ステランティス、「中国ブランドEV」を欧州で販売
ステランティスは資本提携先の零跑汽車のEVを、合弁会社を通じてヨーロッパで販売する。写真は零跑汽車の主力SUV「C10」(同社ウェブサイトより)
ヨーロッパ自動車大手のステランティスと中国の新興EV(電気自動車)メーカーの零跑汽車(リープモーター、正式社名は零跑科技)は5月14日、両社の合弁会社「零跑国際(リープモーター・インターナショナル)」を設立したと発表した。
零跑国際にはステランティスが51%、零跑汽車が49%を出資し、経営の主導権をステランティスが握る。本社はオランダの首都アムステルダムに置き、ステランティスの中国地区副総裁を務める忻天舒(きん・てんじょ)氏がCEO(最高経営責任者)に就任。2024年9月から、ヨーロッパの9カ国で零跑汽車製のEVを販売する計画だ。
2023年10月に資本提携
ステランティスは、フランスのグループPSAと欧米のフィアット・クライスラー・オートモービルズが2021年に経営統合して発足したグローバル企業だ。傘下に10を超える自動車ブランドを擁し、世界の30カ国以上で自動車を生産、130以上の国・地域でそれらを販売している。
一方、2015年創業の零跑汽車は浙江省杭州市に本社を置き、価格帯が10万〜20万元(約216万〜432万円)のコストパフォーマンス重視のEVを生産・販売している。2023年の総販売台数は14万4000台、同年の純損益は42億1600万元(約911億円)の赤字だった。
両社は2023年10月、ステランティスが約15億ユーロ(約2535億円)を投じて零跑汽車の株式の約20%を取得する資本提携を発表。と同時に、両社の共同出資で零跑国際を設立する計画を明らかにしていた。それから半年余りを経て、合弁会社の発足を実現させた格好だ。
外資系自動車メーカーと中国メーカーの合弁会社は、これまでは外資ブランドの自動車を中国で現地生産・販売するために設立するケースがほとんどだった。
しかし零跑国際の役割はまったく異なる。同社は零跑汽車のEVを大中華圏以外のグローバル市場で独占販売する権利を持ち、中国以外の国・地域で現地生産を行う権利も与えられた。
零跑汽車の朱江明CEOは、ステランティスの工場を活用した海外生産にも意欲を見せる。写真は右側が朱氏、左側がステランティスのカルロス・タバレスCEO(零跑汽車のウェブサイトより)
零跑国際が取り扱う最初のモデルは、主力SUVの「C10」と小型セダンの「T03」の2車種で、零跑汽車の中国工場で生産して輸出する。まずフランス、イタリア、ドイツ、オランダ、スペイン、ポルトガル、ベルギー、ギリシャ、ルーマニアで販売を始め、2024年末までにヨーロッパの販売拠点を200カ所に増やす計画だ。
「相殺関税に対応可能」
EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会は、2023年10月から中国製EVへの不公正な補助金の有無に関する調査を進めている。仮に「クロ」と認定されれば、中国製EVは相殺関税を課されることになる。
そんな中、ステランティスと零跑汽車がヨーロッパの販売網を共同構築するのは独特の意味を持つ。零跑汽車の董事長兼CEO(会長兼最高経営責任者)を務める朱江明氏は5月14日、メディアの取材に応じてこう述べた。
「ステランティスのグローバルな生産拠点を活用すれば、相殺関税などの問題に直面しても、生産の現地化による対応をスピーディーに進められる。これは他の中国メーカーにはない零跑汽車の優位性だ」
(財新記者:余聡)
※原文の配信は5月15日
(財新 Biz&Tech)