海老名ナインの一体感は校歌を熱唱するところからも見てとれる【写真:羽鳥慶太】

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第106回全国高校野球選手権・神奈川大会でコールド発進

 第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は7日、大和市の大和スタジアムで1回戦を行い、海老名は15-5で横浜緑園・横浜旭陵の連合チームに5回コールド勝ち。第1シードの武相が待つ9日の2回戦にコマを進めた。海老名は5月に「大谷翔平選手からのグローブで野球しようぜ!」と題した野球体験会を開催。大谷のグラブ30個を活用したイベントを大成功に導いたことで、チームにも有形無形の効果があったという。

 猛暑の中、駆け付けた大応援団の前で全力プレーを見せた。海老名は初回に3点を先制されたがその裏すぐに追いつくと、2回に打者10人、7安打の猛攻で一挙6得点と突き放し、そのまま毎回得点で逃げ切った。「4番・左翼」で先発した角谷楓太主将(3年)も、2回の右中間適時三塁打をはじめ3安打5打点の活躍に「今までで課題だった、チャンスでの1本が打ててよかった」とうなずいた。

 チームの団結力を強めた出来事がある。5月に行った子ども向けの野球体験会だ。昨年、海老名市議会議員の提案で始まり、今年が2回目だった。昨年と違うのは、米大リーグ・ドジャースの大谷翔平投手が日本中の小学校に寄贈したグラブを使用したこと。市議会が海老名周辺の小学校に協力を求め、実に30個以上が集まった。「大谷翔平選手からのグローブで野球しようぜ!」と、イベントの名前も子どもたちに分かりやすく、キャッチーにした。

 昨年は練習試合と重なったこともあり、部員の参加者は限定的だったが、今年は全員が参加した。「子どもたちを楽しませたい」という思いで、プロジェクトリーダーを務めた鈴木望夢外野手(3年)を中心にみんなで取り組んだ。

 学業と部活動で忙しい中で念入りに準備。打撃体験に使うティーの高さは2リットルのペットボトルで調整し、使用するボールもスポンジにした。鈴木の提案で、新たにティーボールも実施。野球の楽しさを存分に伝えられるよう工夫を凝らした。当日集まったのは2歳から小学生までの子どもたち約70人。参加者から後日、お礼の手紙が続々届くなど大反響だった。

 この運営をやり遂げたことで、プレーにも好影響があった。「チームがバラバラだと教室をうまく回せない。一体感ができた」と角谷。火が付いたら止まらない打線のベースとなっている。

 昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で二刀流として活躍した大谷の姿は、子どもたちに大きな影響を与え、球児にとっても憧れの存在となっている。止まらない野球人口の減少には、海老名の部員たちも危機感を抱く。だからこそ、偉大な先輩の思いを次世代につなげた。

 次は、大谷グラブに目を輝かせた子どもたちに、自分たちの野球部を見てもらいたいところだ。「海老名高校で野球をしたいと思ってもらえるようなプレーをしたい」という思いも強まった。この夏の目標は甲子園出場。未来の球児のためにも、熱い夏を体現する。

(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)