東京ドームシティのフードコート「GO-FUN」はいったいどんなところ?(筆者撮影)

時にレストランであり、喫茶店であり、高齢者の集会所にもなる「フードコート」。その姿は雲のように移り変わりが激しく、楽しみ方は無限大。例えるなら「市井の人々のオアシス」だ。

本連載では、そんな摩訶不思議・千変万化な「フードコート」を巡り、記録しながら、魅力や楽しみ方を提唱していく。

都心の遊園地「東京ドームシティ」を歩く

今回は、東京ドームシティのフードコート「GO-FUN」を訪問する。同エリアにはJR・東京メトロ「水道橋」駅があり、地理的には千代田区・文京区の境界辺り。

都内や関東近郊にお住まいの方以外にとっては、かつて読売ジャイアンツが本拠地としていた後楽園スタヂアムの名前から、水道橋ではなく「後楽園」といったほうがわかりやすいかもしれない。東京メトロ・丸ノ内線の後楽園駅も、水道橋駅から歩いてすぐのところにある。

水道橋という駅名は、この地を走る神田川に架かっている橋に由来しており、かつては「吉祥寺橋」と呼ばれていた。現在、本駒込に移転している吉祥寺が付近にあったことにちなんでいる。なお現在の橋は1988年に架けられたものだという。

ほぼ都心と言っていいエリアだが、オフィス街というよりも、プロ野球・読売ジャイアンツの本拠地である東京ドームを思い出す人が多いのではないか。

また、それ以外にも娯楽施設がそろっており、雨の日でもなかなかに楽しめる。そしてもちろん最終目的地のフードコートも、天気に関係なく楽しめる場所であることはいうまでもない。

【画像27枚】都心の遊園地「東京ドームシティ」内にあるフードコート「GO-FUN」。スポーツとエンタメの街にある、その実態とは?

水道橋駅を出発し、歩き始める。この日、東京ドームではプロ野球のナイトゲームが開催予定であり、私が駅から出発したのは11時ごろだったが、この時間からすでにチラホラと野球ファンらしき人がいる。野球ファンの熱量に頭が下がる。


水道橋駅からスタート(筆者撮影)

東京ドームがその中心ではあるが、この一帯にはプロレスの“聖地”として知られる後楽園ホールもあれば、柔道の総本山ともいえる講道館もある。


かなり高いところにある「後楽園駅」の看板。この駅からも近く、交通の便はいい(筆者撮影)

2023年12月にはサッカーの体験施設として「JFAサッカー文化創造拠点 blue-ing!」もオープンするなど、結構いろいろなスポーツに関係する施設がある。スポーツといえるかは微妙なところだが、場外馬券場の「ウインズ」もあり、バラエティ豊かだ。

スポーツ以外でも、遊園地の「東京ドームシティ アトラクションズ」や、温浴施設を中心とした水をテーマにしたアミューズメント施設「LaQua(ラクーア)」などがそろっており、一帯は都市型エンターテインメントゾーンの「東京ドームシティ」という愛称で親しまれている。

東京ドームシティ アトラクションズは雨天でも乗れるアトラクションもあり、天候を問わず、さらにカップルやファミリー、それに年齢層も関係なく幅広い層が楽しめるエリアといえる。これだけ都心にありながらビジネスパーソンが少ないのは珍しい。

ポテンシャルの割にやや狭め、大雨でも賑わう

今回訪れるフードコートは、東京ドームの外周を歩きながら向かうことができる。外周から東京ドームシティ アトラクションズが見え、通常なら絶叫マシンの声が響いてくるが、この日は雨ということもあって野外アトラクションは静か。ハンバーガーショップ「シェイクシャック」のテラス席には、外国人が多い。

正面までやってきた。王ゲートと長嶋ゲートのレリーフを一瞥し、入っていくフードコートというのは、全国を見渡してもそこまで多くないだろう。


東京ドームシティのフードコート「ゴファン」(筆者撮影)

平日・大雨でも賑わっているのは、エンタメに特化したこの一帯の集客力がそれほど高いということ。その分、やや席数が少ないかもしれない。遊園地が混む土日などは、文字通りごった返しとなっているのではないだろうか。

店舗もやや少なめ。丸亀製麺、びっくりドンキー ポケットキッチンを筆頭に、ラーメン、丼、韓国料理に珍しめなところではマザー牧場の店舗があるなど、ちょっとしたお出かけにきたという、エンタメ感のあるラインナップだ。

カウンター席に陣取り、さて何を食べようかと考える。迷ったときは、郷に入っては郷に従え、だ。客層を問わず圧倒的な集客力を見せている丸亀製麵にしよう。実際、遊園地や他の娯楽にお金を使い、食事はコスパを重視する客も多いと見受けられる。


どこでも人気の丸亀製麵(筆者撮影)

ちなみにここの丸亀製麵には、店舗限定のメニューがある。その名も「東京ドームうどん」。大きなかき揚げをぶっかけうどんにトッピングしたメニューだ。気にはなったが、大量の揚げ物を食べ切る自信がなく、大人しく、ざるうどんをチョイスした。


店舗限定の東京ドームうどん。抹消されたもう一つのメニューが気になる(筆者撮影)

まっさらなうどんに、天ぷらやおにぎり、いなり寿司など好みのものを合わせられるシンプルなざるうどん。その自由さは、いくつもの店舗から自分流のチョイスや組み合わせができるフードコートと重なる。今回はちくわ天と、かしわ天を追加した。初めて知ったが、最近は「うどーなつ」なるドーナツも販売しているらしい。

「ちょっぴりソフト」のちょっぴりさに驚く

せっかくなので、マザー牧場でも注文しよう。


右下にあるのが、あまりにちょっぴりだった「ちょっぴりソフト」。ウソはついていないし、もはや逆に面白い(筆者撮影)

早速提供されて少し笑ってしまった。ちょっぴりソフトが、本当にちょっぴり過ぎたのだ。昨今はメニュー写真と比較して少量だったり、反対に大ボリュームだったりする商品に対して「写真詐欺」やら「逆写真詐欺」といったワードを目にするが、このちょっぴりソフトは「名前通り」の実直なメニューである。逆に清々しさを感じ、好感を抱いてしまう。

うどんと天ぷら、そこに今までに見たことがないほどちょっぴりなソフトクリームと、アツアツのホットコーヒー。この組み合わせを実現できるのもフードコートならではといえる。

変則ながら、溶けると困るソフトクリームから食べる。じめじめした天気で体の中にたまった熱気を、いい具合にほぐして溶かしてくれる。あっという間になくなった。その後も、うどんの合間にちくわとかしわを挟みながら、ササっと完食した。


うどんってこんなに長かったろうか(筆者撮影)

「ササっと」というのも、このフードコート、席が60分制であったり、食事以外の利用は禁止だったりど、何かと厳しく長居は禁物と判断した格好だ。

ダラダラ長居できることは、フードコートの魅力のひとつであり、時には女子高生が集うカフェにも、高齢者の集会所にも変身する柔軟さが魅力だが、時間制限があったり、清掃の方々が「お食事はお済みですか?」と暗に注意して回っている場合は別である。

場内アナウンスでもしきりに「現在混雑しています」といった内容が響いている。キャパシティの小ささを回転率で補っている、といったところか。「ゴファン」という名の通り、食事を終えたら大人しく球場へと「ゴー、ファン」である。ここは、楽しむ前の腹ごしらえの場所なのだ。

雨の中、あえて展望ラウンジへ

これまで書いてきたように、東京ドームの周辺一帯は、家族や恋人と連れ立って行くのに適したエリアではある。だが、ひとりで楽しんだり、静かに過ごせる場所もある。

付近にはエンタメ施設以外にも小石川後楽園や小石川植物園、礫川公園といったのんびり過ごすのにうってつけの場所はそこそこある。

そんな中で私が選んだのは「文京シビックセンター」だ。文京区役所やホール、区民施設からなる施設であり、水道橋駅から歩いて10分ほどの位置にある。

なぜそんな場所を、と思うかもしれないが、実はこの施設の上層階には展望ラウンジがあるのだ。高さは地上105メートルと、国内でぶっちぎりのコンクリートジャングルである東京都心を眺めるには少々心もとないのだが、何より無料。雨にけぶる都会を見下ろすというのも、悪くない。


道中にあったドン・キホーテとサイゼリヤの複合施設。なかなか珍しい気がする(筆者撮影)

正面玄関付近には文京区の歴史を記したプレートがある。これによると、文京区はもともと広大な武家屋敷があったとか。その跡地が明治時代になって教育施設に姿を変え、森鴎外に夏目漱石、樋口一葉や坪内逍遥といった錚々たる文人たちが住んでいた。

その後、1947年に旧小石川区と旧本郷区が合併して、文京区が誕生。その名の由来は、これまでの経緯から“文教の府”というイメージにちなんでいるという。


文京区の由緒を記したプレート(筆者撮影)

中に入ると、なかなか洒落た空間が広がっている。近代的というか、近未来的というか、何というか。目当ての展望ラウンジは、高層階用のエレベーターで向かう。利用者が多いのか、展望ラウンジがあるフロアのボタンが目立つようになっていた。


文京シビックセンター、正面玄関から入ったところ(筆者撮影)


ボタンが目立つようになっている(筆者撮影)

フロアに着いて、ラウンジに入る。人気(ひとけ)がない。「当たり前だ、わざわざこんな荒天の日に展望しようと思う人なんかいないだろう」……と思って奥に進むと、遊びに来たと思われる親子連れ、歓談しているシニア、さらに勉強している学生がいるなど意外と賑わっていた。


この方向にスカイツリーがあるらしい(筆者撮影)


この方向にサンシャイン60があるらしい(筆者撮影)

議場を見下ろせる、珍しい建物だ

近場の東京ドームシティや小石川後楽園、礫川公園を見下ろして楽しむ。見下ろすといえば、このフロアの下に議会があるらしく、展望ラウンジから見下ろせるようになっていた。不思議な造りである。


右下に見えるのが東京ドームシティ(筆者撮影)


公園を上から見るのも意外と楽しい。眼下にあるのは礫川公園(筆者撮影)


議場を見下ろせるのは珍しいのではないか(筆者撮影)

かつては文人たちの街であり、今はスポーツを中心にエンタメが彩る街。古に思いを馳せながら、歩いて腹ごなしをする筆者であった。さて、次はどの街のフードコートへと行こうか。

【その他の画像も】都心の遊園地「東京ドームシティ」内にあるフードコート「GO-FUN」。スポーツとエンタメの街にある、その実態とは?

(鬼頭 勇大 : フリーライター・編集者)