スバルが「ニュル24時間」SP4Tクラス初優勝! 参戦マシンに「最新WRX」の技術を投入! クルマと人を鍛える舞台裏に迫る!
波乱の展開となった2024年のニュル24時間
2024年5月30日から6月2日にかけて、ドイツのニュルブルクリンクサーキットで「第52回ニュルブルクリンク24時間レース(以下、ニュル24時間)」が開催されました。
STI(スバルテクニカインターナショナル)は「SUBARU WRX NBR CHALLENGE 2024」で参戦し、「SP4Tクラス」での初優勝を飾っています。
スバルのモータースポーツ部門であるSTIは、国内ではスーパーGTに参戦するほか、全日本ラリーでは参戦者のサポートを行っています。そしてSTI独自プログラムとしてニュル24時間に参戦しています。
【画像】カッコいい! これが最強「WRX」です! 画像を見る(30枚以上)
15回目の参戦となる2024年は、「WRX S4」をベースに開発された「SUBARU WRX NBR CHALLENGE 2024」を投入。量産車と同じく2.4リッター水平対向ターボエンジン(FA24型)を搭載したほか、シンメトリカルAWDも採用しました。
レースの世界でAWDはパワーロスなどもあって敬遠されがちですが、AWDはスバルのアイデンティティということもあり、レースでも速いことを証明するために採用したといいます。
今回のレースでも、1周25kmという長いコースではところどころで雨が降るという状況でしたが、AWDを活かして安定した走りを見せていました。
2024年の参戦のために開発されたマシンは、2023年に作り上げた「SUBARU WRX NBR CHALLENGE 2023」をベースに、昨年不具合が出た箇所を改善したうえで、新たなパーツとして「STIフレキシブル・パフォーマンス・ホイール」を装着しました。
このホイールは「東京オートサロン2024」で発表された「WRX S4 STIスポーツ
#」(特別仕様車)に採用されたのと同形状のもの。
サイズこそ違いますが、この特別仕様車向けに開発を行っていたホイールをレーシングカーに履かせてみたところ、「良い結果が出た」ということで参戦マシンにも採用したというわけです。
本番の24時間レースは、カルロ・ヴァン・ダム選手/ティム・シュリック選手/佐々木孝太選手/久保凜太郎選手の4名のドライバーで戦います。
6月1日16時にスタート。ホームストレートは晴れていましたが、山岳コースでは場所により雨が降っている状況でした。
STIチームはフォーメーションラップでピットに戻りレインタイヤに交換してレース復帰しますが、数周後にスリックタイヤに交換するという難しい判断が求められました。
その後は、23時20分ごろに濃霧のため赤旗レース中断となり、競技長からの公式通知で「次の情報は翌朝7時に状況判断を行う」ということで、約7時間半のレース中断が決定。
翌朝7時に状況判断が行われたものの濃霧は一向に晴れる気配がなく、13時30分に5周のフォーメーションラップを行うことに。そしてフォーメーションラップで5周回った時点でチェッカーが振られ、レースが終了しました。
SUBARU WRX NBR CHALLENGE 2024は周回数44周、総合順位51位、SP4Tクラス1位というのが今回の結果となりました。
全国のディーラーから選抜されたメカニックが参加!
ニュル24時間には、全国のスバル販売店から立候補したメカニックが選抜されて派遣されます。
この活動は長年行われており、今回も8名のディーラーメカニックが現地入りし、レースをサポートしました。
新潟スバルの宮澤匠氏に話を聞くと、「レースカーは市販車とほぼ同じではあるものの、専用品も装着されています。しっかり点検してトラブルが起きないようにしたいです」と意気込みを語っていました。
またレース終了後には「霧で中断となってしまったので残念でしたが、良い経験ができました。この経験を持ち帰って後輩たちにメンテナンスの重要性などを伝えていきたいです」とコメントしました。
福岡スバルの鈴木渉吾氏は「今まで全日本ラリーやTGR 86/BRZワンメイクレースに参加したことがあります。クルマが好きでスバルが好きで入社したので最高峰のニュルに行きたくて、今回初めて挑戦してこの場に来ることができました」とのこと。
レース後には次のように語っています。
「リーダーメカニックや他のスタッフのみなさんにも支えられ、落ちついてミスなくできたと思います。
ここでの経験を活かしてスバルのテクニカルスタッフの上級資格や国家資格の1級を目指していきたいというモチベーションにもなりました。
後輩育成や現場のスタッフ同士のコミュニケーションをもっとしっかり行うようにしていきたいです」
※ ※ ※
今回をもって勇退することを明言していた総監督の辰己英治氏は、次のようにレースを振り返ります。
「霧によって中断してしまったのは仕方ないことです。レースとしてはマシンの進化を感じられたし、誰もが乗れる、誰でも運転が上手くなるというものが出来上がりつつあると思っています」
「ニュルはクルマを鍛え、そのクルマに携わる人も鍛える。こういう環境はなかなかなく、そのため長年チャレンジを行ってきました。
ただ速さを求めるのではなく絶対的な安心感と操縦性を作っていく。それを作れる人を育てる場所だと思います」
「STIではレーシングカーを見ている人が特装車やパーツの開発を行っており、それが良い結果に繋がります。
新しいホイールも量産用の先行開発の中で見つけたことで、それをレーシングカーに持ってきたら良い結果が出ました。
STIのスタッフも良いアイデアを出せるように育っていって欲しいです」
量産とレーシングカー、双方を見られるのがこのNBRチャレンジの良いところだと説明してくれました。
※ ※ ※
今回のニュル24時間は、過去最長ともいえる中断により、満足いく走行ではなかったかもしれません。
来年以降はどのようなチャレンジになるのか、期待したいところです。