Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

LGが新たに発表した「LG QNED 90T」は、ミニLEDと量子ドット技術を組み合わせたQNEDという独自技術によるテレビで、明るい部屋などの環境下で観るには最適といえるでしょう。

簡単なセットアップやコントラストの効いた画質など良い点も多いですが、メニューなど全体的なUIなどは少し微妙かもしれません。

LG QNED 90T

これは何?

LGの新型液晶テレビ

価格

1,900ドル(約29万6000円)

好きなところ

・セットアップが簡単で頑丈な造り

・全体的にコントラストが良い

・コンソールゲームをすぐにプレイできるゲームダッシュボード

好きじゃないところ

・メニューUIが微妙

・基本的なHDR設定に手間がかかりすぎる

・別のOLEDテレビと比べてそれほど優れている点はない

まず、現在の傾向を少し説明すると、多くのテレビメーカーがミニLEDテレビを売り込もうとしています。一方でOLED(有機EL)はどうかといえば、それはそれで素晴らしい製品といえます。

LGはOLEDのラインナップとしてGシリーズがあり、「G3」というモデルを出しています。こちらは現在購入できる最高のテレビの1つといえるでしょう。とはいえ、製造コストも高額なら購入コストも高額、といった製品です。

そこでミニLEDというわけです。OLEDよりも格段に安く、画質も上々。LG独自の技術で工夫が凝らされた「QNED 90T」が登場しました。

LG QNED 90Tの特徴と位置づけ

QNEDテレビとは

さて、QNED技術によるミニLEDテレビがLGのOLEDラインナップのように有名な製品となれるのか、と考えると、「YES」とも言えると思います。しかしながら、LGのミニLEDがOLEDと同じように業界のトップと走っているか、と考えると答えは「NO」で、強力な競合に囲まれていて、優位には立っていないように感じます。

今回レビューした65インチのQNED 90Tは、深い黒と優れた色のコントラストを誇っています。OLEDを凌駕するようなことはありませんが、それでも第二の選択肢としては良いと思います。とはいえ全体的にみると、価格はもちろん、ほかの要素を照らし合わせてもほかのテレビを超えてはいないでしょう。

さて、ここまでで何度も出ているQNEDですが、LG独自の技術を示す用語です。ほかのQLEDテレビに似た量子ドットとミニLEDを組み合わせたディスプレイに、表示される色を強調するLG独自のナノセルカラー技術が加えられているというもの。優れたグレア防止性能により、明るい部屋に最適なディスプレイになっています。

しかし、このQNEDがほかのQLEDテレビと比べて圧倒的に綺麗か、と聞かれれば、そうは思いませんでした。この4Kテレビといわゆる"ハイエンド"とみなせるテレビとの間には確かな差があるように思えます。

QNED 90Tの位置づけ

改めてQNED 90Tの位置づけについて考えてみます。まず、価格は1,900ドル(約29万6000円)です。Samsung(サムスン)のQLEDテレビである「QN90D 4K Neo」は、同じ65インチで価格が2,700ドル(約42万1000円)と考えるとかなり安く感じます。とはいえ、ほかのQLEDとも比較してみると、より明るくて同じような発色を実現している低価格のテレビがいくつもあるといえるのです。

たしかにSamgungの「QN90D」よりは安価ではありますが、Hisense(ハイセンス)の「U8N」はこれより数百ドル安くなります。さらにHisenseの新たな「U9N」は注目を集めています。あるいは「QM8」などTCLの最新のミニLEDテレビは、価格が安い割に明るさが優れているといえます。

もうひとつ、UIについて触れておきたいと思います。特にSamsungの最新バージョンのTizen OSを使ったことがある人にとっては、LGのUIはかなり時代遅れに感じられます。Vizioなどの低価格のメーカーはUIをNetflixなどのような現代的なものにすることで良い方向に転じ、現在のニーズに合致しました。

QNED 90Tには、120HzのリフレッシュレートやHDMIなどのポートも十分にそろっていて、ゲーム用としても優れたテレビに求められるものを備えています。すべて機能していますが、思ったほどシームレスにはなっていないという点は気になります。

QNED 90Tのビルドクオリティ

Photo: Artem Golub / Gizmodo US

頑丈な造りで安定する

QNED 90Tを壁に掛けない場合は、ディスプレイ下部に約60インチ間隔で2つのL字型の脚を設置します。一見すると少し心もとない感じもしますが、テーブルに置いてみると十分に頑丈な造りであることがわかりました。

少し揺すったりしても、プラスティックの歪みやぐらつきはありません。サウンドバーやほかのデバイスを下に置きやすい1つのフラットスタンドのほうが良いとは思いますが、標準搭載の脚でも十分機能します。

初期セットアップは簡単

さて、すべてを接続したらセットアップです。QNED 90Tのセットアップは非常に簡単です。最初にテレビを壁に設置したか、テーブルなどに置いたかを確認します。

次にAI映像プロモードとAIサウンドプロモードをオンにするか聞かれます。これらはLGのα8プロセッサーをにより映像とサウンドを強化するものです。とはいえ、これらの機能により画質などに劇的な変化が生まれるかというと、実際そこまで変わった感じはしません。SDRや非4Kコンテンツでも、HDR 4K映像の場合でも、いずれも変化はないように思いましたね。

このテレビは非4Kコンテンツをより高解像度にアップスケールできるとのことで売り出しています。が、現時点ではこうしたアップスケーリング技術についてメーカーが主張していることは話半分で聞く感じがいいと思います。テレビ放映でもYouTubeでも、古いコンテンツや低解像度コンテンツに大きな改善はみられませんでした。

各種サポート

次にWi-Fiについては、QNED 90TはWi-Fi 5のみのサポートとなっています。これはほかのメーカーのテレビにも共通しますが、今年のCESから継続している若干の制限といえます。ほかには、Bluetooth 5.1とLGリモートアプリをサポートしています。

また、同梱されているリモコンに問題があるわけではありませんが、メインの選択ボタンにイライラすることが多々あります。また、このリモコンはスクロールホイールとしても機能するのですが、必要ないときにけっこう誤作動します。こうした細かい点はあるものの、ポートなどはUSB-Aが2つ、HDMIが4つとほとんどのユーザーにとって十分でしょう。

メニューと使いやすさ

Photo: Artem Golub / Gizmodo US

メニューは少しごちゃごちゃしてる

次はメニューについてです。画面の上部には大きなプロモーション表示のブロックがあり、残りの部分はさまざまなモードやよく使うアプリリストなどなどがごちゃ混ぜになっています。

ゲームコンソールのように最後に使用した入力デバイスに戻るための便利なボタンがありますが、「ゲーム」から「ホーム」まですべてのメニューで別のアプリが組み込まれています。これらのアプリのほとんどのオプションで十分なユーティリティが提供されるとしても、Samsungの最新テレビのようにこれらのモード間をシームレスに移動できるほうがはるかに望ましいです。

デフォルト設定の変更

画面上部のプロモーション用ブロックは、リモコンのエアマウスでその上を移動したり誤ってスクロールしたりすると、自動で音声が再生されるようにデフォルト設定がされています。この音声やおすすめのコンテンツなどの設定はオフにしたいと思うでしょうが、そのためには追加設定やホーム設定などをけっこう掘り下げる必要があるのです。

映像モードはデフォルトではEco HDRモードに設定されており、こちらはクイック設定メニューを使えば簡単に切り替えられます。とはいえ、設定についての旅はまだまだ終わりません。

HDRを選択すると「パーソナルピクチャーウィザード」によって好みの映像モードを選択できます。画面にイタリアの丘陵地帯や花畑などの画像が表示され、そのなかから好みのものを選ぶことで自動的にHDRモードを設定ができるわけです。難解なアルゴリズムに基づいて、今回は「バランスの取れた」映像が好みだと判断されました。これにより『バービー』のような映画が本来よりも黄色っぽく映ることに。全体的にもっと明るいほうが良いと思ったので、その後「ビビッド」に切り替えました。

映像の動きをなめらかにする「TruMotion」の機能は、もちろんデフォルトでオンになっています。これをオフにするには、設定から映像や詳細設定、映像オプションなど複数のメニューを経由する必要があります。それぞれのHDRモードにデフォルトの設定があるため、面倒ではありますが、TruMotionやそのほかの設定を切り替えるには一旦それぞれを手動でオフにしなければなりません。

そのほかの機能

LGは、テレビ内チャットボット機能も追加しました。これはメニューの変更などを簡略化できるとは思いますが、個人的には不要と感じましたね。チャットボットでは候補のなかからさまざまな質問をすることができますが、実際にはデフォルトの設定を変更するのにはあまり役に立たないと気づいたのでした。

一方で、テレビに内蔵された「ゲームオプティマイザ」機能は高く評価できます。ゲームの現在のフレームレートやVRR(可変リフレッシュレート)、ブラックスタビライザー、AMD Freesync Premiumなどさまざまなオプションを設定できます。QNED 90Tは、ゲームコンソールやPCが接続されると自動的に検出し、ゲーム専用のHDRモードに変更してくれます。Xbox Series XとPlayStation 5で試しましたが、これらの機能は良いと思いましたね。

さて、改めてテレビのメニューの"Netflix化"に言及しておきましょう。実際にすべてが似通ってきていると感じる人もいるかもしれません。それでも、メニューを縦方向に再調整すると、見たいコンテンツなど画面上の重要なものに使うスペースが増えるのです。LGのwebOSメニューは、完全に横向きです。「よく使うアプリ」などから下へスクロールしていくとおすすめなどが表示されますが、だいぶスペースを持て余している印象です。

画質とサウンドについて

Photo: Artem Golub / Gizmodo US

優れたグレア防止性能による高画質

QNED 90Tによる大きなメリットのひとつは、ごちゃついたオフィス環境にもうまく適応するということです。つまり、蛍光灯の近くや自然光の下でも周囲の光によるまぶしさを感じないのです。

65インチの調光では最大160ゾーンのローカルディミングに対応しています(ちなみに86インチのQNED 99Tモデルでは約2,400ゾーンとのこと)。ミニLEDテレビのディスプレイで発生する可能性のあるブルーミング効果、あるいはハロー効果については、制御に成功していますね。

設定でアクティブなディミングゾーンの数を調整して、画面の明暗のコントラストを判断できますが、デフォルトから変更する必要も感じませんでしたね。使用してみた限りでは、非常に明るいシーンでもハロー効果などは見られませんでした。

QNED 90Tは、明暗が混在しているようなシーンを映すのに非常に優れていると思います。が、いろいろなHDRモードを試しても、被写体が本来よりも色あせて見える屋外のシーンは微妙でしたね。

しかし、これについてはかなり細かい部分だと思うので、テレビを頻繁に見るユーザーにとってもこの評価に同意しないかもしれません。TruMotionは基本オフにすべきと思いますが、一方でモーションブラーを軽減するMotion Proはオンでも良いかもしれないですね。劇的な改善というわけではありませんでしたが、最新のテレビすべてに搭載されているような機能ではないこともあり、良いと思いました。

視野角広めのVAパネル

QNED 90Tの65インチと75インチのディスプレイはVAパネルとなっています。VAパネルはIPSなどほかのパネルと比べてしっかりとした黒を表現することがメリットであり、視野角による色の変化がデメリットといえます。LGは「ディスプレイの正面から30度の範囲であれば色や輝度に変化はみられないはず」だと述べています。当然その範囲を超えると若干の問題が発生する可能性があるということです。

実際に、レビュー時にさまざまな角度から見てみましたが、色の変化やブルーミングのような現象はあまり見られませんでしたね。

サウンドについて

音質については、まあ、問題ないですね。このテレビはDolby Atmosをサポートしていますが、40Wの2.2chスピーカーから出る低音はごくわずかという感じで、驚くほどの音ではありません。十分な機能は果たしているといえます。が、テレビにこれだけのお金をかけるのであれば、サウンドバーにも投資したほうがいいと思いますね。

最高とはいえないが、良い買い物だとは思う

Photo: Artem Golub / Gizmodo US

さて、今回の総評となります。QNED 90Tは、LGのテレビについて興味があったり、いっそ好きだったり、いっそお買い得だから、といった理由で購入するテレビの1つとして勧めたいと思います。

LGのOLEDテレビについては最高クラスの性能を持っていますが、それに比べてミニLEDテレビは「優れた性能」といった感じだと思います。ほかのメーカーがQLEDテレビを売り出している2024年現在において、QNED 90Tがどのような位置になるか。こうした部分はHisenseやTCLといったメーカーの動向やレビューを少し待ってもいいかもしれません。

LGのテレビを買い替えとして選ぶのなら、QNEDよりもむしろOLEDのG3を選ぶほうが良いかも、とも思いますね。少し小型でほぼ同じ価格ですが、大画面のミニLEDを選ぶよりもこちらのほうが性能は良いからです。OLEDでは最高のLGも現時点では万能ではない、ということですね。

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