「手足口病」が全国で流行 子どもが感染した場合の症状は? 大人にもうつる? 注意点&対処法を医師に聞く
主に夏に乳幼児の間で流行するのが「手足口病」です。今年は全国の多くの自治体で患者数が警報基準を超えており、子どもがいる人は注意が必要です。
子どもが手足口病に感染した場合、どのような症状が出るのでしょうか。大人にうつることはあるのでしょうか。注意点や対処法について、たかはし皮膚科クリニック(兵庫県尼崎市)院長で医師の高橋謙さんに聞きました。
手足に痛みを伴う発疹が出るのが特徴
Q.手足口病に感染する原因や主な症状について、教えてください。
高橋さん「手足口病は、主に『コクサッキーウイルス(A16、A10、A6)』『エンテロウイルス71』というウイルスによって引き起こされる感染症で、夏に流行します。主な症状は発熱と発疹で、数ミリ程度の赤い、中央にわずかな水疱(すいほう)が認められることが多いです。
病名の通り、発疹は手や足、口(口腔(こうくう)粘膜)によく出るほか、肘やひざ、臀部(でんぶ)などにも見られることがあります。かゆみや痛みを伴うことが多いですが、発症部位により、無症状であることもあります。手や足に出ている発疹は、痛みを伴うことが多い印象です」
Q.子どもに手足口病とみられる症状が出た場合、どのように対処したらよいのでしょうか。注意点も含めて、教えてください。
高橋さん「手足口病は感染力が非常に強いため、まずは医療機関で診断してもらうことが必要です。発熱がなく発疹の症状のみであれば、皮膚科を受診すれば良いと思います。発熱があれば手足口病以外の鑑別診断が必要なため、小児科の受診をお勧めします。
手足口病は基本的にウイルス性疾患のため特効薬はなく、経過観察となります。子どもが感染した場合は水分をしっかり摂取させてください。かゆみの症状が強ければ、抗アレルギー剤の服用が有効なこともあります。
ウイルスは喉の奥の咽頭のほか、腸管から排せつされるため、飛沫(ひまつ)感染や糞口(ふんこう)感染を引き起こします。そのため、感染した子どもにマスクを着用させるとともに、糞便処理の際に可能であれば手袋を着用し、処理後は手にせっけんなどを付け、しっかり水で洗い流すようにしてください。またタオルを使い分け、子どもが使った遊具などは都度、消毒をしましょう」
Q.幼稚園や保育園に通っている子どもが、手足口病に感染したとします。症状が治まった段階で登園しても問題ないのでしょうか。登園の目安について、教えてください。
高橋さん「手足口病は、発熱や発疹などの症状が出ない『不顕性感染』であることも多く、日常でよく見られる感染症です。また、咽頭からは1〜2週間、糞便からは2〜4週間の間、ウイルスが排せつされるという報告もあり、隔離をする意味合いでの登園・登校禁止は必要ありません。感染者本人の体調が良くなれば登園・登校は可能です。
人目を気にされるのであれば、発疹が赤色から茶褐色になったタイミング(水痘症での登園・登校基準を拡大解釈)で登園や登校をするのがよいと思います。発熱のほか、くしゃみやせき、たんといった気道症状がある間は、登園や登校を控えるべきだと考えます」
Q.子どもから大人にうつることはあるのでしょうか。大人が手足口病に感染した場合、子どもに比べて重症化しやすいという話を聞きますが、本当なのでしょうか。
高橋さん「手足口病は終了免疫を得られる病気で、子どもの頃にかかる病気です。原因となるウイルスは先述したもの以外にもあり、そのすべてのウイルスに罹患していればかかることはありません。もちろん、大人の場合でも、過去にかかっていないウイルスによって手足口病に感染することはあります。
診察の現場では、大人が手足口病に感染した場合に重症化することがあります。その原因としては、『受診をしない』『子どもと違い、安静による加療がしにくい』などの点が考えられます。大人が手足口病に感染した場合、特に手足の発疹部の痛みが強く出ている印象です。仕事に行き、手をよく使わざるを得ないからかもしれません。
大人の場合も、体調不良が続いている間はウイルスの活動が活発化している可能性があり、出勤を控えるべきだと考えます」
Q.手足口病の感染を防ぐには、どうしたらよいのでしょうか。
高橋さん「まずは感染している人から、ウイルスをもらわないようにすることです。繰り返しになりますが、発症初期に感染者にマスクを着用させ、飛沫を最小限にとどめるようにします。そして、糞口感染を防ぐ目的で感染者の糞便処理の際の手袋着用のほか、その都度、手洗いの徹底などに尽きると思います」