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 こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

 近年、加熱する中学受験。子どもの幸せのために受験をさせているつもりが、気がつくと子どもの心身に過度な負荷をかけてしまうケースもあります。親はその予兆はどう汲み取り、ケアしていったらいいのでしょう。

 前回の記事では受験に失敗する親のタイプを、25年以上のキャリアを持ち、年間300件のコンサル依頼が殺到するフリーランス家庭教師の長谷智也さんに教えてもらいました。今回も25年以上中学受験の現場を見てきた長谷川さんに、子どもから発せられる“SOS”について話を聞きました。
◆「大丈夫!」を気軽に使う子は大丈夫ではない

「ここ数年はコロナ禍の影響もあり、受験によるストレスで心身のバランスを崩すお子さんが増えています。コロナ禍によって遊びや友達との交流が制限され、それに受験のストレスが加わり不登校となり、しんどさから抜け出せないケースも少なく無いと思います」

 そう話す長谷川さんですが、受験といったチャレンジに向きあう最中に、子どものSOSサインを拾うことはできないのでしょうか。教えていただくと、心身の不調の一歩手前として、子どもの発言の変化について教えてくれました。

「子どもが急に調子の良いことばかりを口にし始めるときは、注意が必要です。『俺は東大に行くんだ!』とか、何を聞いても『大丈夫っす!』と軽く返してくる時は要注意です。これは一見ポジティブな反応に見えますが、僕から見ると素直さがない状態であり、プレッシャーからの逃避行動に見えます」

長谷川さんいわく、結果が出る子の特徴の1つは、素直さが必要不可欠なのだといいます。周りからの声を『大丈夫』の一言で一蹴している状態は、相手の発言を拒絶し、逃避をしている状態なのでです。

「少し変則的な返しとしては、何かアドバイスをしても『いや、僕は……』と自分のやり方や主張に固執しすぎる場合も、素直さがない状態と言えます。こうしたアドバイスを頭ごなしに否定したり、もしくは返事だけよくて、アドバイスに従えていない場合などもあります」

 素直さがないことは、一見すると大した影響はないように思うかも知れません。しかし、じわじわとその悪い態度は、テストや人生に影響をもたらすのだそう。

「僕が過去に受け持った子の事例をご紹介します。調子が良く、自分の弱点に向き合わないため、回答を見返すなどの慎重さがない。結果として単純な計算ミスなどのケアレスミスで点を落としやすいのですが、この状態を続けていたある子は、塾のクラス分けテストで些細なミスで2問落として12点減点。一度に2クラス落ちてしまいました。

計算ミスは頑張れば確実に防げるのに、そこを軽視して『大丈夫っす』と言い続ける。こういう子に限って、3回くらい同じミスを繰り返し、それでも直せないことが多いです。“ミスも実力のうち”と言いますが、自分の問題と向き合わないと、その後の結果にじわじわと影響が出てくるので、親御さんには注意して見ていただきたいです」

◆もっとも心配なことは「不登校」と「起立性調節障害」

 子どものSOSサインはいろんな形で出るものですが、「心身の不調は放っておくと本当に危険」と長谷川さんは警鐘を鳴らします。その中でも、「不登校」「起立性調節障害」はとても増えており、予兆として、遅刻や欠席が増えたら注意深く見てフォローして欲しいと言います。

「僕が見てきたケースですが、子どもが月に10回くらい遅刻をし始めたら、言葉にできないストレスが溜まり始めている証拠ではないかと思っています。あくまでも経験則ですが、遅刻が増え登校を嫌がる状態を放置すると、ストレスの根本原因が解消されず、先程挙げたような、さらなる不調にも繋がるケースがいくつかありました。