PCゲーム販売プラットフォーム「Steam」を運営するValveは、ユーザーが亡くなった場合はそのアカウントで購入したゲームを親族が譲り受けることはできないと明言しています。一方、競合するPCゲーム販売プラットフォームのGOGは「ユーザーが亡くなってもアカウントを親族に相続させることは可能、ただし裁判所命令があれば」という声明を、IT系ニュースサイトのArs Technicaを通じて発表しました。

You can inherit a dead relative’s GOG account-if you have a court order | Ars Technica

https://arstechnica.com/gaming/2024/06/gog-will-transfer-your-dead-relatives-game-account-but-only-with-a-court-order/



Valveは、ユーザーからの「もし死んだ場合、遺言でSteamアカウントの所有権を譲渡することは可能か?」という問いに対し、「残念ながら、Steamアカウントとゲームを誰かに譲渡したり、そのアカウントへのアクセスを他の人に提供したり、コンテンツを他のアカウントと統合したりすることはできません」と回答したことで話題となりました。

Steamで買ったゲームは死後誰かに譲渡できないとValveが明言 - GIGAZINE



一方、GOGの広報担当者であるズザンナ・ライバッカ氏は「一般的に、GOGのアカウントとコンテンツは譲渡できません。しかし、個人アカウントとそれに付随するデジタルコンテンツ、その中の特定のゲームを考慮し、GOGのユーザー名、少なくともアカウントの作成に使用した電子メールアドレスを示す裁判所命令のコピーを入手すれば、当社は実現するために最善を尽くします」と語っています。



ライバッカ氏は「GOGで配布されるすべてのゲームには、個別にEULA(ソフトウェア使用許諾契約)が適用され、ゲームのユーザーにどのような権利範囲が与えられるかが詳細に指定されています」と述べています。Ars Technicaによると、GOGのアカウントとコンテンツは「個人的使用に限る」「他人に譲渡不可能である」というライセンスに下で配信されていることがポイントだとのこと。

実際にGOGのアカウントを死後譲渡するには、まずそのアカウントが特定のユーザーのものであるということを疑う余地なく立証する必要があります。

しかし、GOGではユーザー登録の際、ユーザーの名前や家族、婚姻状況など詳細な個人情報を収集していません。そのため、ユーザーが本当に亡くなったのか、あるいはアカウントの譲渡を申し込んできた人が本当にユーザーの遺産相続権を持つ人なのかをGOG側が立証することは不可能。亡くなったユーザーのアカウントを譲渡するには、GOGのアカウントと関連するコンテンツが遺産の一部であることを示すための法的根拠をGOGに示さなければなりません。そのため、正式な手続きにのっとって発布された裁判所命令が必要になるというわけです。



ライバッカ氏は「死後のアカウントの取扱いは特にデリケートな問題であり、法的指針はほとんど、あるいは全く存在しないため、慎重に対処したいと考えています」と述べています。ただし、「あるアカウントを継承することを認める裁判所の判例」がすでに存在しているそうで、ライバッカ氏は「裁判所がゲーム保存の使命に沿って、死後のアカウントの取扱いという法的問題に取り組もうとしている可能性があります」という見解を示しました。