナーが子どもの塾のことを勝手に決めてきたことでした。『大事なことは一緒に決めよう』って約束しているのに、事前に何の相談も断りもないなんて……ひどいと思いませんか?」(Aさん)

 今回はこのセリフの背景に迫りたいと思います。

 パートナーとの関係の危機を迎え、GADHAに参加することを決意したAさん。最初は、自分の行為がモラハラだとは夢にも思わなかったそうです。それでも、当事者会に参加したり、Slackの書き込みを読み漁っていくうちに、自分の認識のズレや甘さに気づかされたと言います。

 それ以降、Aさんは、パートナーとのコミュニケーションに心を砕いてきたので、余計に今回のことがショックだったようです。

「パートナーが『大事なこと』を勝手に決めてきたのは、これが初めてのことではないんです。その度に『大事なことは一緒に決めたい』『事前に相談してほしい』って、こちらのニーズをパートナーには何度も伝えているんですよ!それなのにあんまりじゃないですか」

◆Aさんのパートナーは、当初からそのような身勝手な人だったのか?

  Aさんは、そんなふうに小さな怒りや悲しみを抱えて、最後にはこう言いました。

「夫婦なんだから『助け合って一緒にやっていきたい』と自分は考えているんです。自分としては『事前に相談してほしい』だけなんですが、加害者にはそれすら高望みなのでしょうか……」

 一見「加害者(Aさん)」が普通の人で、「被害者(パートナー)」の行動こそが加害なのではと思う人も多いでしょう。DV・モラハラを知らない人が素直に聞けばそう思うのも自然な内容です。

 しかし、GADHAでは、加害者自身からは見えていない視点があるかもしれない、と想像しながら相手の話を聴きます。

 そこで、僕はAさんに聞いてみました。

「Aさんのパートナーは、付き合っていた頃や結婚した当初から、Aさんに事前に相談や断りもなく何でも勝手に決めていくような人だったんですか?」

 すると、Aさんは次のように答えてくれました。

「いいえ。明るくて話好きで、どちらかというとこちらの意見を尊重してくれているようなところがありました。お気に入りのアニメの話とか、むしろ、自分にとってはどうでもいいようなことまでよく話してくれました。残念ながら、何が言いたいのか、自分にはよくわからないことも多かったので、『整理してから話をしてほしい』と言ったことも、一度や二度ではありません」

 Aさんは続けます。

「せっかく話をする時間を取るなら、お互いのためにも、ちゃんと言語化してほしいんですよね……」

◆「相談してほしい」と言いながら、一方的に相手に負担をかけていたAさん

 一口に「話をする」と言っても、趣味嗜好など単なるおしゃべりもあれば、悩みや困っていることなどの共有もあります。

 悩みや困っていることなどは、そもそも何が問題なのかが自分でもよくわかっておらず、人と話をしているうちに整理されていく場合も少なくありません。

 それなのに、思い切って相手に話すと「何を言いたいのかわからない」「整理してから話をしてほしい」と一蹴されたら、皆さんはどう感じますか?

 自分としては精一杯努力し整理して話をしているつもりなのに、そのように言われ続けたとしたらどうでしょうか?