ドルチェ&ガッバーナビューティ(Dolce & Gabbana Beauty、以下D&Gビューティ)は、ラグジュアリーデザイナーズコスメのカテゴリーを支配するという野望をあからさまにしている。

2016年から2021年までは化粧品メーカーの資生堂がD&Gビューティのライセンスを管理していたが、権利期間が切れたため、このイタリアのファッションハウスはD&Gビューティを自社で管理することに決めた。2022年から2024年にかけて同ブランドは急速に規模を拡大し、CEOであるジャンルーカ・トニオロ氏率いるD&Gビューティーは300人以上の新規従業員を採用した。自分は社員第1号だと誇らしげに語るトニオロ氏は、ラグジュアリーファッションのコングロマリットであるLVMH出身で、以前はイタリアでLVMHパフューム&コスメティクス事業部のカントリーゼネラルマネージャーを務めていた。最近では、D&Gビューティは高級百貨店のサックスフィフスアベニュー(Saks Fifth Avenue)との独占小売提携を通じて米国に進出し、11種類の商品コレクションをSaks.comとサックスフィフスアベニューの一部店舗で販売している。

自社ブランドの設立は、雇用や商品開発、グローバル支社の展開を通じて迅速に行われたが、トニオロ氏はメイクアップ事業をマラソンのようなものだと表現した。つまり本格的なマラソンレースがはじまる前に、このブランドはスタートラインまで全力疾走したのだ。チームの昔ながらのイタリアらしい情熱がその野心を後押しし、同氏によると、同ブランドは2022年に商品実売額で1億ドル(約154億円)を計上し、2024年には3億ドル(約462億円)に到達する計画だという。2022年にメイクアップ商品売上は全体の約5%だったが、トニオロ氏は3年から5年でこれを30%まで増やすことを計画している。

「ステファノ(・ガッバーナ氏)とドメニコ(・ドルチェ氏)の尽力のおかげですべてが可能になった」とトニオロ氏は語る。「私が以前、ほかのファッションブランドにいたときはこのようなことはなかった。通常、デザイナーズブランドは美容品カテゴリーを弟や妹分のような存在だと考えている。しかしステファノとドメニコはブランドのなかで、美容品もファッションやジュエリーなどと同じくらい重要だと理解しているのだ」。

米グロッシーはトニオロ氏にインタビューし、ブランドの成長やその独自の業務遂行方法、そして今後の成長計画について聞いた。

――どのような戦略的理由によって、D&Gビューティを自社ブランド化するという決断が下されたのか。



「美容品を自社ブランド化することはある面においては難しい決断だったが、当社のビジネス規模と、ドルチェ&ガッバーナの美容品カテゴリーの認識の両方が完全に変わった。ステファノ(・ガッバーナ氏)とドメニコ(・ドルチェ氏)はドルチェ&ガッバーナの美容品カテゴリーの認知度を、このファッションハウスが管理するほかのカテゴリーと同レベルにまで引き上げたいと考えていた。その頃の当社は主にフレグランスブランドであったため、最初にやるべきだと考えたのはその分野のビジネスを守ることだったが、なんとか3つの新作を発表できた。次のステップは、ファッションブランドにとって美しさの自然な延長であるメイクアップに注力し、大胆に取り組むことだった。ドルチェ&ガッバーナはファッションから美容品までのカテゴリーを網羅し、メイクアップによって即座に自分自身を表現できる喜びに満ちたブランドだ。我々はドルチェ&ガッバーナのファッションの伝統を受け継ぎ、そのつながりをより強固なものににしたいと考えていた。そして最後に、Z世代やアルファ世代のような若い世代ともっとつながりたかったのだ。この3つが、当初からの主要な戦略目標だ」。

「デザイナーズブランドが美容品カテゴリーでフレグランスしか扱っていなければ、そこでは一流とも大手ともみなされない。デザイナーズブランドのトップとみなされるには、フレグランスとメイクアップのように、少なくとも2つのカテゴリーを扱う必要がある。まさに、これが当社の目標だ」。

――現在のところ、D&Gビューティをどのように成長させようとしているのか。



「現在80のSKUがあり、さらに80のSKUを追加する予定がある。2025年までには、350のSKUを取り揃えた完全なラインになるだろう。当社はフレグランスとメイクアップという2軸を持つブランドをめざしている。しかし以前は2.5軸を持つブランドをめざすとも言っていた。なぜなら、2025年度の第1四半期までにスキンケアカテゴリーにも参入する計画があるからだ。ただし、アンチエイジングカテゴリーには参入しない。アンチエイジングは研究所での研究とその結果が重要で、ファッションブランドである当社にはその正当性がないからだ。しかし現在、我々はメイクアップ商品やフレグランスに、肌を美しくする効果やエイジングケアに役立つ効果のある、スキンケアに使用することができるイタリア産の原料を多数配合している。ビジネスに関していうと、2023年にD&Gビューティ史上最高の営業利益を達成した」。

――D&Gビューティをほかのデザイナーズビューティブランドとどのように差別化しているのか。



「ブランドを成功させる秘訣は、ブランドを構成している全カテゴリーを調和させることだ。それぞれのカテゴリーの背後に同じ創業者やクリエイターがいれば実現できるが、実際はそうなっていない。たとえばファッションブランドのディオール(Dior)では、女性向けファッションカテゴリーはマリア・グラツィア・キウリ氏が担当し、化粧品カテゴリーはピーター・フィリップス氏が率いている。この場合、ビジョンが完全に同じになるとは限らない。当社ではステファノとドメニコがすべての商品の背後にあるクリエイティビティを主導し、管理しているため、これが大きな違いとなっている。すべての決定権はステファノ、ドメニコ、そして私自身にある。セレクトショップのセフォラ(Sephora)やサックスフィフスアベニューに送るサンプルの数を決めるのに、10回も会議をする必要はない」。

「当社の商品はどれも利益を最優先としているが、これはデザイナーズブランドでは珍しいことだ。インディーズブランドのやり方に従う一方で、パッケージには高級感と上品さを加えることでファッションブランドのDNAも取り入れている。我々はそれができる唯一のデザイナーズブランドだと思っている。もうひとつの違いとして、ファッションアイテムと同じようなワードロープをメイクアップでも提供しており、これはインディーズブランドにはできないことだ」。

[原文:Dolce & Gabbana Beauty’s CEO is out to conquer designer cosmetics]

EMMA SANDLER(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果)