ワイン・地酒を浴びる夜

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 【酒場レコード・2】東京メトロ・新中野駅から徒歩3分。青梅街道と中野通りの交差点(杉山公園)を中野駅方面に50mほど進むと左手側に見えてくるのが柴田屋酒店本店。都内で「志賀高原ビール」が買える貴重な酒屋だ。ここの2階が本日の酒場である「ワインビストロ 柴田屋酒店本店2F」。

●まだ外は明るい17時に来店



 1Fの酒屋に入るとすぐ右側にらせん階段があり、そこから2Fへ上がる。17時に入店。座席数はカウンター5席、テーブル34席。2面彩光で日没前は明るく、夜になると間接照明が効いてムーディ。テーブルが余裕を持って配置されているので広々している。

●来店目的は「フリーフロー」という名のプレミアム飲み放題



 ワインビストロ 柴田屋酒店本店2Fに来た目的は「フリーフロー=飲み放題」。そう、酒を浴びにきたのだ。自社輸入のハイクオリティワイン、特約店ならではの地酒、どこで飲んでも高価なクラフトビール、その他ドリンクがフリーフローで楽しめる。プランは「60分2948円」、「90分3608円」、「120分4158円」、「30分延長1518円」。ここは腹をくくって120分プランをオーダーした。

 店内奥の壁一面にワインと日本酒が並び、ここでセルフフローする。酒屋の棚から勝手に酒を選び飲んでいるような錯覚が楽しい。一つのグラスを水ですすぎながら使うのがルール。クラフトビールやその他のドリンクはスタッフにより1杯ごと提供される。

●駆けつけ2杯は?



 まずはクラフトビール「MEET2 セッションIPA」。静岡県沼津のベアードブルーイングが醸す。ゴクゴク飲んでもコクと香りが逃げず旨い。おかわりしたい気持ちを抑え、イタリアのロゼ・スパークリング「ラモーロ」で発泡コンビネーション。辛口でガス感は優しくフレッシュな酸味と果実味が旨い。駆けつけの2杯がクラフトビールとスパークリングワインとは優雅である。

●酒を飲むための黒いタレと赤いタレ



 中国たまり醤油仕立ての「黒いよだれ鶏」。中華料理の名前につく「黒」ってワードはそそる。黒酢豚とか黒麻婆とか。なんだか魅力的な「悪」を感じる。そんな黒いタレとしっとりした鶏に酒が進む。

 続いてもタレを楽しむ料理、「スパイシー海老マヨ」。甘味と辛味いずれも濃厚なスイートチリソースとマヨネーズのタレがサクッと揚がった海老にたっぷりかかっているのがうれしい。「タレはたっぷり」が旨いのだ。

●地酒とペンネと白ワイン



 日本酒は「十六代九郎右衛門 純米 ひとごこち 火入れ原酒」。よくわからんコンテストが多い中、世界的に影響力の強いコンテスト「IWC 2023」のSAKE部門でチャンピオンに輝いた長野県木曽郡の湯川酒造店が醸す。昨今、若干インフレ気味の「九郎右衛門」が飲み放題メニューに入っているのはナイス。

 九郎右衛門と合わせたのは「おつまみペンネ・アラビアータ」。地酒とペンネ・アラビアータの相性が抜群なのを知っている。にんにくと唐辛子の効いたソースは旨みが強く、もちもちペンネに絡む。重要なのが食べやすい形状。おしゃべりしながら食べるためにペンネは開発されたのだ、きっと。

 そしてフランスの白ワイン「ナダルエノー キュヴェ マリー シャルドネ」。暑かった日の夕暮れに飲むよく冷えた白ワインは3割マシで旨く感じる。

●昇天!今日イチで旨かったのは?



 今日イチで旨かったのが「本日のアヒージョ」。オリーブオイルとガーリック、さらにナンプラーが香る。ムール貝も海老も旨かったが、ナンプラー入りオイルが激うまでバケットをおかわりした。もちろんバケットにはたっぷりとオイルをひたし、ワインで流す。これは美味。

 オーストラリアの赤「キリビンビン スクリーム シラーズ」。このラベル、シルクスクリーンにして部屋に飾りたいくらい好み。スパイシーで、重くて、濃い。色も美しく旨い。「キリビンビン」とは、オーストラリア先住民アボリジナルの人々の言葉で“あるものをより良い魅惑的なものにする”という意味とのこと。その通りの味。

●幸せな過ちを犯す、炭水化物2連荘



 グラスは進み、フリーフロータイムも終わりが見えてきた。ということは、炭水化物を食べる時間なので「キーマカレー」をオーダー。少しずつキーマをつまみながら赤ワインを飲む。スパイス加減が絶妙でスプーンが止まらない、よってワインも止まらない。フリーフローで良かった、と思える瞬間。

 チンパンジーラベルが素敵な「CL90 カサロホ テンプラニーリョ」。この赤ワインはコンクリートタンクで醸されているそうで、ラベルのチンパと相まってなんだか猿の惑星っぽい、つまりサイエンス・フィクション的ワイン。考古学者・コーネリアスの性格と同じく優しい口当たり。

 フリーフローの恐ろしさは、リズム良く、気分良く、飲み続けることによって満腹中枢がマヒすることだ。そして、カレーの次にパスタをオーダーするという幸せな過ちを犯すのである。ああ、パスタに染みたベーコンのオイルがたまらない。永遠に飲んで食べていられる。

 今晩も酔ってしまった。フリーフローはタイムアップである。高品質を前提とした、さまざまなワインと日本酒が飲み放題ってなかなかないメニューだ。いい酒なので悪酔いもしない。ディズニーランドのチケットっていくらでしたっけ?大人の遊園地と思えば120分プランでもお値打ちである。ワインビストロ 柴田屋酒店本店2Fさん、素晴らしい興奮をご提供いただきありがとうございました!

●今回の酒場:ワインビストロ 柴田屋酒店本店2F



 ワインビストロ 柴田屋酒店本店2Fは、地下鉄丸の内線、新中野駅から徒歩3分。中野通りに面しウッディな壁や扉が目印。ビストロへは1Fの酒屋から螺旋階段で2Fに上がる。フリーフロー(飲み放題)プランのオーダーがおすすめ。万全の体調で「酒屋が提案する飲み放題のカタチ」を楽しもう。なお気に入った酒は1Fの酒屋で購入可能。(ナードワード社・國安淳史)

『ワインビストロ 柴田屋酒店本店2F』

住所:東京都中野区中央5-3-11 柴ビル2F

電話:080-6516-2020

営業時間:【月〜土】11:30〜15:00/17:00〜22:30、【日・祝】11:30〜21:30

定休日:なし

國安淳史

ナードワード社 代表取締役。外資系IT企業などを経て2018年にWeb・Shopify・各種デザイン制作、商品企画などを提供するナードワード社を設立。KISOと共創した「日本酒器 hiyakan PRO」はECサイトや百貨店等で販売中。趣味は音楽、読書、飲酒。