移り変わりが激しい若者言葉

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旧2ちゃんのネットスラング

 日常生活や仕事で欠かせないコミュニケーションツールとなっているのがLINEだ。月間ユーザー数は9500万人で、どの年代にも幅広く使われている。ただ、年配の人や上司から送られてくる文章には、若者が違和感を抱く表現が多い。その中でも頻度が高いのが「w」の使い方。最近は多くの若者たちが「文末にwwwを使わない」という。なぜ「www」は若者から敬遠されるようになったのか?

【画像】まさかの男女1位が同じ…高校生が「今年は使わなそう」な昨年の流行語TOP10、メッセージの「やりとりで意識する」TOP10 も

 若者言葉は栄枯盛衰の激しい世界だ。LINEヤフーが5月下旬、全国の高校生を対象に「今年は使わなそうだと思う昨年の流行語」について調査した結果を公表した(出典:LINEリサーチ、※1)。それによると、全体1位は「ひき肉です」。実に女子の71.5%、男子の63.2%が「今年は使わない」と回答した。

移り変わりが激しい若者言葉

「ひき肉です」とはYouTuberグループ「ちょんまげ小僧」のメンバーである「ひき肉」のあいさつ&自己紹介の言葉で、甲高い声とハイテンションで人気となりSNSで大バズリ。芸能界からは本田翼やあのちゃんらが続々と物まねを投稿し、JC・JK流行語大賞2023「コトバ」部門1位、「ヒト」部門1位をW受賞した。ただ、流行り過ぎるとその分、飽きられるのも速い。ブームはあっという間に過ぎ去ったようだ。

「ひき肉です」に続く2位は「ひよってるやついる?」、3位は「それってあなたの感想ですよね?」で、60%超が「今年は使わない」と回答。以下、4位から11位まで50%台の割合で「アレ(A.R.E.)」「好(ハオ)」「アセアセ・あせあせ」「なぁぜなぁぜ?」「うちゅくしい」「タイパ」「はにゃ?・はにゃり」「ちゅきちゅき」といった言葉が続いた。中高年世代にとってこれらの言葉は意味不明でしかない。

『若者言葉の研究 SNS時代の言語変化』(2022年、九州大学出版会)などの著書がある宇都宮大の堀尾佳以講師(現代日本語学)は、「好(ハオ)」について、『このYouTubeの動画、好(ハオ)』などという言い方が昨年流行りました。これは、『good』を意味する中国語の『好(ハオ)』に由来します。欧米のカルチャーに偏重気味だった大人世代と違い、今の若者たちはK-POPや中国のドラマなどアジアのエンタメコンテンツに触れる機会が増えたためですが、早くもピークを過ぎたようです」と終焉を予想する。

 それでは「www」も同じような運命をたどるのか。堀尾さんは「もともとは旧2ちゃんねるなどで使用され始めたネットスラング。『笑い』をキーボードで打つ際の最初の文字である『w』のみで示したもので、『www』など『w』が多いほど笑いの度合いが高くなります。また、『www』は草が生えているように見えたことから『草』『草生える』『ジャングル』『ワラ』などさまざまな派生語が誕生しました」と説明する。

「(草)」「(笑)」ではなく「草」「笑」

 堀尾さんがXに投稿された「ウケるw」について調査してみると、5月30〜31日の2日間だけで125の投稿があったという。「www」について都内の大学生に質問すると、「LINEの文面って基本相手に合わせる気がします。相手からのメッセージにwwwが入っていたら、使うこともたまにあります」(2年生男子)。「『www』は長い文章の文末で使う人はあまりいないと思いますが、『あそゆことwwwwww』みたいな使い方はします。また『(草)』『(笑)』ではなく『草』『笑』を使います。めっちゃ親しい人に『おもろくて草』みたいにして送信します」(同女子)という回答だった。

 一方、「wwwは使わないです。2ちゃんねるの『煽りカス』(※扇動的かつ感情的に煽り立てる行為、及び人)みたいな感じがするので、表社会で正常を装うために『笑笑』を使います」(男子4年生)という自身の社会的ポジションを意識した答えもあった。LINEヤフーの調査でも「文の終わりは絵文字や『!』や『?』を使っているため、(笑)などは使わない」(高1女子)という声が多い。大学生の間ではまだ命脈を保っているようだが、高校生まで世代が若くなると敬遠されているようだ。

 堀尾さんは「確かに『www』は減少傾向です。『笑』『(笑)』の方が一般的でどちらを選択するのかは好みの問題のような気がします」とした上でこう指摘する。

「『w』はネットスラングなので少し性格が違うかもしれませんが、90年半ばに女子高生の間で流行った『チョベリバ』(超ベリー・バッドの略)はもう使われなくなりましたよね。それと同じく、世代によって使用する・しないの差が出てくるのかと思います。市民権を得た次の世代にとっては“古い”のかもしれませんね。つまり、市民権を得た時点では世代を超えて使われるようになったものの、その後の新世代、すなわち定着した当時は小学生くらいの世代には過去の物として映るのではないでしょうか」

 浮かんでは消えていく若者言葉。「w」から「草」への流行の変化は2017年ごろが有力な説だ。ちなみに、同調査による「今年流行りそうだと思う言葉」の女子高校生1位は「それガーチャー!ほんまゴメンやで」、男子高校生1位は「厳しいって」だった。元ネタはテレビドラマに出演したアイドルの台詞やYouTuberのキメ文句。これらの言葉がTikTokを通して一気に拡散されていることについて、堀尾さんは「今後、新しいSNSやツールが出てくるたびに臨機応変な言語活動が生まれると思います」。

 TikTokについていけないおじさん、おばさんは若者から「厳しいって」と言われそうだが、それも世代間の言語使用をめぐる興味深い現象ではあるwww

※1出典:LINEユーザーを対象にしたスマートフォンWeb調査 https://lineresearch-platform.blog.jp/archives/44876237.html ※2024年4月、高校生男女980人に調査

デイリー新潮編集部